オーケストラ伴奏の歌曲が聞きやすいから好き!「夏の夜」と「最後の4つの歌」 |
僕のクラシックの先生であるIさんのお宅で良く聞かせてもらったのが歌曲でした。
しかしピアノ伴奏だけの歌曲は初心者の僕にはちょっとばっかり難しすぎます。
なんだかきちんと正座して、歌手とか作曲者とかの深い悲しみや悩みをしっかりと受け止めなくてはならないような気がしてしまうのです。
ところが同じ歌曲でもオーケストラの伴奏がつくと、ぐっと華やかになり、初心者にも聞きやすくなります。
そんなわけで色々聞かせていただいてまず最初にとても気にったのが、世にも美しいペルゴレージの「スターバト・マーテル」だったのですがこのことは前に書きました。(それにしても良い曲ですね!)
次に気に入ったのがベルリオーズの歌曲集「夏の夜」です。
最初に聞いて気に入ったのが歌ビクトリア・デ・ロス・アンヘルス、指揮シャルル・ミンシュ、ボストン交響楽団のものです。
なんとも言えないフランス風の独特で軽やかな旋律とアンヘルスの無理の無い伸びやかな歌声がすっかり気にいりました。
ベルリオーズの歌曲はちょっとひねた彼の交響曲などと違い、エキセントリックなところが少しもなく素直でとても聞きやすく感じます。
この一曲ですっかりアンヘルスのファンになり、中古レコード店で3枚組BOX(1949年~69年)の彼女のレコードを買いました。これは今でも好きなアルバムとなっています。
しかしこれって2003年頃の話ですから、愛好家から見れば30年近く遅れてます。
彼女が来日した86年にそのコンサートに行っていた人に言わせればなにを今さらでしょう。
先日20代のやつがエルヴィス・プレスリーが好きだというのを聞いて驚きました。
若いのに感心なやつだと暖かい気持ちになりましたが、どうかそういう暖かい気持ちで読んでくださいね!
(話は飛びますが、いつ頃からプレスリーからエルヴィスという呼び方に変ったのでしょう?昔はみんなプレスリーと言っていましたよね)
一曲目の「ヴイネラル」はとても親しみやすい名曲ですが、2曲目の「薔薇の幽霊」も好きです。
前の夜、胸を飾っていた薔薇が幽霊になるという不思議な歌詞で、他の曲も含めこの歌曲集はちょっと変った詩が多く、ひたすら真面目なドイツ歌曲とはちょっとちがうフランス風のエスプリの効いたものです。
この歌曲はレジーヌ・クレスパン、指揮アンセルメ、、フォン・オッター、指揮レバインなどの名盤もあり、どちらも好きなアルバムです。
好きになった曲はなんとか生演奏で聞いてみたいと思うのですが、そう思っていると、たいていそれを聞く機会が巡ってくるのは不思議です。
「夏の夜」はたまたまの旅先でスーザン・グラハムの歌、テイルソン・トーマス指揮、サンフランシスコ交響楽団で聞くことができました。
この日のプログラムはドビッシーのノクターン、デユカスの魔法使いの弟子、などフランスものばかりで、軽やかな音色のサンフランシスコ交響楽団にぴったりの良いコンサートでした。
リヒャルト・シュトラウスの「最後の4つの歌」は、彼にしては素直で解りやすいメロデイが異色かも知れません。
「薔薇の騎士」の中のアリアのような複雑で覚えにくいメロデイではなく、誰にでも解りやすくて直接心をぐっと掴まれるようなシンプルで美しい歌です。
もしこれがピアノ伴奏だけの曲だったら、もっともっと悲しくて深く沈みこんでしまうような気持ちになってしまうことでしょうが、あまりにもきらびやかで華麗なオーケストレーションがつくので、そのあざやかな光に目を奪われてしまいます。
それはピアノ伴奏だけのドイツ歌曲で感じるような、冴える冬の荒野にすさぶ風のような茫漠とした悲しさではなく、広々した草原の遥か彼方の山の裾野に、落ちて行く太陽の最後の光が空を一瞬明るく染め上げる瞬間に感じる様な透明な悲しさなのです。
この中の「夕映えの中で」などは歌詞もまさにその通りで、歌の最後に残照がまさに消えようとしている空に雲雀があがり、そのひばりの声をピッコロが奏でるところなど、ただうっとりするばかりで、僕はこの歌を聞くたびに、ある好きだった場所の夕暮れを思いだしてしまいます。
そこでは限りなく広がるぶどう畑と、そこにシルエットのように浮かぶ丘陵の上に雄大な夕暮れが広がるのです。
この曲は初めて聞いたエッシェンバッハ指揮、ルネ・フレミングのものが一番印象に残っています。
2008年にフレミングがこの曲を再録音したので喜んで買って聞いて見ましたが、僕には最初に入れたほうがずっと良く聞こえてがっかりしました。そればかりか録音も昔の盤より優れているとは思えませんでした。
有名なものではシュワルツコプ、とかニーナ・ステメ、僕の好きなルチア・ポップが歌ったもの、など色々ありますがどれを聞いてもこの曲の素晴らしさとオーケストレーションの素晴らしさに圧倒されてしまいます。
あまり有名ではないかも知れませんが?メラニー・デイーナという方が歌ったデビット・ジンマン指揮のものも結構好きです。
この曲も幸いNHK交響楽団、指揮エド・デ・ワールト、歌スーザン・バロックで生を聞くことが出来ましたが、あまりにもCDで聞きすぎていたせいか、残念ながら初めてフレミングのこの歌を聞いた時ほどの感動はありませんでした。
というわけでオーケストラ伴奏つきの歌はとても聞きやすいのでクラシックの歌はどうも、と思っている人(10数年前の僕がそうでした)にはお勧めです。
趣のある内容に ふっと立ち止まり 愉しませて頂いております
映画の記事など、奥が深く 貴方様の感性が伝わります。
今夜も足跡を残します(^^)