オーデイオマニアの始まり。それはスピーカーを床に置いた時?デイットン25とLUXMAN |
オーデイオについて書くのは勇気のいることです。この分野はそれこそ経験と知識が溢れている方がたくさんいるからです。
僕の周りだけでもそんな大先輩が数人はいるので、今さら僕がオーデイオについて書くのはとても気がひけます。それでもどんな分野にも初心者はいるわけで、あっち行ったりこっち行ったりしながら結局どこにも辿りつかずにいまだに大海原を漂っている僕の経験が、役にたつこともあるかも知れないと思って書いて見ます。ベテランオーデイオマニアの方はくれぐれも読まないように!
10数年前、オーデイオに興味を持ちだした、ちょうどその頃JAZZにも興味が湧き、いや順番が逆でした、
JAZZを聞きだしたのでついでにオーデイオにも興味が湧いたのです。
当時僕のJAZZの先生でもあり、その時は今まで見たこともないようなものすごい装置で聞いていたTさんに尋ねたことがあります。
「どういうのがオーデイオマニアの始まりなんでしょうね?」答えは「スピーカーをまず床に置きだした時からだろうね!」でした。
まさしくその時の僕はSPを置くために作った作りつけの棚に律儀にもサイズを合わせた小さなスピーカーを置き、今はもう無い有楽町のオーデイオユニオンの店員の勧めるままに買った総額10万円の装置で聞いていたのです。オーデイオマニアとは天と地とほども離れた状態でした。
それで十分と思っていたわけでもありせんが、幸いな事にそれ以上の物を渇望する気持ちもなかったのです。
ところがTさんのところで初めて本格的なオーデイオ装置でJAZZを聞かせてもらうと、それは驚くべき体験でした。こんな迫力ある音すばらしい音で音楽を聞ことがで出来るなんて、しかも自室でです。世の中には凄いものがあるものだとすっかり度肝を抜かれました。
しかし昔からケチなうえに薄給な僕は、こんな高級な装置はお金持ちの別世界の事、自分にはまったく関係のないことのように思っていたのです。
Tさんの所に通って様々なJAZZを聞かせてもらい、その中で気に入ったものをCDで購入していました。
JAZZ教室のようなもので、これが2000年のことですからJAZZを聞き始めた次期としては世間一般からゆうに3、40年くらいは遅れていたと言えます。
ちなみにその頃Oさんはトランジスターアンプから真空管アンプ、CDからアナログレコードに路線を変更したばかりで、口癖のように真空管アンプとレコードのほうがやっぱりはるかに良いねと言っていましたが、僕はそんなお金のかかるもの絶対やらないぞ、CDで十分じゃないかと、なぜかかたくなに思っていました。
そのうちTさんが昔使っていたアンプが要らないので、持って行かない、値段はいくらでもいいよ!と太っ腹な事を言い出しました。
そのアンプはわりと大柄でずっしりと重くプリとパワーが別々になっている随分と立派なものでした。
その頃は名前も知りませんでしたがLUXMANというメーカーのC-06とM-06というアンプでした。
いったい幾らくらいのものか解らなかったのですが、大きくて重かったのでとりあえず10万円支払いました!後で調べてみると相当高いものでした。
そうやって僕のオーデイオが、なんとなく始まってしまったのです。
こんな立派なアンプが来ると棚に置いた小さなスピーカーはなんとも頼りなく思えて、やっぱり床に置くスピーカーがほしくなります。
しかしまったくオーデイオの知識などないので、Tさんに聞いて見ると、「オークションに今出ているこのスピーカーが好いんじゃない」と言われ、その名前も聞いたことの無いスピーカーを素直に落札しました。
そういえばこれがオークションの初体験でした。その後オーデイオではすっかりオークションのお世話になるのですが、それ後のちのお話。
そのスピーカーは英国製のデイットン25というスピーカーで適度な大きさと、なかなか品の良い見栄えのものでした。残念ながら音の良しあしはまったく解りませんでしたが金額は6万5千円でした。
こうやって気が付いて見れば、なかなかリーズナブルな金額で金額以上の立派なセパレートアンプと英国製スピーカーのセットが揃っていたのです。
これでTさんの言うようにスピーカーを床に置くことになり、やっとオーデイオマニアの仲間入りができたのでした?
ラックスマンのパワーアンプとプリアンプ、そしてデイットン25、音についてはまったくわかりませんが、これで気分だけはいっぱしのオーデイオマニアです。
この頃からオーデイオ雑誌なども読み出すようになり、いらない知識がどんどん増えていったのです。
次はCDプレヤーです。雑誌で研究した結果どうやらROTELという、これまた聞いたことの無いメーカーの製品が良いらしい、しかもゴトウ音響というところでチューンするとさらに素晴らしい音になる事を発見しました。
チューンアップ!今まで車の世界でしか聞いた事の無い言葉でしたが、何と言う魅惑的な響きでしょう!
これで100馬力の車が120馬力になったり、圧倒的にコーナリングが早くなったりするのです。
雑誌の記事や広告を素直に信じていたその頃の僕は、少しも迷うことなくチューンアップされたローテルのCDプレヤーを購入したのでした。
そしてさらにこれに交換しただけで著しく音が良くなるというスピーカーケーブルも購入、この顛末は以前ブログに書いたとおりです。
これで一通り揃った、後は聞くだけ!と一息ついたのですが、実はこれが始まりに過ぎないとは、その時の僕にはもちろん想像することさえできません。
CDだけで十分、けしてお金のかかるレコードの世界に行かないと決心していた僕は、これまた様々な雑誌で研究した結果、次にCDの音質改善の決定打と思われたCDを聞きやすくする機械も購入しました。まことに勢いとは恐ろしいものです。
この装置は僕には世紀の大発明のように思われました。なぜならCDではなぜか特に弦楽四重奏などが聞き辛かったからです。
CDでは人間が聞くことの出来ない高域をカットしているため、聞き辛く感じてしまうそうで、この機械はカットした高域にノイズ(もちろん聞こえません)を付け加える事によって,CD独特の聞き辛さを無くし、自然な音を再現できるというのです。
その実例として、この機械を導入した人がCDで拍手の音を聞いていたところ、台所で聞いていた奥さんがわざわざやってきて拍手の音が自然になったと言ったので驚いたという話がのっていました。
台所にいた奥さんでさえその違いがわかるのですから、台所にはいませんが同じシロートの僕にだってわかるに違いありません。なんという素敵な装置、これさえあれば無敵です。
大船に乗ったここちでこの装置をCDプレヤーとアンプの間に繋ぎ早速拍手の音を聞いて見ました。
思った通り随分と自然に感じるではありませんか!これは素晴らしいと喜んだのですが、その後冷静に色々と聞き比べてみると、結局解った事は台所の奥さんのほうが、もしかして僕より耳が良いのではないか?と言うことだけでした。まあそう言うことです。
この装置の時すでにオーデイオの大ベテランであり現在ブログでも有名なGRFさんがこの音を聞いて、その時にこう聞かれたのを今でも覚えています。
「OMOSHIRO―ZUKINさんはいったいどんな音を望んでいるの?」
それを聞いた僕は驚きました。世の中にはそんなに色んな種類の音があるのか!
もちろん僕がどんな音を望んでいるかなんて、その時にはさっぱり解りません。
それから10数年たって、おぼろげながらにも、その質問の意味がようやく理解できるようになったのです。
進歩はあまりにも遅いと言う他はないでしょう。
(続く)