約1週間の時を経て、トーレンス124がオーバーホールを終えて戻ってきました。
この期間は1週間ですが、実際は不具合(雑音)が出始めてから一月以上もそのまま置いてあったので、ずいぶん長くレコードを聞いていません。
どうしてそんなにながいこと放置してあったかと言えば、圧倒的にCDを聞くことのほうが多いからです。
正直に言うならレコードが無くてもCDだけでも生きていけるかも知れない(少しさびしいけど・・)というぐらい僕はCD派なのです。
もっと正直に言うと無精者なのです。というのも最近はひまがあれば筋トレとかストレッチとかやりながら聞いていることが多いので
レコードだと盤を裏返したり、ほこりを取ったりと何かと忙しいのに比べて、CDだと長時間ほうったままで聞くことが出来るからです。
(下は戻ってきてやっとセッテングが終わった124です)
そんな僕がなぜ名器の誉れ高い高級なトーレンス124など持っているかと不審に思う方もいるかと思いますが、なによりもいまだに戸惑っているのが僕自身なのです。はっきりいってなりゆきで手に入れることになってしまったと言うのが本当のところです。
だいたいにして僕のオーデイオはすべて人様の意見を尊重してその意見と懐具合によって右にいったり左にいったりする【なりゆきオーデイオ】なのです。
そんな僕を天が放って置くはずがありません!
案の上トーレンス124は持ち主に愛想をつかしブツブツと雑音で文句を言いだしたのです。
そこで先般このプレヤーを推奨して譲ってくれた親元に参上したのですが、一目見るなりその汚さにに顔をしかめられたのでした。
その結果、今回の雑音の原因であるアームのどこかの接触不良だけでなく、すべてをオーバーホールしなくては駄目と言われたのです。
(下はオーバーホール相成った124の姿、横に置いてあるベルトは伸びてしまったものです)
オーバーホールが終わったとの連絡を受け判明したのは、トーレンス124は放って置かれた腹いせに予想以上の出費という形で立派に僕にその代償を払わせたな!ということでした。
なるほど仕方がありません。こんな名器を放って置いた僕が悪かったのです。
とはいえその代償は他の専門店と比較すると半額以下でした。
今回はプレヤー本体だけでなくアーム(SME1009)もオーバーホールして貰ったのですが、その両方の金額を合わせても知人が専門店でプレヤー本体をオーバーホールしてもらった金額の半分に過ぎないのです。しかもここには部品は豊富にあるし、経験も腕も確かです。
世の中そう悪い物ではありません。124だって分別をわきまえていると言えるでしょう。
さて今回のオーバーホールの内容はおおざっぱに言うと以下のようなものだそうです。
まず全体が非常に汚れていたので、まずこれを掃除するのが大変だったそうで、普段から良く手入れをしていればもっと安く済んだのにと言われました。むき出しのまま部屋に置いてあったのが悪かったのでしょう。これからは上に布をかけておくようにアドバイスを受けました。
駆動部ではモーターを分解して掃除したほか、ベルトが伸びていたので交換(新しいものと使っていたベルトを比較してみると二回りくらい大きくなっていました)アイドラーも削って真円を出してあるそうです。
なんせこのマスターはこのアイドラーの真円を出すたの装置を自分で作ってしまうばかりか。車のオイルレベルゲージのようなオイルの量を図る専用器具まで作っているのです。ほかにも軸受部分のふたを砲金で作ったり、スピンドルの摩擦部にルビーをはめ込んだりと思いつくことは何でもやっています。
もちろん最新の注意を払って注射器のような細い針での注油など、細かく手が入っています。
酷かったのがアームだそうで、内部がサビていたそうです。(アームがさびるなんて初めて知りました)内部もすべて綺麗にしてくれました。もちろん外側も新品と見違えるほどピカピカになりました。他に古かったコード接続部分を綺麗にして、複雑だったアース線も取りまとめてくれました。
その後改めてSMEのアームの調整の方法など教えてもらい、これで完璧と思い、自宅に戻ってセッテイングすると、やっぱりスムーズに行くわけがない!冷や汗タラタラで、ここに書けないような様々な紆余屈折の末、1時間以上もかかってやっとセッテイングが終わったのでした。
改めてレコードに針を落とすと、それは僕にもわかるほどの激変ぶりでした。
まず静かです。(おやっ!これってCD?)と思うくらい静寂の中から音が立ち上がってくるのです。
多少のゴロ音はしょうがないと思っていたのが大きな間違いだったことがわかりました。
音色も軽やでクリアーです。もさっとした部分がすっかり取れて、すっかりと晴れ渡った秋の青空のような爽やかさです。
音色は上品という言葉がぴったりです?カートリッジの特徴がよく出るのでしょうが、図太いというより繊細な音です。
おもわず色々聞いてしまいましたが、クリップス指揮、アムステルダムコンチェルトヘボウのモーツアルトの交響曲全集を聞いた時には思わず音の滑らかさにのけぞりました。
ヤノビッツの歌うシューベルトの歌曲では声の伸びやかさにうっとりとしたのでした。
こうやってきちんと手入れされたトーレンス124を聞いてみると、こんな無精者の僕にでもさえ、それが名器だと言われる理由がよくわったのでした。
そうなるとやっぱり手放すのが惜しくなります。言われた通り古い絹の布を探してしっかりカバーしたのでした。
それにしてもこの状態をいつまで保てるか不安でもあります。
やっぱり古い機械にはそれなりの手入れが必要だということがよーく解った今回のオーバーホールでした。