やっぱり美味しいものを食べると幸せになるということが再確認できた日。食べることは大事ですね(その2) |
美味しいものを食べに行くとなると、まず真っ先に浮かんだのが麻布十番の【イル・マンジャーレ】だったのですが、Uシェフが店を閉めてしまって早1年と3カ月、その間ずっと復活を心待ちにしているところです。
となると知っている持ち駒は他には一つ、【エルルカン ビス】しかありません。(この2店は同じ美味しいものでもどっちかというと正反対の味なのですけど!)
このお店がまず素晴らしいのはその佇まいです。
部屋の片側はすべてガラス張りで、そこに広がる一面の竹林の緑と光がテーブルに座ると目に入ってきます。
竹というのは年中青々としているので季節感に欠けるのがたまに傷ですが、真冬でも光のきらめく竹林を眺めているとその風景にはどこかほっとします。
ヨーロッパでは竹はとても珍しい植物らしく、子供の頃愛読したコナン・ドイル(ホームズの作者です)の【失われた世界】という小説の中には崖から落ちた動物が、生えている竹そのまま刺さっているという描写がありました。自然の竹を見たことの無いドイルは尖ったままはえていると思ったのです。
ともかくご馳走を食べる前にまず雰囲気のご馳走が味わえるのが特徴。
前回は料理数の多い高い方のコースを食べたのですが、量が多すぎたのと、このコースには僕がこのお店の特徴だと思っている大好きなスープが入っていなかったので今回は迷わず皿数の少ないコースを選択。
まずアミューズメントはいつものチーズパイに伊豆の山中で獲れたイノシシの肉で作ったテリーヌ。これが独特のコクがあって食べごたえがあります。
続いて一皿目の前菜は【待ってました!スモークサーモン】以前ここで食べたときたいそう美味しかったのでいつまた食べられるかと心待ちにしていました。
まずこうばしい香りがたまらない、そういえばここの料理はかすかにスモークされたような香ばしい香りが漂ってくるものが多かったことを思い出します。
今回は赤ピーマンのソースに暖かい半熟卵をまぶして食べるというちょっと濃厚な風味の演出です。
やっぱりここのスモークサーモンはうまい!
ふた皿の前菜はシイタケに鳥のレバーとフォアグラを合わせ、それに衣をつけて揚げてあるフリッターです。
ぱりっとした上品な衣とこくのあるレバーとリンゴのソースのマッチもよく、暖かい前菜というのが冬にはぴったりです。
今回のメニューはアミューズからここまでしっかりとした味の前菜が続き大満足!この3皿にパンがあるだけで充分満足できるランチになります。
パンといえばここのパンはおいしいので前菜のテリーヌとかサーモンとかはさんで食べたらおいしいのになあと思っていたら、なんと半冷凍されたものをフランスから空輸して、それをお店で焼いているとのこと、なるほど凝ってます。
さていよいよお待ちかねのスープです。今日は大根のスープでした。
いつも野菜の味を生かしたスープなのですがなにより感心するのがその出汁と微妙な塩加減の絶妙さです。
材料の味をしっかり保ちながらもその旨みだけでない、何かすぐれたコンソメの出汁が使われているに違いないのです?
ここで味を想像するときに間違えてほしく無いのは、いわゆるおまけについてくるような濃い味のスープとはまったく正反対だということ、きわめてほんのりと上品なのです。実に丁寧に作られた緻密な味です。
これはスープだけに限らずすべての料理に言えることですけど!
ぺろっと平らげてしまって【はいおかわり!】と言いたいところですが、そうはいきません。
いよいよメインです。肉好きな僕は迷わずお肉を選びます。
シンプルに豚を低温でじっくり焼いてグリーンペッパーとエシャロットのソースをかけたシンプルなものですが、これがまた実に美味しい!
とんかつ以外にはなかなかおいしいポークチョップに出会えないと残念がっていたのですが今回久々に出会いました。
ここのメインはいつもはメインより付け合せの野菜類の美味しさの印象の方が強いのですけど?今回は実にしっかりと印象に残りました。
そしてデザートもまたあたりでした。
ここのデザートでいつまでも忘れられないのがパリッとした触感のパイナップルを使ったものでした。(当時はデザートを数種類から選ぶことができました)今回はテイラミスに和三盆をつかったアイスクリームがついているといういかにも普通っぽいものでしたが、全体的にしっかりとした味のものが多かった今回のメニューにぴったりだったのか、想像以上に美味しく食べることができました。
もちろんいつものココナッツの香のするブラジル風プリンも健在です。
というわけでいつも以上にすっかり満足して≪やっぱたまにはこういうちゃんとした物を食べなくてはだめだなあー≫とつくずく思ったのでした。
こうやってゆったりとした雰囲気の中で美味しい食事を食べると、その時間はまさに幸福という言葉になります。ごはんを食べるだけで幸福に感じる時間を持てるレストランは実に少ないのです。
僕の場合値段が極端に高いとそれだけで幸福感がそがれますし、あくまで【この値段でこれだけのもの!】という驚きがなによりです。まったくもって【せこい】というか情けないと思うのですが、その制限の中で条件に合ったレストランが見つかるというは有難いことです。
とはいえレストラン選びは音楽と同じようにあくまで個人的な嗜好と価値観によるので、この選択もまた人の数ほどあるのでしょう!