まずはkさんが最近凝っているという、レコードからDSD録音したアートブレーキの【危険な関係】から聞いて見ます。
馴染のメロデイが流れてきます。実に聞きやすい音です。CDのようなヌメヌメしたデジタルサウンドとは明らかに別物です。
レコードかけてます、と言われたら、「はい、そうですか」といってしまいそうです。
これがデジタルサウンドなら、これで十分ではないか!と想いながらも、同じテーマをラテン風?に演奏した2曲目の派手なドラムソロまで聞いて、こんどはレコードにかえて見ます。
ところが同じ二曲目のドラムの音が随分と違って聞こえるのです。
間違いなくレコードのほうがずっとエネルギー感があり音が飛んできます。
おやおや、これは相当違うではないか!と思って、もう一度同じ曲をDSDで録音したほうで聞いて見ると、こちらのほうは元気がなく爽快感も失われるのです。
この差は思ったより大きいものでした。
こうやって比べてしまうとレコードのほうが間違いなく気持ちが良いことは間違いありません。
確かにDSDに落としたものは、とげとげしさもなく聞きやすいのですが、Kさんの装置構成でジャズを聴く限りでは、やはりLPに軍配は上がったのでした。
それからはkさんお勧めの古いジャズをレコードで聴き続けたのですが、その気持ちの良い事!
最初に聞いたオーデイオショーで慣らすような透明感ばっちりのソースとは違って、古いレコードはもっと実態感のある音色で迫ってきます。
古い録音ですが、それが実に生なましくて新鮮に聞こえるのです。
ほとんどがモノラル録音なのですが、聞いているとそれがモノラルなのかステレオなのかなんて言うことがどうでも良くなってきます。
【いいね、いいね!】などと言いながらも、どんどんとレコードを聞いていきます。この頃になるともっぱらレコードばかりでもはや当初のdsdとの比較など
とうの昔に忘れ去られています。
今回聞かせていただいた中で気に入ったのが、英国のテナーサックスのデイック・モリシーの【Have you Heard?】とか、Bob Hardwayの「ルーズ・ブルー』というアルバムですが、共に初めて聞くようなプレヤーのレコードです。
それにしてもこんなマイナーな(たぶん)レコードをどうやって見つけるのかと思ったら、kさんは某中古レコードのjazzレコードセールの常連で、いつも開店の何時間も前から並ぶのですが、その時並ぶ連中というのがだいたい常連で、そのうち顔見知りになるそうです。
そして何度も会っているうちにお互いの好みなどもわかって来て、「こんなのもいいよ!」などと情報交換するそうです。
なんというdeepな世界!でしょう。日曜日の早朝、どこかの街角でこのような深い会話が飛びかっているのです!
そういえば今回聞かせてもらった新しいレコード!澤野工房が再販したMichael Naure Quintetの「ヨーロピアン・ジャズサウンズ」のレコードもなかなか良い演奏で音も良かったです。
現代でもこんな音の良いレコードが発売されているとは、さすがマニア向けのレーベル澤野工房、奥が深い。
チャンスがあれば手に入れてみたいと思ったレコードでした。
なんせ昔のオリジナル盤のレコードは少なくともん万円もするので、新品でも4000円しないのはレコードとしてはリーズナブルなのです。
(普段1000円以内の中古CDばかり買っている、僕にしてはずいぶんと強気な発言です!)
そこで鳴っている音楽は確かに50年代、60年代の音色そのものです。
いくらソースがレコードとはいえ、目をつぶって聞けばそれがデジタルアンプと現代スピーカーから鳴っているとは想像できないのですからたいしたものです。
とはいえその音色つくりにはマークレビンソンのプリも相当貢献しているはずとはKさんの弁です。プリはかなりの部分音に作用しますから、なるほどそうかもしれません。
深い低音まで再生するウィルソンオーデイオのスピーカーは、古いレコードでもその真価を発揮するようで、十分すぎるほどの低音に支えられてハードバップがとても気持ちよく鳴るのです。しかもその鳴り方がハードバップにいかにも似合っているのが不思議です。
目隠しされてこの部屋に入ってきて、これが真空管アンプとJBLのスピーカーで鳴っていると言われたら、「はい、そうですか!さすがですね」などと言ってしまいそうな古風な音なのです。さすがハードバップ一辺倒のkさんならではの音作りと言えます。
マークレビンソンのプリも効いているでしょうが、この音を支配しているのはやはりオリジナルのレコードなのでしょう。
どんな豪華な装置よりも、音源がなにより重要な役割を持っていることが良くわかる体験でした。
何と言っても一番大事なのはソースなんですね!
こうやってKさんのところでハードバップの洪水に出会うと、もともと嫌いではない僕のこと、すっかりその気になって気に入ったハードバップのCDなど手に入れて、勇んで聞いて見るのですが、我が家でならすと、なんだか気の抜けたサイダーのように味気なくてがっかりするのですから、困ったものです。