ボサノバの詩についてふたたび書いてみました。トム・ジョビンが英語で歌うわけ? |
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2017年 04月 27日
僕がここで改めて言うまでもなくトム・ジョビンは今世紀最大の作曲家のひとりであることは間違いないでしょう。 何といってもボサノバという今まで存在していなかった新しい音楽のジャンルを作って世界中に広めた人なのです。 新しい音楽のジャンルをたった数人の人たちが集まって作り出し、それが世界に広まったというのはすごいことです。 そのボサノバという音楽でその【詩】が優れていることは、そもそもボサノバというジャンルを作った張本人にヴィニシウス・ヂ・モライスという詩人がいたからにほかなりません。そしてその素敵な詩にすばらしいメロデイをつけたのがトム・ジョビンなのです。 僕の好きな曲の一つに【バラに降る雨】という曲があります。・・・ほら見てごらん、バラの木に雨が降っているよ。 なんて気持ちの良い雨なんだろう、川を満たし、そして春を運んでくる。ああ、でもあなたは誰のものでもない・・というような内容の素敵な曲です。 この曲を聞いていていつも思い出すのがリヒャルト・シュトラウス作曲、ヘルマン・ヘッセの詩による【4つの最後の歌】の中の【9月】という曲です。こんな詩です。 庭は喪にふし 雨が花々に冷たく染み込む 夏は震える 静かにその終わりを待ちながら 金色の葉が 次々と高いアカシアの木から落ちる 夏は慌てて 物憂げに微笑む 絶えてゆく夏の夢に この中に出てくるアカシアの葉に水玉が光る光景がどこかバラに降り注ぐ雨の風景と重なるのです。 かたや春、かたや秋と季節が異なるとはいえ降りしきる驟雨の中にひっそりとたたずむ花や木々の息遣いが同じように浮かんでくるのです。 もう一つ好きな曲に【3月の雨】があります。まるで草野心平を思わせるようなリズミカルな言葉がどんどんと並んでいます。 この曲の演奏で好きなのはトムとエリス・レジーナのデユエットです。朴訥としてそれほど歌の上手くないトムとうますぎるくらい上手いエリス・レジーナとのコンビが実に楽しそうに歌っています。この曲のポイントはポルトガル語で書かれたモライスの詩の良さであることは言うまでもありません。 同じ単語を英語や日本語に直してしまうと、そこからは詩の女神みたいなものがするっと抜け出してしまうのです。 ところがトム・ジョビンは平気でこの歌を英語で録音しているのです。(このアルバムでも最初はポルトガル語、最後は英語でうたっています)そればかりかA Certain Mr.Jobinという67年のアルバムなどはほとんど英語で歌っているではないですか!80年発売のテラ ブラジリスというアルバムの歌もほとんどが英語です。 これらの英語で歌われたアルバムを聞いているとなんだかとても居心地の悪さを感じて自然とあまり聞かなくなってしまいます。 何と言ってもボサノバの特徴である詩の心地良さが無くなってしまうのですから。 しかし彼はそれをわかっていながら敢えて英語で歌っているという確信犯なのです。 なぜなら音楽マーケットにおいて一番大きいのが英語圏だということを知っていたからです。 ジョビンがジョアン・ジルベルトに内緒で(ジョアンは英語で歌うことに絶対に反対したからです)スタジオに遊びに来たジョアンの恋人が英語で歌うイパネマの娘を録音しました。ポルトガル語の歌詞だけではアメリカでヒットしないと考えたからです。そしてその英語バーションはジョビンの目論見通りにアメリカで大ヒットして世界中にボサノバを広めるきっかけとなったのです。 ポルトガル語の詩の素晴らしさをわかっていながら敢えて無視したというのは、彼が音楽の才能にたけていただけでなく商才にもすぐれていたという証拠です。 ジョビンと一緒にボサノバを作った天才演奏家ジョアン・ジルベルトはあくまでポルトガル語で歌うことにこだわります。彼が英語の歌詞で歌ったことはいままで一度もありません。 もちろん僕もその意見に賛成です。その理由は同じ歌を二つの言葉で聞いて見ればわかると思います。やっぱりポルトガル語じゃなくてはね・・と思ってしまいます。 日本語の俳句を英語に直すようなものです。そのあたりがジョアンとトムが後に仲たがいした理由の一つだと想像しています。 とはいえボサノバがアメリカで流行しなければ今回手にいれたこの素晴らしいアルバムを僕が聴くチャンスなど巡ってこなかった事でしょう。 世の中はまったく様々な要素で成り立っているものです。天才的な芸術家の存在だけでは世の中は動きません。そこに働くさまざまな別の力がそれを世に広めていくのです。
by omoshiro-zukin
| 2017-04-27 19:16
| おもしろ音楽
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