アナログは難しい。SMEアームの調整は上手く行くのか? |
アナログ(レコード)のほうが音が良いのか、CDのほうが音が良いのか、これは僕にとってはいまだに解らないテーマです。
ここ数年は明らかに「CDのほうが良い」のほうに目盛りが振れてきているのですが、たまにレコードを聴いてみるとこれがなんともなごむのです。やっぱりレコードも良いな!と思います。
空間の表現、それぞれの楽器の分離、音の広がり、低音の締まりはCDに分がるようですし、レコードからCDに変えた時の静寂感や透明感はそれが快感に感じるほど違いがあることも事実です。
総合的にはCDのほうが優れているのはたぶん間違いのないことでしょう?
もしアナログ(レコード)が優れている点があるとすれば、それは音色ではないかと思います。
ものすごーく不確かな表現ですけど、アナログで聞く楽器の音色のほうが生の演奏を聴いている時に近い感じがするのです。クラシック、それも特に弦楽器の音色がそう感じられます。
ただし同じクラシックでもオーケストラとなるとCDの方が圧倒的に生の演奏を聴いている雰囲気が出ます。
特に楽器の分離とかホールの空気感、広がりとか、低弦の鮮やかさとか、なんだかそういったもろもろのものがCDのほうがはっきりと聴こえるのです。
たまに思い出したようにレコードを聴くとその音の新鮮さについ続けて聞いてしまいますが、気がついて見ると結局最後はCDを聞いていることに気が付きます。
雑音がなく静寂感にまさるCDのほうが安心して聞くことができるのです。
それにちょこちょこ曲を変えることの多い僕にはなによりも面倒がありません!
こう書くと、それは「おまえのアナログの調整が悪いからだ!」、と言われそうですが、反論の余地なくまったくその通りなのですから困ります!
一般的にはアナログのほうがCDより音が良いと言われることが多いようです。
CDのほうがアナログより良いのは僕のアナログの調整が悪いからではないか?という疑問は僕にはつねに付きまとっているのです。
そこで先日雑誌ステレオの付録についていた瀬川冬樹さんによる「SMEトーンアームの徹底的研究」というのを見ながらやっと重い腰をあげてみました。
実は先日単三乾電池10本で動く大層SN比の高いクリアーな音を出すフォノイコに交換した時、カートリッジもSPUからインピーダンスの相性の良いシェルターに交換しました。しかしその際面倒だからとSMEのアームの調整はほとんどやっていなかったのです。
その理由は「SMEのアーム調整は難しすぎる!」のひとことにつきます。
数ページに渡る取り扱い説明書、インターネットに乗っている調整方法など色々見てはいるのですが、どれもそのほとんどが良く理解できないのです。
それは自分では教科書通りゴルフのスイングをやっているつもりでも、実際はまるでかけはなれたスイングをしているのに似ているかもしれません。
僕が機材にあまり触れない最大の理由は僕が無精者だからなのですが、もう一つ大きな理由があります。
それは小学校のころからずっと僕についてまわり、今ではそれは才能の一つになっているではと疑っているほどです。
それは「僕が触れるものは壊れる!」という実にやっかいな事実なのです。
思えば僕が自分の不器用さに気がついたのは模型の制作からでした。
当時まだプラモデルが一般化される前は模型というと木製でした。
飛行機などもおおまかに形が取ってある木片を、切り出しナイフで機体や翼の形に削り、サンドペーパーで滑らかに仕上げて塗装すると言う、今考えるととんでも無く面倒な作業が必要でした。
今でも覚えているのが永遠に完成しなかったゼロ戦です。胴体の部分はとてもうまく行ったのですが、翼で失敗しました。木材なので一度切ってしまうと復元は不可能です。
我ながら驚くほど胴体はうまく出来たので、その見事に美しく削られた胴体だけをいつもでも大事に持っていたことを覚えています。
もっと大変なのは模型飛行機です。キットに入っているのは、ただの木の棒の胴体、まっすぐな竹ひご、アルミの管(これで竹ひごを繋ぎます)、紙、動力のゴム、形があるのはプロペラだけです。
後は設計図に合わせて竹ひごを曲げて翼を作るのです。ろうそくの熱で曲げるのですが、近ずきすぎると焦げて折れてしまいます。なかなか設計図通りには曲がりません。
これが出来たとしても次にこの竹ヒゴで出来たフレームに紙を貼らなくてはなりません。
この紙は薄い和紙?なのですがこれを竹ひごで出来た翼に充て、竹ひごの部分を水でぬらしそれに沿って切り取って行くのです。
この二つの作業でいったい何度失敗したことでしょうか!
結局残念ながら僕の記憶の中には自分で完成させた模型飛行機の姿は残っていません。
そしてその不器用さを再び実感したのがオーデイオに関わり出してからです。
なれないハンダこてを持ったりすると悲惨な結果になるのはもちろんの事、アンプのふたを開けただけでも、反対に取り付けてしまったり、ネジが曲がってしまったりと、まともに元に戻すことさえできません。
調整個所の多いアナログはなおさらです。カートリッジの取り付けや調整だけでも少なくとも2個の貴重なカートリッジを駄目にしています。
なるべく機械には触らない方が良い、というのが長い経験から導いた結論です?
触らぬ神に祟りなし、というのは僕のためにあるような格言でしょう。
そして瀬川さんによる小冊子「SMEトーンアームの研究」はやっぱり僕を混乱に陥らせたのです。
まずオーバーハングの調整なのですが、「実際には計りにくい、そこでSMEでは後で説明するもう一枚の別な紙形に巧妙に正しい位置を求めるようにしている」とのことなのです。
幸い僕はこのもう一枚の紙らしきものを持っているではないですか。
しかし実際にこの紙を使っての調整はオーバーハングではなくトラッキングエラーの修正の項目になってしまうのですけど・・・?オーバーハングはどこに??
ともあれ124の真ん中のスピンドルにこの紙の穴を通しヘッドシェルルと並行になる位置に合わせればそれでOK、見本の写真もあります。
その写真ではアームが真横の位置になった場所で並行に調整しているように見えるのですが、それでは届きません。そこで針が届く場所に紙を置き、何とかカートリッジが並行になる場所までアーム取り付け位置をずらしてみました。これでOKのはずです。
その他も色々と調整したのですが長くなるのでそれは省くとして最後にレコードをかけて見ました。
どうも針の部分でジリジリと音がするのです。こんな擦れるような音は今までしていませんでした。
おかしいなと思いながら再び紙を入れて調整してみるとやはり並行になっています。
しかし何かがおかしいのです!
それから悪戦苦闘のすえ、もしかするとオーバーハングがおかしいのでは気が付きました。
あまりにもカートリッジがスピンドルより出すぎているのです。
そこでネットで探してオーバーハングの正式な値を見つけました。
計ってみると案の定オーバーハングがオーバーしていました。これでは変な擦れ音が出るはずです!
これを計りなおしてシェルの一番前についていたカートリッジの位置も調整し、正規のオーバーハングに直しました。
再びレコードをかけて見るとこんどはチリチリ音も出ずスムーズではないですか!
しかも例の紙でトランキングエラーを計ってみるときちんと並行になっているではありませんか!、
なんだか訳が解らない内に調整できたのです。これってどういう事なのでしょう。やっぱりSMEの調整は僕にはとても手にあまるようです。
ここで安心してはいけません。僕が何かに触ると何かが壊れるのです。
案の定ふと目をやるとインサイドフォースキャンセラーが下に落ちているではないですか。
見ると錘をつっている糸がぷっつりと切れています。
やっぱり触るんじゃ無かったと思ったのですが後の祭りです。
これを再び直すことを思い、その細かい作業を想像しただけでうんざりするのでした。
やっぱり僕にはアナログは複雑すぎるのかも知れません!
難しいのは、ラテラルバランスですね。その点、後発のシリーズ5は本当に細かい微調整まで追い込めます。高すぎますが・・・
オーバーハングはトラッキングエラーを最小にするためにアームごとに設計上設定された寸法です。
また、トラッキングエラーは演奏中刻々変化しますから、どのように変化させるかは設計者の判断(好み)で、トラッキングエラーを少なくするオーバーハングの絶対値は有りません。
プロトラクターに絶対服従する必要は無いのです。
アナログの方が音が良いという方は古いJazzやClassicを聞かれている方に多いように思います。
そもそも製作時に違うマスターテープで作られたレコードとCDの比較は無意味だと思っています。CDの方はどんなに早くても1982年以降に保存されたテープから作成されたものなのですから。
同じ録音でも、LPとCDはそもそも違うマスターテープでつくられているんですか、同じものから作っているのかと思っていました。なるほどリマスタリングしているのですからそうなんですね。となると古い録音のものはやはりレコードの方が音が良いんですね。
おほめいただいてありがとうございます。どちらというと写真の方が評判がよろしいみたいですが?(といっても褒めてくれたのは二人だけですけど、ちなみに文章褒めて頂いたのは初めてです!)
なるほどCDに仕立て上げる時に保存状態の良いテープが残っていればレコードより音が良いばあいもありえるのですね。いずれにしろ昔の録音をCDにするときには必ず誰か?がリマスタリングする時に音をいじっているはずなので、その人のセンスが問われることは確かでしょうね?
僕の知人でブルーノートのオリジナルに固執している人がいますが、彼に言わせると古いジャズをCDにする時に、クラシックよりもリマスタリングに気がつかわれていないので、酷い音のものが多いそうです。