シューベルトのミサ曲を聞きに桜満開の上野の森へ。 |
桜の咲く季節というのはいつも底冷えのするような寒い日があったり、嵐のように風雨が吹き荒れたりと、あまり穏やかでない日が続くことが多いようで、今年もその例に漏れずせっかく桜が満開になったと思ったら天気が崩れ、ここ数日は風の強い肌寒い雨の日が続きました。そんな風雨をついて上野の東京文化会館まで出かけました。
上野の桜は開花が早かったようですでに盛りを過ぎているようですが沢山の人出でにぎわっています。
こんな機会でもなければ混雑した花見シーズンの上野に足を踏み入れることはないのですが、初めてこの季節に来てみると人の多さには驚きます。人込みを避けて早めに会場に入るとぐっと人が少なくほっとします。
なんといってもこの劇場のロビー(ホワイエ)は広々としていて最近の劇場では望むべきもないゆったりとした空間を持っているからです。(どうして新しい劇場のホワイエはどれも揃ってあんなに狭いのでしょうか?)
まるでこの季節に合わせたかのようなサーモンピンクの廊下や階段はチャーミングですし壁の飾りや星空のような照明など、どこを眺めても細部まで手抜きが無くデザインされているのは今では珍しいことになりました。ここに来る度になぜかほっとするのにはそんな理由があるからかもしれません。
ミサ曲は僕にとってわりと馴染深い音楽です。というのは今の僕からからは想像できないと言われそうですが、中学生のころまでは毎週教会に通っていたからです。その頃は復活祭やクリスマスなどのおおきな行事の時にはラテン語で歌ミサというのが行われていました。
最近になってクラシック音楽を聴くようになってからその歌がグレゴリオ聖歌だというのがわかり驚きました。なんとつい何十年前まではカトリックの教会ではバッハよりさらに前の時代の音楽を普通に歌っていたのです。
今でもその旋律は口をついて出てくるほど親しんだものなので、それがそんなに古い時代の音楽だと解った時にはそんな古い音楽だったのかと不思議な気がしたものです。そんな事もあるためか、バッハのミサ曲(なぜプロテスタントのバッハがカトリックの儀式であるミサの曲を作ったのか不思議です?)を初めカンプラ、フィックス、ペルゴラージ、などの古い宗教音楽には親しみを感じたのです。
なかでもクラシックを聴き始めた当初に教えてもらいすっかり気に入ったのがペルゴレージのスターバト・マーテルでした。この曲は聖母マリアを讃えるお祈りで、当時の作曲家からドボルザークや近代のプーランクまで沢山の人が作曲しています。同じ歌詞なのですが、作曲家によってまるで雰囲気が違うので別の歌のように聞こえます。
すっかりペルゴレージのこの曲にはまって様々な作曲家のスターバト・マーテルを集めたのですが、その中にシューベルトの作曲したものがありました。ものすごく期待して聞いて見たのですがどうも僕のイメージとは違っていたのでがっかりしました。ところが同じアルバムに入っていたミサ曲2番というのがとても良く、こちらの方がずっと気にいってそれいらいこのミサ曲2番は愛聴盤となったのです。ちなみにケーゲル指揮の演奏によるものです。
ミサ曲というのはある意味地味なので生演奏で聴く機会は少ないようです。僕が生で聴いたことがあるのはこれまたミサ曲の中でもとびきり好きなモーツアルトのミサ曲C-MALLです。この曲はオペラのラブソングのような美しいアリアや映画音楽のような覚えやすい旋律に溢れている聴きどころの沢山ある曲で、とてもミサ曲とは思えないほどの華やかさに溢れていて、ミサ曲という枠には収まりきれないのがいかにもモーツアルトです?
CDで随分と親しんでいた曲なのでいつか生を聞いて見たいものだと思っていたらありました。楽しみにして勇んで出かけたのですが、ホールの響きもあまり良くないせいか、勇んでいったわりにはなんだかあまり感動しなかったのを覚えています。
そして今回見つけたのが東京・春・音楽祭という一連の公演の中で行われるシューベルトのミサ曲第6番でした。この曲はアバド指揮、ウイーンフィルの演奏でCDを持っていますが、大編成の堂々たる演奏で同じアバド指揮でも僕の好きモーツアルト管弦楽団のペルゴレージの清楚な雰囲気とは随分と違います。
さて会場に座って見ると思ったより空いています。同じ音楽祭でも前週に行われたワーグナーは随分と人気があるので満員だったようですが、地味なミサ曲ではなかなか満員になるのは難しいのでしょう。
しかしこれはミサ曲という一見地味に思える曲とはうらはらに実に大がかりで迫力のある聴きごたえのある演奏会でした。
なんといっても圧倒されたのが100人近くの大合唱団の圧倒的な迫力でした。バレエの群舞もそうですが団体となると俄然力を発揮してくるのが日本の特徴で、一糸乱れぬ踊りや合唱は世界的にみても優れたレベルにあると感じられます。
今回の演奏会でもその特徴はぞんぶんに発揮され、東京オペラシンガーズとライプチヒ歌劇場総監督のウルフ・シルマーの指揮で見事に統率されたオーケストラとの掛け合いはそれは見事なもので、4人のソリストたちの影が薄く感じられたほどでした。
ひさしぶりに大迫力の演奏を堪能して外に出ると雨もやみ、暮れていく空と桜とぼんぼりの灯りが交じり合って春に相応しい穏やかな光景が広がっていました。大迫力の合唱の残響がいまだ夕闇の中にぼーっと響いているような気がしました。
と良い音楽を聴いて感激するとお腹も空きます。せっかく東京に出てきたからには締めはシェイク・シャックのバーガーです。相変わらずここのハンバーガーはお気に入りです。ちなみにチーズのかかったフレンチフライとレモネードとアイステイーのハーフ アンド ハーフとの相性も抜群です。結局食い気が何よりも優先してしまうようです。
ちなみにお昼は六本木にあるランチのコスパが高いお気に入りの中華料理店御膳房が新たに銀座に出した担々麺の専門店で久しぶりの担々麺、こちらもなかなかの味でした。