巡り巡って300B? UESUGIの300Bアンプ(プッシュプル、モノラル2台)がやってきました! |
300Bと言えば真空管の中でも王様と呼ばれひときわ人気の高い球です。
もちろん人気ばかりでなく,高いのは値段のほうもでして、もともとこの球を作ったウエスタンエレクトリックのオリジナルの球などは一本数十万円の値段で取引されているようです。
【僕のスピーカーには合わなかったのですがOLDタンノイにはマッチするかも知れません。良かったらそのアンプ使ってみますか?】
そんな天からダイヤモンドが降ってきたような有難いお申し出が突然あったのは、まだ真冬のような寒さが残る早春の日のことでした。
しかも300Bプッシュプルモノラルアンプが2台という望むべきもないチョー豪華仕様なのです。
一瞬寒さなどどこかに飛び去ってしまいました。
現在つかっているパワーアンプに特別不満があったわけではないのですが、先日アビシャン・コーエンのベースを聞いてい以来、なにかちょっとばかり引っかかっているものがありました。
どうもベースの音がきつすぎると言うか無理がある感じなのです。
【パワーアンプを変えてみたらどうだろう?】どこからかそんな甘い誘惑の声が聞こえてくるではないですか!
かといって高いものは買えないので、値段がこなれていてかつ定評のあるQUAD405などをちらちらと物色していたのです。
それをご近所のCさんに話したところ、この有難いお話となったのです。
【300Bだけが無いので用意してください!】との事でした。
舞い上がった僕は二つ返事で【はいはい!もちろん用意します!!】とお答えしたのですが、調べて見るとさすが300B!結構なお値段ではないですか。
しかもこのアンプはモノラルのプッシュプルアンプ2台なので、なんと300Bが4本も必要なのです!
廉価なアンプを物色していた僕にはいきなりの180度方向転換です。
初代マツダロードスターの中古を探していたら、それがいきなりフェラーリになってしまったくらいの違いと言えるでしょう。
色々聞きまわった結果、【最近の中国製はなかなか良くなったよ】という言葉を信じて、いや信じなくとも予算の関係上迷うことなく中国製の300Bをすかさず注文したのでした。
驚いたのはこんなマニアしか買わないような真空管がアマゾンで手軽に買えることです。
しかも送料無料で頼んだ翌日には届くのですからすごい世の中になったものです。
今回購入したのはPSVANEという中国の真空管のメーカーですが、ここは日本の某メーカーの依頼でもっと高級仕様の300Bを作っています。
そちらのほうは一本で7万円以上もします。ということは4本で28万円!
僕が買った廉価版?のほうは一本一万円しないという安さです。
とは言え4本必要なので安い中古アンプが買えそうな値段ではあります。(現に今使っているマランツの中古アンプの値段より高いではないですか!)
オーデイオ関係者以外の人にはなんという無駄で高価な品物と感じられることでしょう!
アマゾンから届いたアンプが入っているのではと思うほど大きい段ボール箱を開くと、中から化粧品でも入っているような豪華な箱入りの300Bが現れました。
真空管といえば古びた箱や古い紙に包まれたものばかり見なれていたので、今までの常識を覆すようなテカテカと光沢のある黒い立派な箱にはすっかり恐縮してしまいます?
何重にも保護されたスポンジをはがすと、中からピッカピッカの300Bが現れました。
今まで使ったことのある6V6やEL34、もちろn6BQ5や12AX7などと較べてこんなに大きかったかな?と思うほど大きく立派です。。
すっかり舞い上がっている僕は、さすが300B!とひたすら恐れ入って神棚に祭ろうと思ったのですが、そんな物はないのでそっと元の箱におさめたのでした。
とはいえそんな僕だって300Bのアンプを2台、数年の間使っていたことがあるのです。
共にシングルのステレオアンプで、60年~70年代のガレージメーカー製だったと思われます。
一台はかなり大柄でもう一台はそれより2回りくらい小型だったでしょうか。
この2台は微妙に音が違ったのですが、僕の好みは見かけはしょぼい小型のほうだったのでもっぱらこちらでLOWTHERやタンノイの3LZを鳴らしていました。
このシングルアンプは透明感のあるくっきりとした音で気にいっていたので数年間は使っていましたが、どうしても不満に思えたのが低音でした。
オーケストラの低弦の響きがいまいち弱いのです。全体的に迫力は少々不足気味のようです。
そこでその後その低音を改善すべくEL34のプッシュプルに変えたのですが、その時には3LZは手元を去って別のスピーカーになっていたこともあるでしょうが
意外にもこちらもそれほど思ったようにはなってくれなかったのです。
(下の写真がその時のEL34アンプです)
その後タンノイのチャットワースがやってきてしばらくは元気の良い6V6プッシュプルや数種類の電池駆動のデジタルアンプなどで鳴らしていたのですが
どれも今一歩きつさが取れないのというのか、しっかりとスイートポットにはまらない状態が続きました。
OLDタンノイはなかなか気難しく相性が難しいようです。
(下の写真がその6V6アンプです。)
それからしばらくして【高域が奇麗でとても素直な音】だと教えていただいたのが現用のマランツのトランジスターパワーアンプでした。
オーデイオマニアにとってはあまりにも安い値段に驚きましたが(ヤフオクで2万円を切ります!)その値段とは裏腹につかって見るとこれが奇跡的と言ってよいほどにチャットワースと相性が良かったのです。
このあたりの経緯は以前にも書いた気がするので割愛します。
そして今回 予想外の300Bの突然の登場となったのです!
実は300Bプッシュプルに変えても、プリを交換するほどの音の変化はないだろうというのが僕の想像でした。
今までの経験ではプリのほうが圧倒的に音の変化が大きかったからです。
そしていよいよCさんが300Bプッシュプルアンプを持参してくれたのですが、もちろんきちんとしたCさんのこと事前に交換してあったいくつかの部品を上杉さん指定のオリジナルに戻した上で完璧に調整してあるばかりか、棚から出す時にその重さでうっかり腰を痛めてしまったというおまけつきです。(ほんとにすみません)
このアンプはUESUGI TAP15という名前で、アンプ製作で有名な上杉さんが設計し部品がキットで販売されていたものだそうです。その意味では純粋の上杉アンプではありませんが、部品はすべて上杉さん指定のものですし、製作はプロ以上にきちんと丁寧な仕事をするCさんが作成したものなのでその仕上がりに不満のあろうはずはありません。
一見わりとコンパクトに見えますが、見かけとは裏腹に持つとずっしりと重量を感じます。
特注のタムラ製作所の大きくて立派なトランスが重量を稼いでいるのでしょう。
上杉さん本来の指定はスベトラーナ製の300Bですが、そこはなんとか勘弁してもらうとして?PSVANEを差し込むとなかなか立派です。
大柄な300Bが4本も並ぶのですからその見栄えのよいこと、見るだけでも良い音がしそうな気がするではないですか!
300Bは見た目の良さだけでも随分と得をしているようです。
さていよいよ音出しです。
まだ真空管も馴染んでいないので本来の性能は出ていないはず。
しかしその音は僕の想像をはるかに飛び越して、唖然とするほど異次元の世界を出現させたのです。
(長くなりすぎたので次回に続きます)