セルフポートレイトの面白さ。ヴィジェ・ルブランからスマホの自撮りアプリまで。 |
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2017年 04月 21日
これほどセルフポートレートが世の中に氾濫するようになったのはほんとうについ最近のことのような気がします。
気が付いたら世界がセルフポートレートであふれていた・・・という感じです。 これはもちろんスマホが登場したからなのですが、これほど世の中にセルフポートレートがあふれるなどという事態はこれまでの人類の歴史のなかでも極めて珍しい出来事と言えるでしょう。
スマホには自分を撮るためのモードがついているのはあたりまえで、一眼レフカメラにさえ自撮り機能が装備されるばかりか、自撮り棒などというものも珍しい物ではなくなりました。もはや写真の一番の対象物は自分かも知れないと言う時代になっているのです。 かつて写真の存在しない時代には肖像画というのは貴族やお金持ちのためのものでした。それは権力の象徴でもあったのです。 王様や貴族たちは自分の存在を誇示したり後世に残したりするために専属の画家を雇いその姿を写し取らせました。 画家たちがその作品の中に自らの姿を紛れ込ましたりしていたのがセルフポートレートの始まりのようですが、自画像というのが描かれるようになったのはルネッサンスの時代からだそうです。それまではキリスト教がそれを束縛していたからです。 写真のない時代に自分の姿を自分で写し取ることが出来たのは画家だけの特権だったのです。 写真が一般的になってからもセルポートレートは自己を表現する手段として最近までは芸術の世界の中だけに留まっていました。それは権力の誇示から自己を表現する手段になったという違いはあっても、いまだ一部の人の特別なものだったのです。 それを大きく崩したのがスマホの普及による自撮りの流行です。いままで芸術とされていたものが一気に奔流のように人々にいきわたったのです。それは自分を自分以外のものとして表現できるもっとも手っ取り早い手段と言えるでしょう。 いままで芸術家が一生懸命やろうとしていた事と一般人の境界線はもはや崩れてしまったのかもしれません。どんなものでも気軽にアートと呼んでしまう現代の風潮もそんなことと関係があるのかもしれません。 僕がセルフポートレートに興味を持ったのはそう古い事ではありません。森村泰昌がレオナルドダヴィンチの肖像に扮した自画像を見たのがそもそもの始まりかもしれません。それはダビンチの自画像のようでありながら森村さんの自画像でもあるというとても不思議なしろものでした。芸術がこんなに自由で軽やかなものだと知って嬉しくなったのでした。 その後たまたまシカゴ美術館でシンデイ・シャーマンの展覧会を見る機会があり、さまざまな死体に扮したシンデイの写真を見てセルフポートレートというものが一つの枠で括ることの出来ないとても自由な表現手段だという事がわかったのです。 もう一つ興味を弾いたのがマリーアントワネットのお抱え絵師として知られるヴィジェ・ルブランの麦わら帽子をかぶった自画像です。 ここに書かれている女性は自画像というにはあまりにも美しく溌剌としていて、まるでジブリ映画の主人公の少女のように見えます。 この絵が描かれたのは1783年なので彼女が28歳の時です。その7年後に書かれた自画像もこれまた少女のようにあどけなく美しいのです。 こんなに自分を可愛く描けるなんて!スマホのアプリを駆使して自分の写真を美しく加工する現代の少女たちの原点はすでにここにあったのかも知れません。 彼女はまだ女性が芸術家として認められる以前の時代に大活躍したのですが、それは芸術家としてよりも職人としての腕のためのようです。 だれを描いてもこれだけアニメの登場人物のように可愛らしく描くことの出来る画家はそうはいません。 なかでも自画像が一番美しい?というのもすごいことです! 最近読んだとても面白い本があります。それは古今東西の画家のセルフポートレート(自画像)がいかに作為的に書かれているか、いや自画像だからこそ演出や偽装が入る余地が大きいのだという事を例をあげて実証して見せる【偽装された自画像】という本です。 書いたのは富田章という方で東京ステーション・ギャラリーの館長をなさっている方です。 美術関係の本はひたすら固いだけで読みにくい本が多いのですが、これは豊富な知識を背景にしながらも、実にわかり易く面白く書かれています。 現代でこそ自画像が本人そのものではないということを前面に出した森村やシンデイ・シャーマンの作品が当たり前のように存在しますが実は遥か昔からセルポートレートは様々な形で絵の中に偽装されていたことがわかります。 自分を皮だけにしてしまったミケランジェロ、切られた首になったカラバッジョ、放蕩息子に扮したレンブラント、若い愛人を窓から覗いているスーラ、まるで埴輪のように素朴な晩年のピカソの自画像、ひび割れた背骨の痛々しくも雄々しいフリーダカーロ、などなど実にさまざまな形で画家たちは偽装した自分の姿を作品に残しているのがわかりとても面白い本でした。 これを見るとセルフポートレート=自画像と簡単にはかたずけられない事がわかります。 現代の少女たちがスマホのアプリを駆使して本人とは思えないセルフポートレートを作る作業と、それはどこか重なっている部分があるのかもしれません。 これからセルフポートレートがどのような形で変容していくのが実に興味深いものがあります。 【昔はセルフポートレートって本人に似てたのに今ではまるで違う人みたいなのが当たり前!】と言われるような時代がすぐ来るような気もします?。 これではまるで一億総森村化現象ではないですか! これって芸術が広まったことになるのか、それともバーチャルだった芸術と呼ばれる世界が現実の世界にするっと入り込んできたのか、それは実に微妙なところではあります。
by omoshiro-zukin
| 2017-04-21 19:42
| おもしろ美術
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