GOOD BYE 愛しのSAAB(サーブ)! |
それは突然のことだった、それまで快調に、いやあまりに快調すぎるなとちょっと疑ってはいたのですが、ビュンビュンと走っていた2001年型、走行距離が12万キロに達しようとしている僕のサーブ9-3のエンジンが信号待ちをしていると突然プスプスとが止まってしまったのでした。
先週の日曜日の夜11頃、某忘年会の帰り路、寒い夜のことでした。何回かセルを回してもかからない、そのまま惰性で路肩に寄せて、もう一度、やはり駄目です。しっかしバッテリーはこの夏に上がってしまって交換したばかりなのにな、と焦りながらもふと気が付くと、その場所は何と工賃が高いので最近はご無沙汰していますが、ここ10年以上通ったYANASEのほとんど敷地内だったのです。
自分の掛かりつけの病院の前で倒れる人がこの世に何人いるのでしょう、まことに天文学的な確率と言えましょう。
そのまま動かない車を置いて北風の中を、修理工場の前でとまるなんて、なんて律儀なやつ、もっと遠いところや交通量の多い場所などで止まっていたら大変だった、運搬費用もかかるし、なんて愛いやつ、などと考えながら歩いて自宅まで帰ったのです。
その時はこれが今生の別れになるとは、そこまで深刻には考えていませんでした。別れはこの世に普遍的にあまねく存在しているという事は頭ではわかっているのですが、それはいつもあまりにも突然やってくるので気が付いた時には、もう別れた後だったりするのです。まったく困ったものです。
SAABはちょっと変った車です。なので乗っている人もたぶん少し変っているはずです。例えばサリンジャーの小説の主人公もサーブに乗っていました。
村上春樹もエッセイの中でヨーロッパで乗ったサーブの事をずいぶん褒めています。(主にマニュアルシフトの事ですけど!)彼がたとえエッセイの中でも車を褒めることなどめったにない事です。それくらいサーブは変った車なのです。あんまり説明になっていませんけど。
英国国営放送BBCの番組にTOP GEARという車の番組があります。日本の車番組と違い、試乗ではこれでもかと言うくらいドリフトさせるは、タイヤからは白煙あがりまくり、放送禁止用語がぽんぽん飛び出すというチョー過激な番組です。
日本のNHKでこんな番組を作ったら100万通は無駄使いするなという投書がきて、受信料不払い運動が広がるのは間違いありません。受信料の支払いが義務付けられている英国ならではの番組と言えましょう。
いかにも英国らしいブラックでおげれつな番組なので車好きと英国風ユーモアが好きな人は必ず見るように。
そのトップギアでSAAB特集がありました。サーブが倒産して無くなるのでその追悼でした。
めったに褒めることのない辛口のその番組でもSAABは良い車だったと褒められていました。やはり変った車なのですね。
GMの配下になってからも,GMの言う事をまったく聞かず独自の車作りを進めていたそうです。(そんな事してるから潰れるんですけどね!)
番組ではBMWの3シリーズの頭の上からクレーンで錘を落すと完全に屋根が潰れてしまうが、SAABだと居住空間が残るというとんでもないテストまで見せてくれました。それだけ頑丈に出来ているというのが一目でわかるテストですが、過激ですね。SAABオーナーとしては実に心温まる、そして誇らしげな時間でした。
僕はこの9-3の前に900というモデルにも乗っていました。こちらも10万キロオーバーまで乗りました。
外見はほとんど変っていないので普通の人が見たら同じモデルに見えるはずです。ところが900から9-3になった時変ったのは名前だけでなく、実は1,000個所以上も改良したというのです。そんなに改良するとこがあったのかよ!それじゃ改良前は欠陥車じゃないか!という突っ込みはとりあえず置いて、確かに乗ってみても印象はかなり変りずっと高級感のあるものになっていました。
しかし外見は見てもわかないほど変えずに見えないところを1,000か所以上変えるなんて、やっぱり変った会社です。
サーブは昔馬力をアップするためだけに使われていたターボを、低速から効果がありもっと燃費も良くなるように使った最初の会社です。
今頃になってVWなどが燃費改善のためにターボを使っていますが、その10年以上前に同じ思想を持っていたというのは実に先進的ですが、その分経営は下手なんですね。このターボエンジン回すとものすごくパワーが湧いてきます。大人しい外観と足まわりには似合わないほど激しく盛り上がるのです。
とはいえ最近の僕はスピードが出せなくなってきて、昔死ぬほど嫌っていた、のろのろ走る老人個人タクシーのような走り方になっているのでターボはその存在を隠して大人しくしていましたけど。
SAABの特徴は良い物を持っているという上質感にあるのだと思われます。例えば上質なカシミアのコートのような感じでしょうか、一見すると普通のウールのコートのような地味なコートですが、着用してみるとそれを着ている人だけにわかる満足感があるのです。
オーナーだけが実感できる地味だが上品な作りの良さ、そんな前時代的な感覚を残している車が現代に生き残るのはやはり難しいことなのでしょう。
翌日YANASEから電話で修理の見積もりの報告がきました。燃料ポンプが駄目になっているのが今回の原因でした、しかしそれだけではありません。ラジエターも漏れているとのこと、この二つを交換する必要がありそう、しかも前輪ブレーキローターとパッドも交換時期にきている、これを全部直すと最近値下がりが著しいアルファの中古が買えそうなほど(すごい古いアルファですけど・・・それにしても最近の中古外車の値下がりはすごいです)。
ほんとうは修理して乗り続けたいのはやまやまですが、ほかにもそろそろミッションも、エグゾースト系は?タイミングベルトは?などと課題は山積みです。
日本は古い外車には辛い国です。修理するより買ったほうが安い(中古ですけど)とはまるで家電製品の世界と同じ。ともかく部品と修理代が高い、これがキューバとかだと安い料金で何とか修理しながら乗り続けることが出来そうです。とはいえいまさら車を持参してキューバに移住できるわけもありません。
そんな訳で突然別れがやってきたということになりました。ふがいないオーナで心から申し訳なく思ってます。
今回の話の中で一番興味深いことは、不思議な偶然で行きつけの修理工場の前で止まってしまったという事です。
最後まで真面目で忠義心を持っているようなこの出来ごとがSAABという車を良くあらわしているようでとても面白いのです。
THANK YOU SAAB!
SAAB、私も13年ほど乗っておりました。9-3と9-5です。
やはり故障と燃費の悪さには、ほとほと手を焼きましたが。
それでもあの、フォルムやフロントパネルは今でもいいなあと
思いますし、乗るのが楽しかったです。
先日知り合いの某外車ディーラーさんと話をしていて、維持費やリセールのことを窺ったばかりでしたので、面白さんの今回の話題はとてもタイムリーなお話でした。
スウェーデンと言えば、車ではないのですがエレクトロラックスの掃除機を10年ほど愛用しています。
先日あれこれ直してもらいましたが、部品代と修理代を合わせると立派な国産掃除機が買える値段でした。
でも、掃除と言う行為の楽しさを始めて教えてくれた製品なので、限界まで使っていこうと思います。
スウェーデン製品は、私と似てるんですよ。頑固で融通が利かないところが(笑)
それではドイツ車ですね。でも、omoshiro-zukinさんにドイツ車はあわないなあ〜。せめて、フランス車ぐらいにしてほしいなあ。
確かにプジョーのマニュアルミッションなど乗ってみたいところですが、堅実さと経済性を考えて輸入車となるとどうしてもドイツ車になってしまいます。ほんとはノーマルのスイフト1.2りッターマニュアルシフトを考えたのですけど、どうも今一歩踏みきれなくて・・・・形がね。
ネットで関連情報を探そうとしたところ、ここに辿り付けました。
そうですよね、外見は平凡ですが、乗りこなしているオーナーでないと分からない、あの何とも言えない気質と走りの手応え。
なんとか延命して、ガソリンが買えなくなるまで乗り続けたいと思います。
すごいですね。まだ乗り続けてらっしゃるんですね!羨ましい。僕は不器用でボンネットの中など全く触れません。昔の車に乗りたいのですけど無理ですね。最近は街中で9-3の姿を見ることがほとんどなくなってしまい、寂しい思いをしております。確かにあの車には独特の魅力がありますね。血が通っているというか、丁寧に作られていて、どこか職人気質のようなものが感じられるからかもしれません。またあの雰囲気を味わいたいものです。いつかのせてください!