アンプの聞き較べの話の続きですけど、村上春樹が音楽について書いたこの文章はすごかった! |
秋号の「考える人」という雑誌に、興味深い記事が出ているよと教えてもらいました。
村上春樹がJAZZピアニストの大西順子と指揮者の小澤征爾について書いた「厚木への長い道」という文章です。
音楽について書かれた文章でこれほど感動したことはないほどそれは素晴らしい内容だったのです!
それはさまざまな事情で今年の8月にやむなく?引退したジャズピアニストの大西順子を小澤征爾がすごい情熱でカムバックさせた奇跡的な演奏会の話です。
そこではサイトウキネンオーケストラとの共演でクラシックとJAZZという枠を超えた奇跡的な演奏が行われたそうで、そこには音楽への熱い情熱とはどういうものなのか、完璧な演奏というものがどうやって生まれるかが実に生き生きと見事に描かれているのです。
いつもどこかさめているような村上春樹ですが、今回のこの文章のなかには強い情熱のほとばしりのようなものが隠しきれずにちらちらと見え隠れするではありませんか。
小澤征爾の情熱に引き込まれたのかも知れませんがとても珍しいことです。
それにしても音楽というものにこれだけすさまじいエネルギーを持って向かい合っている人たちの話を読むと、聞きながらつい居眠りしてしまうような、ダレた聞き方をしている自分が恥ずかしくなります。
もしも音楽への情熱というものがどういうものか、そして「完璧な演奏」というのがどんなものなのかを知りたい方はこの記事をぜひ読んでみることをお勧しますが、そんな事に僕は興味ないという人でも音楽ファンなら読んで損はないと思います。それにしても本当にすごい文章でした!
こういう音楽についての素晴らしい文章を読んでしまうと、音楽にはとても強い力があり、それを求める強い情熱も存在していることが見えるように良くわかります。
それに比べ、オーデイオについてわけのわからない事をちまちま書くのが、「なんだかなー」見たいな、ぐったりした感じになってしまいます。
なんといっても音楽あってのオーデイオなのです、音楽の力の前にはオーデイオは負けるのは当然でしょう。(中には鳥の声とか小川のせせらぎとかばかり聞いている音マニアもいるでしょうけど!)
うたたねしながら音楽聞いているような凡人が世界の村上や小澤に較らべられるものでもないですし、なにより音楽について何か書くことはとても難しいことなので、そちらは素直にあきらめてオーデイオにについての役に立たない話を書くことにしましょう。
さて2代目の乾電池駆動デジタルアンプのクリアーな音にすっかり満足していた僕だったのですが、そのデジタルアンプの製作者でもあるCさんは「どうもこのスピーカーとこのアンプはうまく合っていないような気がします」と言うではないですか。
そして「昔作ったカーステレオ用と思しくフィリップスのアンプを使って作ったアンプがあるのですが、聞いてみますか?」と言ってそのアンプを持参してくれました。
後で聞いたことによると、デジタルアンプとタンノイがあまりに合わない音がしていたので、たまらずにもう少し普通の音がするこのアンプを持参してくれたそうです。
奥ゆかしいCさんなので口でともかく言うよりもと思ったのでしょう。
それにしてもCさんにはミスマッチに聞こえてしまうアンプの音を、僕は喜んで聞いていたのですからやっぱり僕はオーデイオマニア失格でしょう。
そしてこのフィリップスのアンプを聞いてみると、特にどこかが素晴らしい音という感じはありません。
しかし格別目立ったところも無い代わりに、確かにこちらの方が使っていたデジタルアンプより自然に近い音に感じられるのです。
音の良しあしが解らず、聞いているとすぐ機材のほうに飼いならされてしまい、「これで十分ではないか!」と思って満足してしまうという性格の良い僕なのですが?
さすがに目の前で(耳の前で?)直接比較するとその差が判ってしまうのが悔しいところです。
「知らなければ幸せだったのに!」というのは人生においては偉大な知恵の一つなのですが、オーデイオではなぜか次々と知ってしまうことになるのは、幸運なことのか不幸なのか難しいところです?
というわけで2台も続いたデジタルアンプはあっさりフィリップスのアンプ(これはデジタルではありません)に鞍替えとなりました。
フィリップスのアンプはデジタルでは無く電気を食うので、さすがに乾電池駆動だと無理があるようです。
そこで新たに立派な電源も作ってもらいました。アンプと電源が別べつの箱に入っているというのも、またマニアぽくて嬉しいところです。
ところが長続きしないのが僕のオーデイオです。(というより性格ですか?)
この直後にCさんが新しく作ったというミニワッター真空管アンプを貸してくれました。
わずか1ワット少々しか出力のないという低出力の見るからにかわいいアンプです。バイクで言ったら50ccの原付みたいなものです。
ところがこのアンプの音色にすっかり参ってしまったのです。
弦の音というのがCDの再生では一番違和感を感じるのですけど、このミニワッターだとそれがものすごく気持ちの良い音で鳴るのです。
もちろんわずか1ワットの出力ですからオーケストラの低弦の部分とかテインパニーの迫力とかは少々こぶりになってしまいますが、それを補って余りあるように感じられたのです。
こんな魅力的な音色は聞いたことが無いぞ、と移り気な僕は「これにします! これ作ってください!」と申し出たのですけど、Cさんはあまり良い顔をしないのです。
その理由は、あくまで僕の推測ですが、「これは言わば遊びのアンプです。最終的にこれで満足できるとは思えないし、タンノイとベストマッチとは思えません」ということにありそうです。
寡黙なCさんはあまりそのような断定的な発言はしないのですが、顔を見ているとだいたいは判るのです?。
このミニワッターアンプその後トランスをより高性能のファインメットに交換されました。
ファインメットに交換後のアンプを聞かせてもらうと音は確かに立派になりましたが、あら不思議!僕が参っていたあの弦の音がきれいさっぱりと失われているではないですか!
性能が良くなると失われるものがあるのですね!(というより僕の好みの音というのが、そもそも一般的基準から少し変わっているのかもしれません)。今でもトランス交換前のミニワーッターアンプの音をもう一度聞いてみたいと思ったりするのですけど・・・。
Cさんのアドバイスは「こういう変わったアンプではなく一度まともな?アンプで鳴らしてみた方が良いのでは」とのことです。
そして「自分の実家で鳴らしていたマランツのパワーアンプがとても高音が奇麗なので、このタンノイにはぴったりかもしれない」と貴重な情報をもらったのです。
早速調べてみるとこのアンプはマランツSM6100SA Ver2というアンプで、発売当時の定価は約39、900円という4万円を切る単体パワーアンプとしてはまれにみる低価格です。
発売当時のステレオサウンド誌で調べてみると、このアンプ、なんとこの年のパワーアンプ20万円以下のベストテンに入いるという偉業を成し遂げているではないですか!
あのハイエンドばかり出ているステレオサウンド(月刊ステレオとは違います!)です。
20万円以下のアンプのカテゴリーとはいえ、ほかはすべて10万円以上で限りなく20万円に近い価格です。その中で10万円を切る機種はこれだけ、しかも3万円台というのは大変に珍しいことでした。
もしかするとこのアンプがステレオサウンド誌でベストテン入りした一番安価なアンプなのではないでしょうか?
とはいえLUXMANで始まり数々の真空管アンプ(300BやEL34)を経由してデジタルアンプまでたどり着いたという、ハイエンドには届きませんがそこそこのアンプを使っていた僕のなのに「いまさら国産の安物アンプですか!(失礼)」見たいななんとなく情けない気分もあります。
あまりに夢の無い話のような気もして、あまり気乗りはしませんでしたが、オークションで調べてみると2万円を切るような価格で出品されています。
これだったら失敗しても痛手は少ない少ないと判断、とりあえずCさんのアドバイスに従ってみたのです。
もちろんあまり期待はしていませんでした。
運よく17,000円で落札できたSM6100は届いてみると説明書つきの傷もなくピカピカのまるで新品のようなアンプでした。見かけはなかなか立派ですけどさすがに重さは軽めです。
すっかり見くびっていたのですが早速聞いてみると、これはウーンとうなるばかりでもう言葉が出ません。
素直に首(こうべ)を垂れるばかりです。
フィリップスのアンプとは比較にならないほど素晴らしい音なのです!
今まで聞いてきたどのアンプよりも高域は良く伸びて美しいし、低音の量感も今までになくあります。
ともかく実に伸び伸びとして堂々としているではないですか!そればかりか繊細で美しいのです。
Cさん、疑ってすみませんでした。
こんなに良いアンプだったのか!とわかるとげんきんなもので、巷の評判はどうかとググってみると、該当したのはたった一件だでけこんなブログでした。
http://d.hatena.ne.jp/arcs2006/20051122
しかしいくらなんでも200万円のアンプに匹敵するとは言いすぎでしょう!しかもこの人のブログを読み進んで行くと、どうしてこのアンプの音が良いかと探った結果、最終的には静電気問題にたどり着き、ついには静電気除去グッズの販売にいたるという、ちょっとばっかり怪しい展開になってしまうのです!
まあこれ以外にこのアンプの目立った記事も見当たらないのでオークションでも比較的安値で取引されているのでしょう。ありがたいことです。
ここで誤解の無いように書いておかねばならないのが組み合わせの問題です。
このように書かれているからと言ってもマランツSM6100がどこでもこんな素晴らしい音を奏でるわけではないはずです。
ひとえにすべての機材のマッチングと調和です。それはまさに天の配剤とか運命とかと言うべきものでしょう?(言えないか)
ちなみにその原因の一つが驚くほどSN比が良く軽やかな音を演出する乾電池駆動の電流伝送方式のプリアンプにあることは間違いありません。
そしてもう一つがサウンドデザインでクロックを交換してトランスポーターとして改造されたSONYのXA50ES、そしてアナログ部分にものすごく物量が投入されているという金田式のDAコンバーターの組み合わせです。この3つがパワーアンプ以上に音を支配しているのです。(たぶん!)
さてこの後も組み合わせによる変化についての話は続くのですが、長くなったのでまたまた次回に持ち越しとします。
とここまで書いて、昨日録画したまま忘れていて、まだ見ていなかった松本音楽祭の小澤征爾指揮によるラベルのオペラ「子どもと魔法」をなにげなく見ていたのです。
するとどうでしょう、この番組の後半は村上春樹が書いていた演奏そのもの、大西順子と小澤征爾指揮、サイトウキネンオーケストラとの共演、ガーシュインの「ラプソデイイン ブルー」が録画されていたのです!
この演奏については村上春樹の文章を読んでしまったので、もちろんそれ以上何も書くことは不可能です!
それにしても危なく見ないまま消してしまった可能性だってあります。あぶない、あぶない、
こうやって偶然にもその文章を読んで感激した直後に、偶然その演奏の録画に出会ったりしてしまうのですから世の中はやっぱり面白いことであふれているんですね!