もう一度行きたい場所、アフリカは遠いけどやっぱりすごい。(その3) |
日本からアフリカはやはり遠いです。
インド経由が2回、ヨーロッパ経由で行った事が一回ありますが、圧倒的に楽だったのはヨーロッパ経由です。
出来れば行きと帰りにヨーローッパで一泊づつ出来れば最高です。
このコースは機内から見える雪を抱いたヨーロッパアルプス、そして青い海を越えると出現する茶色い砂漠、など変化に富む地上の風景も特に綺麗です。
そして雪の降っているアムステルダムから、数時間で赤茶色の土に太陽の強烈な光が注ぐアフリカの大地に立っているのはなかなか素晴らしい経験です。
都会や動物保護区と保護区の間は結構な距離があります。
その間はひたすらマイクロバスに乗ってがたがた道をほこりを舞いあげながら走る長い時間です。
服も積んであるトランクもほこりだらけになり体も嫌と言うほど揺すられます。
途中いくつかの村を通過したりしますが、ほとんどはまわりに家ひとつ見えない草原の中の道がひたすら続きます。
それに町中まで動物がいた昔とは違い、こういう道にはたまにキリンがいたりしますが、ほとんど野生動物の姿も見かけません。一番多く見かけるのはマサイが飼っているヤギです。
移動の時間は結構ながいので「ケニアで一番多く見た動物は?」という質問に「やぎ」という答える人もいるそうです?
そんな360度地平線まで見える一本道を、大きな荷物を頭に乗せた女性がとことこと一人で歩いたり、槍をもったマサイがヤギの群れを引き連れていたりしますが、遥か見渡してもどこに目的地があるのかまったくわからないほど広い草原の中、いったいどこに行こうとしているのか皆目見当もつかないほどですが、彼らは僕らの知ることの出来ない、何か特別な確信を抱いているかのようにしっかりと歩いていきます。
たまにバス停があってそこに座りこんでバスを待っている人もいたりしますが、走っているバスを一度も見たことが無いので、いったいどのくらい待てばバスが来るのか心配になります。
ひたすら急いでいるのは観光客を乗せたマイクロバスだけで、その窓の外ではまったく違うゆっくりした時間が流れているようです。
ナイバシャ湖という場所のロッジに泊った時のことです。ここは意外と町の近くにある感じですが、湖にはカバもいますし、湖をクルーズすると驚くほどの数と種類の鳥に出会うことが出来ます。
一見湖の側の普通のリゾートホテル(箱根のような)のような雰囲気なのですが、動物の世界と人間の住む世界がきわめてあいまいなのです。
ホテルの芝生に覆われた中庭にはいくつかの日よけパラソルのあるテーブルがあるお洒落な雰囲気になっていて、ここでゆっくりとお茶を飲んだりハイテイのスコーンをつまんだりと優雅な時間を過ごすことが出来ます。(まるで軽井沢のお洒落なホテルみたいに!)
食堂で夕食を取って部屋に戻る途中外の廊下からなにげなくこの中庭を見ると無数の目が光っているではないですか、びっくりしましたが良く見ると暗闇の中でアウトバック(大型の鹿)の群れが黙々と草を食べているのです。昼はお洒落で優雅なカフェが夜は野生動物の食事場になっているのです。
やはりアフリカのホテルは驚きでいっぱいです。
食事といえば、意外と思われるかもしれませんがホテルの食事はどこもとても美味しいのです!
ほとんどがバッフェスタイルですが、荒野のど真ん中とは思えないほど豪華です。
特に野菜の味が力強くとてもおいしかったのが印象的です。
そしてどのホテルでもたいていある午後のハイテイなどゆったりと優雅な時間が過ごせるのも魅力です。
動物公園を訪ねるサファリの旅は実に見事にパッケージ化されて、さまざまなコースが設定されているのですが、面白いのは同じコースの参加者が一緒のテーブルで食事を取ることです。
これは昔の船旅の習慣をそのまま持ってきているのだと思われますが?
マサイマラではそれぞれ一人で参加している英国人の中年男性とおじーさん、イスラエルから来ているおばさん二人組と一緒でした。
この英国人のおじーさんが面白い人で動物を見ると必ずガイドにメスかオスか聞くのです。
それはどんな動物を見ても同じです。鳥でもカバでも。
観光用のマサイの村に行った時のこと、ここは入場料が必要なのでガイドがどうするか聞くのですが、イスラエルのおばさんたちは行きたいといいます。
しかしこのおじーさんはそんな余計なお金は使いたくない、わしは絶対行かんと頑張るのです。
結局このおじーさんだけバスに残ったのですが、その後バスを取り囲んだお土産売りたち一人一人に、僕はそんな余分なお金は持っていないと丁寧に説明していました。さすが英国人ですね?
イスラエルから来たいかにも人の良いおばさんたちからは先の戦争で自宅の側にミサイルが撃ち込まれた話を聞きました。
それぞれの参加者がそれぞれの世界に生きていて、それが遥か昔から続いている動物たちだけの静謐な世界を見て、一緒に嬉しがっているのもアフリカの旅ならではの魅力の一つでしょう。
ここでは人間、動物といった、おおざっぱな区別がなんら不自然に感じられないのです。
マサイマラの大草原の中にただ褐色の水たまりのように見える池があります。ここには沢山のカバが生息しています。
カバは一見大人しそうに見えますが、実は見かけとは違い意外にも凶暴なうえ結構早く走ります。
この池のほとりに立ってカバと一緒にカメラに収まろうとすると、こちらに向かってカバがすごい勢いで泳いできたりしてキモを冷やしたりもします。町中で記念写真を撮るのとはちょっと違うのです。
ここのそばでトイレ休憩がありました。とはいってもサバンナの真っただ中、トイレなどあるはずがありません。
サファリバスを降りて三々五々と散っていくのですが、ここでガイドが「この辺りはライオンがいるのであまり遠くに行かないように!」などと言うではないですか。
男性はともかく茂みに隠れて用をたす女性たちは大変です。結局皆近くの茂みに固まってそわそわと用を足した様子でしたが、これもアフリカならではの得難い経験となったことでしょう。
早朝と夕方のサファリに出かけて、どこまでも続く広い平原を快適な風に吹かれながら走っていると、他のどこの国にいっても感じることのできないゆったりした気持ちになります。
アフリカのサバンナには人間の遥か大昔の遺伝子に呼びかける特別な何かが存在しているのかもしれません。
アフリカのサバンナの動物たちや、大平原を吹き抜ける風を思い出していると、すぐにでも行きたくなってしまいますが、やっぱり随分遠いなと思ってしまうのです。