うっかりオーデイオの日々~AMPEXのプリアンプ。 |
うっかりは天性のものなので今さらどうにもならないようですけど、オーデイオ方面にもしっかりそれが出てしまいました。
だいたい僕のオーデイオは人に語れるほどの装置でも知識でもないし、うっかりも多いのですけど今回はさすがに驚きました。
それは現在ちょっとお休み中のプリアンプのことです。ちょっとばっかし音がきつかったので、ここのところずっと別の乾電池式プリアンプを使っていたのですが、たまには聞かなくてはと思い立ち、ついでに真空管でも交換してみるかと木製ケースから本体を出し中の真空管を交換しようと、ふとアンプを裏返して見ると小さい紙が貼ってあるのに気が付きました。
そこには簡単な略図が書いてあり、トランスの位置とか真空管の品番などが記載されていました。
よーく見ると2本ずつきちんと並んでいる真空管の一本だけがなんとなく字ずらが違うような気がします。
ふたたびもっとよーく見ると3本は12AX7なのに、一本だけ12AU7と書いてあるではないですか!
今までずっと4本とも12AX7が刺さっていたのです。
その時はたった一文字違いの上、形や差し込みなど同じ形なので、それほどの違いはないと思ったのですけど調べて見ると大違い。
「設計上12AU7を使うべきところに、12AX7を交換すると、超ハイゲイン状態となり、極端に歪み、致命的な音質となります。」ということではないですか!これは大変とあせりましたが、今さら焦ってもしょうがない、なんせもうすでに数年も使ってるんですから!
このAMPEXプリアンプはなんせ古いものなので購入した当時は音は出ましたが酷いもの、とてもまともに聞くことが出来るものではありませんでした。
そこでビンテージのアンプの修理を専門としているYさんに修理をお願いし、幾多の部品などを交換してもらい何とかまともな音が出るようにしてもらいました。
その時お聞きした話ですと、このプリのフォノ回路を有名なダイナコPASS3が踏襲しているそうで、なかなか優れモノのプリとのことでした。
その後購入時に付いていた真空管4本をレイセオンの物に交換したのですが、当時我が家にもあったダイナコの元になった回路というので,てっきり4本とも同じ12AX7だと思い込んで4本同じ真空管をつけていたのです。思い出してみても購入時から4本同じ12AXが付いていたような気がします。
なかなか元気の良い音を出しましたが、前述のようにきつい音だったのはこのためだったようです!
しかし一年以上もこの状態で使っていたのですから情けないものです。
しかもこのプリもまったく音も聞くこと無く見かけの良さだけで購入したものですからポリシーが無いことおびただしい。
聞くところによると、AMPEXはロクな機材も無くヨーロッパ製の製品が幅を聞かせていた米国のスタジオで、なんとか米国製の良いものを作りたいと、あのビンクロスビーが資金を出して始まった会社だそうで、そのストーリーを聞いただけで信用してしまうのがうっかりなところ。
そういえば、だいたい僕のオーデイオ製品はまったく聞かないで購入してしまうものが多いのです。
いわくデザインが気に入った、なんとなく良さそう?(直観)人が勧めてくれた(信じやすいタイプです、というか自分の基準がないのです)などの理由がほとんどなのですから。
幸い今回も親切な知人の助けの手がすぐ伸びて、使っていないSU7を届けてくれました。
「うっかり」によって失っていたこのプリの実力を聞く時がやっと来たのです!
早速一本だけ、頂いた正規の12AU7に交換して、期待に胸を高鳴らせて聞き始めました。
まずはアナログです。確かにきつさは取れます。しかし特製が違う真空管でこの程度の変化?と言う程度でものすごい変化を期待していた割には肩すかしだったでしょうか?
基本的にはいままでと同様元気いっぱいの方向で、それが少しまろやかになった感じでしょうか。
これだったら現在暫定的に使用しているごく標準的といわれているフォノイコと乾電池式のヘッドアンプと乾電池プリの組み合わせのほうが解像力の良さやすっきりした抜けの良さでずいぶん上回っているではないですか。
ついでにもう一度ヘッドアンプをトランスに交換して聞いてみました。
するとまたがらっと雰囲気が変ります。
音色に太さと滑らかさが出てこれはこれでいい塩梅です。聴いているうちにこういう音もありかなという気持ちにさえなってしまうではないですか!
聴いている内に真空管が馴染んできたのかもしれません?
変化の大きさはCDのほうがずっと大きくて、とても柔らかくで聞きやすくなります。
JAZZボーカルや昔のJAZZなどにはぴったりの雰囲気で、バイオリン・ソナタなども暖かい弦の音でとてもまろやかに聞こえます。
愛聴盤のジミーウエッブのJust Across the River は歌声が前に出て実在感もたっぷり、まさにぴったりハマるではないですか!
これがもともとこのプリの実力なのでしょう。ほれぼれするような男っぷりの良さです?
一方現代のJAZZとなるとちょっと透明感が薄れて、ボーっとしてしまうようです。
ブランフォードマルサリスの名盤エターナルがまるで60年代の録音のように聞こえます。
音と音の間の空間もあまり出てはくれないのです。
人によってはこういう音のほうが好きな人もいるかもしれませんが、最近透明感や静けさに耳が向かってしまう僕向きではないようです。
オーケストラになると同様に空気感とか楽器の分離が悪くなりホールの雰囲気も減少するようです。
AMPEXのプリが現在使用中のプリと圧倒的に違うのはレンジの広さで、乾電池プリに戻すと高域の伸び、低域の出方がまったく違います。
同様に静粛感も驚くほど違うのは乾電池プリのSNが高いからでしょう。
どちらが実際のコンサートを彷彿される音かと言えば、圧倒的にシンプルな回路の電流伝送方式の乾電池式プリに軍配があがるようです
こちらにするとはっとするほどの静寂と広々した空間が戻ってきます。
しかしソースによっては真空管プリならの良さもあるようなので、そこいら辺りはもう少しじっくりと聴きこむ必要があるかも知れません。
なんせ僕の場合、気が短いというか、ちょっと聞いただけでこれは駄目とか、これは合わないと思って、今までに何度失敗したことでしょう!
しかも聞くたびに評価がちがってしまったりすることも多々あるので、まったく自分で自分が信用できないというありさま。うーん。
いつまでたってもつい「うっかり」のほうが先に立って、じっくりのほうが後であわてて追いかけてきても追いつけないようです。
しかし、いまさら反省ばかりしていても好奇心が先に立つ軽薄な性格が治る可能性は低いはず。
このさい「うっかり」だって偶然に良い結果を生むことだってあるはずと信じて、これからも運と直感まかせのオーデイオの日々を過ごすことになることでしょう。やれやれ。