いよいよ春です。鳥の鳴き声とエリック・ローメール。 |
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2017年 04月 07日
やっと暖かくなりました。外に出るとあちこちで元気な鳥の声が聞こえます。 先日あるラジオ番組で昔の番組を再放送していました。ゲストは物まねの江戸屋猫八(故人)と目が不自由ながらエッセイ―や絵本を書いている女性の二人で、共通の話題は鳥の鳴き声についての話でした。まず驚いたのが二人とも鳥の鳴き声についての知識が半端でないことで、そればかりか鳴き声の真似も上手いのです。(もっとも一人はものまねのプロですからあたりまえか!)この二人の鳥の鳴き声についての話を聞いていると自分が普段いかになにも聞いていないことが実感されます。人によって見ている(感じている)世界というのはまったく違うのだという事がよーくわかるではないですか。まさに世界はその人の数だけ存在しているのです。 普段なにげなく聞いている雀の声ですが、まず朝一番は偵察の声で短く鳴きます。この声を聞くとああ夜が明けてきたのだなというが解るそうです。続いて皆がだんだん元気よく鳴いて来てそのうち餌を奪い合うようにさらに声は元気になっていきます。 短く鳴く求愛の声もまた独特です。そして夕方はちょっとけだるく【気を付けな!】みたいな警戒心を持ったくぐもった鳴き方になるそうです。そうやって雀の声に耳を傾けていると、今何時ころなのかわかるというのです。そしてラジオではそれぞれの鳴き声をすべて口で再現して聞かせてくれました。 そういえばつい数時前に今年初めての鶯の声を聞いたのですが、鶯の鳴き声は地方によって微妙に異なり京都風とか東京風とかあるそうです。その違いの再現も興味深かったのですが、さらに面白いのは鶯が鳴いている時、近くによって鳴きまねをするときの話です。鳥のそばで鳴き声をまねすると色々と反応してくれるそうですが、鶯の場合はあまり大きな音で上手に根気真似をやるとプライドを傷つけられたと思うのか逃げ去って行くそうです。とこらがわざと下手にやったり途中で途切れてしまったように鳴きまねすると、鶯のほうで【ふん、ふん、そうじゃないよ、こう鳴くんだよ】とお手本のように鳴いて見せてくれるそうです。 鳥の鳴き声の話を聞いていて思い出したのがエリック・ローメール監督の映画【レネットとミラベル】の中で森に夜明けを見に行く場面でした。この映画は都会の女性が田舎を訪問した時に偶然出会った女性と友達になり、その後二人でパリに出て共同生活をするという話ですが、例によっておおきなストーリーなどなにも無い話です。そしてこれまたどんな意味があるのか解らないような、ありそうでなさそうなちょっと不可思議な二人の女性の出来事が続きます。ロメールの映画は劇的とかたまらなく美しく見えるような凝った画面があるわけではないのにもかかわらず、なぜかふとした時に一場面を不思議と思い出してしまうのです。 鳥の声で思い出したのはその二人が出会った夜、田舎暮らしの彼女がどうしても森にいって夜が明ける風景を見せたいと言い出して無理やり夜明けに森に行く場面です。気乗りしない街暮らしの女性ですがなんとか早起きして出かけてきます。見晴らしの良い場所で薄暗い森を眺めていると様々な森の音が聞こえてきます。それはナイチンゲールの声だったり虫の声だったり木々を渡る風の音だったりするのです。 そしてだんだんと空が明るくなってくるとだんだんと鳥の声が増えてきます。とても静かで美しい瞬間です。その後突然車のクラクションが静寂を破って響きわたります。彼女は怒って泣き出してしまいます。どのときはなんだか変な人たちと思ったのですが、今になってその場面を思い出してみるとなんだか自分がその場所にいたかのように感じられてしまうのです。 今回ラジオで朝早く鳴きだす鳥の声の話を聞いて思い出したのがなぜかその夜明けの場面でした。 不思議なのはさまざまな機会にロメールの映画の場面を思いだすことが多い事です。それはダイナミックで壮大に撮られた場面などよりよりよほど印象的なのです。なにかにつけて何でもないような地味なロメールの映画の風景が思い出されるのは何故でしょう? 最近の映画の夜明けの場面ならもっとダイナミックな撮り方で、同じ夕暮れでも高く登った空からの俯瞰ショット、下に森が広がり遠くに暗い空が見えます。 そしてカメラはどんどんと動き続け下界に下って行きます。斜め上から舞い降りたカメラは二人の人物の周りを上から後ろから動き回って撮り続けるのです。 ところがロメールの映画ではそんな動きはありません。夜明けの風景はまるで人が見ている風景そのままでダイナミックでもなく息を飲むほど美しい画面でもないのです。それはほんとにとても地味な映像なのです。 映画を見ていてものすごく美しく撮られた風景は映画には良く登場します。特に最近CGを多用するようになってからは毒々しいまでに鮮やかで美しい風景というのが普通になってきました。ところがそれを見て美しいとは思ってもあまりその画面を思い出すことは無いのです。 同じような事は音楽の録音にも言えるのかもしれません。昔のモノラルで撮られたヴァイオリンの音のほうがキラキラしたデジタルの音よりもよほど聴きやすく感じるのも同じ理由なのかもしれません。架空のものが限りなく本物に近く再現されていけばいくほど逆に本物から 遠ざかって行く部分もまたあるのかもしれません。 と考えると人間の感覚というものにはまだまだ解明されていない要素がある気がするではありませんか。
by omoshiro-zukin
| 2017-04-07 20:48
| おもしろ映画
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