スピーカーを床に置いた時(その2)、ラックスマンとアキュフューズ |
合計10万円のオーデイオ装置から,思いがけなくも、いきなりデイットン25、LUXMANのC-06 M-06、チューナップしたローテルのCDプレヤーという、今まで想像もしなかった立派な機材を手に入れたその時はJAZZへの興味とオーデイオへの興味がうまい具合にぶつかったクロスロードだったようです。
そのうえLUXMANのアンプを譲ってくれたJAZZの先生Tさんから、使っていないからこれ持っていけばと、デンオンのダイレクトドライブのプレヤーまで頂いてしまったのです。
しかもアルパインLUXのフォノイコも付けてくれるという大判振る舞い。
これで訳の解らない内に、あれよあれよとオーデイオマニアとしての陣容がばっちり揃ったのでした。あまつさえ不要になったという日本盤のレコードまで貰ってしまってはもう後には引けません。
CDだけで行くぞ!という僕の堅い決心は、Tさんの太っぱらな追い打ちで早くも崩れ去ったのでした。
(日本盤は輸入盤にくらべて音が悪いというレコードマニアの常識もこの時初めてききました)
その頃そのTさんはCDから脱出してロクサンのプレヤーと真空管アンプでアルテックバレンシアを鳴らしていました。
それがどんなに眩しく見えたことでしょう。なんせ今までまともなオーデイオ装置など見たことも聞いたこともなかったのです。
まるでJAZZ喫茶で聞くような(もちろん当時の僕には最大級の褒め言葉です)迫力ある音は、間違いなく僕の魂とふところを直撃して行くのです。
すべてTさんからのアドバイスや頂きもので始まった僕のオーデイオですが、当初は目も耳も歓喜にうちふるえるばかりだったのですが、そのうちにどうも「何となく迫力が無い、JAZZの熱気が伝わってこないな」という疑問がふつふつとわき上がってきたのです。
人生において疑問ほどやっかいなものはありません。幼い子供のようにその時その瞬間が唯一の真実だと直感的に解ってしまうのが一番なのですが、疑問がわいてくるとそれを解決するための向上心というものも一緒に湧いてきます。それが心の中だけで解決していくだけなら良いのですがオーデイオの場合は機材という現実の形を取取るのですから困ったことです。
しかも世の中には向上心より最初の直感のほうが正しいことも多々あるのですから!
レコードプレヤーを手に入れて、すっかりレコード贔屓になった僕は、プリやパワーに較べると値段的にはランクの落ちるLUX/アルパインがレコードの音が良くない原因と判断し、次に同じラックスマンのシリーズのE―06という同じシリーズのフォノイコの中古まで導入してしまったのです。
こうやってLUXMANのCシリーズを3つならべると、デザイン的に統一されて、とても良い眺めだったはずですが、音だけに夢中だった僕にはそんな余裕はまったくありません。
E-06は当時から評判の良いフォノイコで、先日ふとオークションを見たら現在でも僕が購入した値段より高い値段で取引されていたので驚きました。
今思い起こしてみると、この最初のラックスマンの3種類のセットが一番見栄えも良くかつ高級品だったかもしれません。
しかもそのセットで慣らしていたデイットンの音は甘く柔らかくて実に良い音だったような気もするのです?
しかしこの柔らかくて上品な音では当時の僕が望んでいたJAZZの迫力は出ませんでした。
その頃知りあった近所の方から迫力が出ない原因はプリにあるのではないかと言うアドバイスを貰いました。
その方のお勧めはアキュフユーズのC200でした。
そこで血気盛んな僕は素早くC-06を売り払い、代わりにこれを導入してしまったのです。
こうやって売ってはその資金で他の機材を購入するという僕の自転車操業オーデイオの最初の形が出来ました。
このプリがSだったのかLだったのかXだったのか今では覚えていませんが、横にウッドパネルの貼ってある高級感のあるプリでした。
これでラックスマンとアキュフユーズという2大メーカーの混合システムとなったのです。
確かに元気は出ました。そして、この時はじめてアンプによって随分と音が違うということを体験したのでした。
今になって冷静に考えて見ると、オーデイオを始めたばかりの時にLUXMANとアキュフユーズという国産で一番ハイエンドの機材で固めていたわけで、なんとも贅沢なことでした。
振りかえって現在、どこで道を誤ってしまったのか、ここに書くのがはばかれるような装置?にたどり着いた僕は、時々、この頃の陣容が眩しく見えるだけでなく、この音を聞いてみたいと思うのです。
もしかしたらその時の音は今より良い音だったのではないか?
たぶんそんな事は無いと思いますけど、先週降った雪が歩道に残っているように、どこかにそんな思いも残っているのです。
オーデイオの世界では前進することが必ずしも進歩でないことは良くあるようですし・・・。
さてアンプも一通り揃ったし、これでJAZZの熱気が出てこないのは、やっぱりスピーカーか!という結論に辿りつくのは時間の問題でした。
そこで今度は自分の耳で気に入ったスピーカーを手に入れようと、これまたシンプルでいながらたいそう難しい問題に挑む事になったのです。(その3に続く)