ジャコメッテイ展は実に見応えのあるものでした。ジャコメッテイとエメ・マーグ |
ジャコメッテイといえばそれほど美術に詳しくない人でも、あの胴体の異様に細い人物の立っている像が頭に浮かぶと思います。
実は僕もその程度の認識しか無かったのですが、僕の場合はジャコメッテイと聞くとまず頭に浮かぶのがアンリ・カルテイエ・ブレッソンの撮ったジャコメッテイの写真でした。
あらためてこの写真を見ると実際のジャコメッテイは彼の彫像のように細くはなく、むしろずんぐりしているのですが、どこかでこの写真と彼の彫刻が混じり合っていてそんな錯覚をしていたのです。
僕を含めてごく一般的な人々は彫刻で知っている芸術家といえばロダンとヘンリームーア―とこのジャコメッテイくらいなのではないでしょうか?
それほど有名な彫刻家なのですが、彫刻家を目指す人にとって、ジャコメッテイはもっと圧倒的な信望があるらしく、美大の学生で彫刻を目指したいと思った人の半分以上が、ジャコメッテイの作品を見たことがそのきっかけだと言うのです?。
そう聞いて【そんなすごい人だったの!】と改めておどろきました。
その理由が今回の展覧会を見てしろーとの僕にも少しは解ったような気がしたのです?そこはジャコメッテイだけが作り出すことのできた唯一無二の世界だったのです。
現代美術の流れの中でも彼はどこにも属さず、他のどの作家も彼の作品に似てはいません(多分?)。彼独自のオリジナリテイに溢れた世界を作り出したということが、このように沢山の作品を集めた展覧会を見るとよーくわかります。
世の中には様々な展覧会がありますが、このように1人の作家だけの作品を沢山あつめて一度に見ることが出来ると、その作家のエネルギーがどーんと伝わってくるのですからたまりません。その面白さはたとえようもないほどです。
話はすこしずれますが、この展覧会を見ていて面白いものに出会いました。とはいえ知っている人には今更どうして?というような事でしょうが、つい最近それを知った僕は、どうして物事がこういう風に繋がっていくのだろうと不思議に感じたのです。
つい数週間前のことです。たまたまオークションで美術品を検索していたら興味深い物を見つけたのです。
それは荒川修作の作品を集めたカタログのような本だったのですが、その中には額に収めたらちょうど良いような大きさの作品も折りたたんで入っています。(下の写真がその雑誌のために荒川修作が製作した版画で、その雑誌に挟み込まれていました。好きな感じです!)
その作品が気に入ったので入札してみると、信じられないような格安の値段でその本を手にいれることが出来たのです。
実物は思ったよりも素晴らしく、横長の版画作品はもとより表紙と裏表紙を切り取り額に入れて飾ってみると、それはまるで印刷物とは思えないほどの存在感を見せてくれます。それを額に入れて壁にかけて、最近は毎日それを眺めては一人悦に入っていました。(下の写真はその表紙)
クラシックの先生で画廊のオーナーでもあるIさんにその本のことを聞いて見ると、それは1947年〜1982年の37年間という長い期間に渡ってギャラリー・マーグという画廊が発行していた有名な美術誌の名前だということがわかりました。
【たいしたもんですよね。一画廊が有名な画家たちにその本のためだけのオリジナルの版画作品を作成してもらい、その美術誌を作っていたなんて!】というほど有名なものだったのです。
(下の写真はその裏表紙)
その本のためにオリジナルの版画を製作したアーテイストはミロ、シャガール、ブラック、カンデインスキー、などなど知った名前がたくさんいます。もちろんジャコメッテイもそうなのですが、今回僕が手に入れた荒川修作もその中の一人だったのです。
そしてジャコメッテイ展を見ていたらコーナーに大きく出ていたのがこのデリエール・ル・ミロワールの名前だったのです。そこにはその本を発行していたギャラリー・マグとジャコメッテイとの関係が詳しく書かれていました。
まさか先日購入したこの雑誌と、ジャコメッテイが深くつながっていたとは知るはずもない僕はすっかり驚いたのでした。
(長くなったので続きます)