最近良く聞くアルバムから・・・カテイア・ブニアテイシヴィリの【MOTHERLAND】 |
人間恐ろしいもので、何が恐ろしいといえば飽きるということ。
あれほど気に入って聞いていたアルバムも、気が付けばいつの間にかCDの山に埋もれていて、あるときふと【あ、こんなのあったんだ!】と思い出したりする有様。
一方いつまでも飽きずに聞くアルバムもあって、こちらはいつも出しやすい場所に置いてあって、思い出したように聞いているので、実際のところこういうアルバムが数十枚あれば後はいらないというのが本当のところかも知れません。
飽きるものもあれば新しく見つけるものもあり、いつも聞いている定番のうえにこれらの新しいものがどんどんつみあがっていきます。
それは毎年、毎年同じようでいて新しい季節が変わって行くようなものかもしれません。
そんな新しいアルバム(僕にとってですよ!)のなかで最近良く聞いているのが・カテイア・ブニアテイシヴィリのアルバム【MOTHERLAND】です。
クラシック音楽のピアノソロというのは苦手なのですが、これはクラシック,JAZZという境界を越えたようなアルバムです。
このアルバムも例によって人から教えてもらいました。
僕のクラシックの先生Iさんから電話があり【先日TVで森の中でピアノ独奏というコンサートを見たのだが、この選曲が実にすばらしい、美人の若い女性のピアニストでグルジア人らしい!】とのお話。
IさんはあまりPCが得意でないので僕が検索してCDを購入することになったのです。
それがこのアルバム【MOTHER LAND】でした。
このカテイアさんはアルゲリッチやクレーメルなどが絶賛しているピアニストで、日本にも2012年にきてコンサートを開いています。知っている人には何をいまさらというくらい良く知られた人のはず!
調べていて初めて気が付いたのですが、なんと僕もこの人が演奏しているCDをすでに持っていたのです。
それはクレーメルのアルバム、チャイコフスキーのピアノ三重奏曲で、そのアルバムでピアノを弾いていたのが彼女でした。
このチャイコフスキーの美しいメロデイーの曲は結構好きで良く聞いていたのですが、なんせ難しいスペルなのでジャケットを見ても彼女の名前は目にはいらなかったのです。
この【MOTHER LAND】は、らしからぬタイトルもそうですが、ジャケットからしてクラシックのアルバムとは思えません。
お花に埋もれた美人の写真はPOPSかJAZZ歌手のアルバムのように見えます。
このアルバムタイトル、僕は単純に遠くはなれて懐かしい故郷を偲ぶという意味かと思ったのですが、Iさんの想像ではちょっと違うようです。
【彼女のお母さんはとんでもなく音楽の教養がある人で、その母親が娘たちに音楽の素晴らしさを教えたに違いない。そしてピアニストとして一本立ちした娘がその母親に送った感謝の思いがこのタイトルだ】というのがIさんの想像。
確かにこのアルバムの曲の選び方はピアノ曲が苦手の僕でも感心するほど飽きずに聞き続けることが出来ます。それどころか気が付くと何度でも聞いているではありませんか!
Iさんはこの選曲はよほど愛情を持って音楽を深く聞き込んでこないと出来ないはずだと言います。
そしてその環境を作ってきたのがお母さん【MOTHERLAND】というわけです!
そういえば近頃の若い演奏家はあまりにも自分で音楽を聴かないといつもIさんが嘆いていましたが、僕もその意見に賛成です。
昔の演奏家の名演奏を聞かないだけでなく、自分の演奏するジャンル以外はほとんど聞いていないという若い演奏家が多いのにはびっくりします。
確かにIさんが想像するようにカテイアさんはそれとは違い様々な音楽に触れる環境にあったのかもしれません。その違いがこの選曲と演奏に表れているというのはこのアルバムを聞いているとまことにもっともにに感じられます。
そういうIさんはさすがです。このアルバムを一緒に聞きながらほとんどの曲を解説してくれました。
なかでもIさんが全曲持っている、お好きなバッハのカンタータをピアノ曲にアレンジして演奏するというセンスにえらく感心していました。
僕が持っているコジュナーがバッハを歌うアルバムにもこのカンターター208番がはいっているので知っている曲です。
ところが彼女がピアノ曲として弾くとそれはコジュナーの歌とは違い、まるで親しみやすい童謡のようにきこえます。それというのも彼女が弾くのはこの曲の歌の旋律ではなく、もっと覚えやすい伴奏の旋律のほうを弾いているからです。
ピアノの演奏については何も言えない僕ですけど、なんとなく感じるのは彼女のピアノの自然さです。
それは歌うようなピアノという言い方もできるかもしれません。
激しい感情の盛り上がりとか、燃えるような情熱とかが迫ってくるような演奏ではありません。
かと言って冷徹で沈着かというとまた違います。
確かに溌剌とした若さに溢れてはいるのですが、それがあえて誇張されることもなく、そのテンポはまるで寄せては返す波のように乱れることなく心地良く響いてきます。
ずっと聞いているとクラシックとJAZZの境目がなくなって、音楽を演奏する喜びだけがあたりを飛びまわっているような心持になります。
JAZZピアノが好きな人でもきっと楽しめる素敵なアルバムです。
さて話題はがらっと変わって今度は別の意味ですっかり驚いたアルバムです。
それはトニーベーネットが80歳の誕生日を記念して作ったアルバム(なんと、あれから8年も経ってしまったのですね!ついこの間のような気がしますが!)
そしてその5年後、85歳の時に出した【デユエッツⅡ】(この時もまた出したの!と驚きましたけど)に続く、何と3作目の【VIVA DUETS】です。
2012年に発売されたようですが、僕はまったくこのアルバムのことを知りませんでした。
最初の【デユエッツ・アメリカンクラシック】はTVでも放映されましたし、僕もわりと良く聞いたアルバムでした。
ただ僕にはトニーベネットの歌はちょっと一本調子に聞こえて、ずっと聞いていると少し飽きてしまうので2枚目はほとんど聞きませんでした。
そしてこの3枚目です。今回はラテンの歌手との共演です。共演者が彼の持ち歌をスペイン語で歌っているのがなかなか良い雰囲気のアルバムです。
そして彼の声の若いこと!80歳の時に作ったデュエッツを聞いて、なんと若々しい声と驚いたのですけど今回のこのアルバムでもまったく衰えを感じません。
それどころか情熱的な雰囲気のラテン歌手の中でもっと若返ったような感さえあります。
この二つのアルバムを聞いていると演奏したり歌ったりすることの楽しさが実にひしひしと伝わってきます。
20代のカテイア、80代のトニー、これだけの年齢の幅があるにもかかわらずそこにあるのは同じ一つの喜び、音楽の楽しさです。
この世界に音楽というものがあってほんとに良かったなと改めて思うのでした。
クラッシックの番組は、いつもブルーレイレコーダーに自動取りをしているので、見逃すことは、あまりありません。セットすると便利ですが、見ないのに、どんどんたまると言うこともあります。(笑)
私もこのアルバムは素晴らしいと思います。
とても美しいですよね。なんというか・・・空気に感動します。
私も拙ブログでちょこっと感想を書いています。
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