CDトランスポート聴き比べ再び!。 XA50ES、55ES、X501を今度は3人で聞き比べました。 |
夏の名残りのような蒸し暑い空気は消えて、すっかり秋の乾いて澄んだ空気になってきました。
オーデイオは冬に限るというのはオーデイオの大先輩の名言ですが、確かに夏の湿気を含んだ重い空気は音を悪くするようです。空気が澄んでくると音も一緒に澄んでくる気がします。
さて先日調子の悪いXA50ESをX501に変えてみて、その後やっぱり元に戻してしまった顛末を書きましたが僕の耳はもともと心元ないので、卑怯にも【もしかしたら録音されたものをより忠実に再現するのはX501のほうかもしれない】などという逃げが打ってありました。
そこで今回知人に聞いていただけそれを検証しようという絶好の機会が巡ってきたのです。
わざわざ遠方からお越しいただけるというのですからオーデイオ友だちはありがたいものです。
しかも現在使っていない同じくトラポに改造を施したXA55ESも持参していただけるとのことなので、これでサウンドデザインの石田さんの改造した3機種を比較することが出来るという珍しい試みができることになります。
とはいえこの3機種は現在ではすでに販売されていない古い機械の上に石田さんもすでに鬼籍に入られており、今後改造や修理なども不可能なはずです。
しかも本来これはデジタルアンプのSD-05用に改造されたものなのでその性能が我が家できちんと発揮できていない可能性もあります。というわけけで実はなんの参考にもならない比較ですが、一般論としてCDトランスポートだけでどれだけ音が変わるのかという実験にはなるはず?
来訪いただいたのはKさんとそのお友達のOさん、共に僕よりもずっと経験の長いオーデイオファンです。
Kさんは昔はハイエンドからヴィンテージまでのオーデイオ機器を大量に収集していたり、すべての機材をカーボン仕様にしてしまうとか、たいへん過激なマニアだったのですが、今ではすっかり回心して煩悩を振り払い?多量の機材をすべて寄進し(売り払って)今では小さなスピーカー一個でつつましく聞いているらしいという涅槃の境地に達していられている方です。
Oさんは微妙な調整を徹底的に追い詰める方だそうで、その些細な違いまで判別できると言う鋭い耳を日夜磨き続けている、こちらはいわば求道者のような方のようです。
このOさんはKさんと同じくもともとはJAZZファンでしたが、現在はもっぱらクラシックを聞いているそうでフランコゼブリン設計の美しいデザインのスピーカーをこれまた美しい音で鳴らしているそうです。
ともに僕とは違い年季の入った立派なオーデイオマニアだといって良いでしょう。
余談ですが先日ブックオフで【あの時代、オーデイオへの憧れをふたたび】という写真が沢山はいった文庫本を買ったところ、対談や機材の紹介などにこのKさんが写真入り実名で登場していたので驚きました。(2003年発売の本でした)さっそくKさんにその旨連絡してみると、その本に登場したのが間違いでそもそもの混乱始まりだったなどと言っていましたが、僕の想像ではそれ以前にとっくに道を踏み外していたはず??それが今では解脱者ですから!?
さてそんなお二人がやって来たのはお天気の良い秋晴れのとある午後のこと、静かな我が住宅地にいきなり爆音が響いたかと思うと、全身黒ずくめで地を這うような車高の低さに、派手なエアロで武装したいかにも危ない感じのTOYOTA86が姿を現したのです。すべてTRD(トヨタのモータースポーツ部門)のパーツで固めたコテコトのチューナップカーです。
いったいどこの族かと身構えていたら、その車から降りてきたのが件の二人だったのには驚きました。
どうやらKさんが最近手に入れた車らしいのですが、悟りの境地にいるのかと思っていたら大間違いでいまだに過激な俗世間にとどまっていたようです!
それにしても若いぞ!
さて車からよっこらしょと下ろしてきたのが、トランスポートに改造されたXA55ESです。やっと持ちあげられるくらいの重量なのですが、さらに重くてかさばるもう一つの物まで持参してくれました。
それはいわゆるアイソレーショントランスと言うものなのですが、その重いこと重いこと、やっと持ち上げられるほどの重さの上にさらにとっても大きくてかさばる大げさなものです!
なぜこれを持参してくれたかと言うとX501の電源がスイッチング電源なのでノイズが出ているはず、その501のノイズをカットすればどのくらい変わるのかという実験のためです。ほんとにご苦労なことです、ありがとうございます。僕にその違いが解ると良いのですけど・・・
さて金田式のDAコンバーターをはさんで上下に置かれたCDプレヤーの上段、新しいほうの501から聞いてもらいます。
【なかなか音がクリアーで良く広がって良いではないですか!これのどこが気に入らないのですか?】というのが第一印象、お二人ともなかなかの好印象の様子。
それがヴァイオリンの音が・・・というので聞いていただいたのがモーツアルトやシューベルトのバイオリン・ソナタです。【けして悪い音ではないですよね、これで固いと感じるのですか?】という感想でしたが、引き続き壊れかけた50ESで聞いてもらうと【なるほど柔らかい、確かにヴィオリンの音色は温かみがあります】と言う事になります。
しかし【音の広がり空間の高さや情報量の多さでは圧倒的に501ですね】とのこと、【55ESはもう限界でやっと鳴っていると言う感じです、特にピアノの打音など切れ味が鈍く感じます。】たしかに501より音がずいぶんとちまちましてしまうのは確かです。
【そうなんですよ、僕もそう思うんですけど、501より50ESのほうが良いのはヴァイオリンソナタのバイオリンの音色だけなんです。だけどそれが問題なんです!】
僕はどうしても50ESのような柔らかさ(別の言い方をするならレンジの狭さ?)のほうが気持ち良く感じてしまうのです。
結局は【情報量の多さなどを聞いても501で行くべきでしょう。後はそれをどれだけ自分好みの音にしていくことが出来るかですね】ということになり、それではアイソレーショントランスを入れて501がどうなるかを聞いて見ましょうというわけで501の電源だけをこのおおげさで重いアイソレーショントランスに繋いでみます。
するとどうでしょう。ヌメヌメ感が消えてしっとりとした感じが出てきます。派手さが少し薄まって随分と聞きやすくなるではないですか!【これならいけますね!】【確かにこちらの方が良い】ということで意見が一致。
次に持参していただいた55ESに交換してみます。それにしてもこの50ESと55ES名前も似ているけど姿形もうり二つ、というか外見はまったく同じものです。
50ESの2年後くらいに出た55ESは2個の電源トランスにさらにもう一つ電源トランスを追加して合計3個にするなど、目に見えない部分に改良を加えているようでその惜しげもない物量の投下にはオーデイオの良き時代を感じます。
【やっぱりこっちの方が好きです】と僕、壊れかけた(読み取りの悪い)55ESと較べると格段にクリアーですが、その音色は501よりは当然50ESに近いのです。やっぱり僕としてはこの55ESが一番かな??
最後はアナログレコードで同じバイオリンソナタを聞きました。
【やっぱりアナログの音は聞きやすいよね】というのが3人の共通した意見でした。
結論らしきものといえば【最新録音のCDやオーケストラは501で聞いて、バイオリンの音色が問題のCDはレコードで聞くのが一番では!】ということでしょうか?
そうなんですよね。アナログは面倒だから聞かないと言う僕の姿勢が一番問題なのかも知れません。やっぱり本物のオーデイオマニアになるには根が無精すぎるようです。
さて幸いなことにこの55ESとアイソレーショントランスはしばらく我が家に滞在することになりました。
今回の聞き比べが今後よりじっくり聞くことによってまた何か変化するのかどうか・・たぶんあまり変わることはないと思いますけど。
さて今回聞いたさまざまCDの中で僕が最近とりわけ気に入っているのがユニオンで半額で買ったバルネ・ウイランのアルバムです。
これは2枚のLPを一枚のCDに収めたという半額でなくともお得なCDなのですが、なかでも【スインギング・パリジャン・リズム】というアルバムが絶品で何度も聞いてしまいます。
雰囲気は昔のバップみたいなのですが、違うのはそこには黒っぽい情熱とかエネルギーが感じられないことです。なので人によってはこんなのホントのJAZZじゃないと言う人がいてもけしておかしくはありません。
しかし僕にはその軽さが実に気持ち良いのです。こんなに上品なテナーサックス?なんて聞いたことありません!
なかでも気に入った曲があります。一つは良く知っているジャンゴラインハルトの【マイナースイング】、ステファングラッペリも良く演奏した曲でもあり、ルイ・マルの映画【ルシアンの青春】でも使われた名曲です。
そしてほかにも気にった2曲がありますが作者を見たら同じジャンゴ・ラインハルトの曲だったのです。
まったく知らずに聞いていたのに結局ジャンゴの作った曲が気に入ってしまうなんて、やっぱり僕にも少しは音楽が理解できるようになったのかも知れません。
そしてこういう古いモノラル録音(1958年)は501でも50ESでも55ESでも僕には気持良く聞こえたのですから、まったくオーデイオは不思議です。
(ちなみに写真の内2枚は先週の海蔵寺です!)