再びスピーカーケーブルを戻すこと。わかっちゃいるけど止められない。(古っ!!) |
やっぱり植木等は偉かった。世の中わかっているけど、止めらないことが沢山あります。
年が変わってもやってることは少しも変わらない。暦が変わるだけで本人は変わらないのですから当たり前といえば当たり前ですが・・・・。
やっても無駄なことも沢山あります。特にそれほど違いのわかるわけでもない僕にとってはスピーカーケーブルの交換などその最たるもの。
さてその発端はスピーカーから出がぶつぶつという雑音に始まります。
早速製作者のCさんに連絡をとったところお忙しいCさんの体があいたのは年末ぎりぎりのこと。
ところがCさんが部屋に足を踏み入れた途端にこの雑音がまったく出なくなったのです。
医者の門をくぐった途端に急に大人しくなる犬など良くあることですが、このアンプも全く同じ、まるで何事もなかったかのように順調に鳴っています。
製作者にはなんとも従順です。何と言う人を見るアンプなのでしょうか。
その証拠にCさんが帰って、その後しばらくしてスイッチを入れてみるとしっかりぶつぶつと言ったのです!
この雑音はスイッチを入れてすぐの時以外はほとんど出ないので、しばらく様子を見ることにして、ひさびさにCさんに音を聞いて頂くことになりました。
以前聞いていただいた時からは真空管の12AU7が4本がレイセオンに変わっています。
実はこのレイセオンに交換したときはかなり変化したと思ったのですが、いまとなってはその記憶もはるか空の彼方。
音の変化を覚えられないことでは僕ほど才能のある人もいないのではないかと思うことが多い今日この頃です。
ちなみに曲も覚えられません。僕の知人のMさんなんて一度聞いただけですぐ口ずさんでしまうような人もいるというのに・・・。
まずはエンリコラヴァとステファーノ・ボラーニのカルテットから聞いていただいのですが、この選曲がまずまずかった。
何と言っても派手な音でしられる【ビーナス】レーベルです。僕としてはこのSPでも結構ベースの音も出るでしょうというつもりだったのですが・・。
その後も新しめのJAZZをいくつか聞いていただいたのですがCさんの表情がやっとゆるんだのはアナログで聞いていただいたロンドンバロックの演奏によるヘンリー・パーセルのFANTASIAでした。
さすがに僕が聞いてもこの手のバロックのレコードなどは惚れ惚れするほど良い雰囲気で鳴っています。弦の音も実に柔らかくて爽やかです。
やっぱりOLDタンノイにはこんなのが向いているなあとしみじみと思うのでした。
次に課題であったSPケーブルの違いを聞いてもらいます。どうも作成者本人の目の前ではこのアンプ、緊張するせいかいつもほど伸び伸びした感じがありません。
僕が聞いてもちょっとちじこまった感じです。
それがSPケーブルをZONO・TONEに戻すとすっかり機嫌を直してらくらくと鳴りだすではないですか!しかも明らかにボリュームまで大きくなります。
ここまで難しい顔でずっと黙って一言さえ発しなかったCさんが一言【こっちの方が音数もだいぶ多くなるし、ずっと良いですね】
僕も素直に確かにCさんの言う通りだと思ったのでした。
それはそれで良いのですけど、今までDAIEIのSPケーブルでとても良い音だと思っていた(弦だけですけど)事実はどこに仕舞っておけば良いのでしょう?
だいたいCさんの前ではこれほど鳴り方が豹変するとはけしからん。このアンプそうとう人を見るタイプのようです?
【やっぱりこのシステムだとクラシックが良いですね、こんなのもとても良いですね】とCさんが言ったのは昔のオーデイオショーで良く使われていた優秀録音盤のCD≪カンターテ・ドミノ≫今ではすっかり忘れられて中古CD屋さんで300円で売られていたものです。
【それに較べるとやっぱり最新のJAZZはちょっと苦しいですね。特にビーナス盤は最悪です】というのが最後の一言でした。
なるほどその通り。確かに僕にもCさんの前ではそのように鳴っているように聞こえたのでした。(深夜に一人で聞いている時とは随分違う感想なのですが・・)
Cさんが帰宅してからしばらくの間SPケーブルをZONOTONEのままバイオリン曲なども聞いてみましたが、すっかり気を良くしたアンプのためかどうか
それほど嫌な音に感じられません。それどころか明らかにこちらの方が気持ち良く聞こえてしまうのですから困ったものです。
この前言を翻すような態度の豹変はアンプが悪いのか僕が悪いのか釈然としないまま、ふと思い立って一カ月ぶりにDAコンバーターを金田式に戻してみました。
やっぱりこの弦の音はちょっとね・・と思ったのは一瞬だけで、後は空間の広がりと楽器の位置のはっきりしていることに驚きます。
これはと思い久々にオーケストラでドホナーニ指揮、クーリーブランド交響楽団によるメンデルスゾーンの≪スコテイッシュ≫を聞いてみると、その広がりの大きさパリッとした元気の良さにちょっと驚いてしまいます。
今まであまりに弦の音、(それも室内楽に限る)にこだわり過ぎていたのかもしれません。
さてそうなるとPCM1704のDAコンバーターの立場はどうなる?散々いままでほめていたのにあまりに可哀そうでは無いですか!
確かに弦の音だけに限っていえば明らかに後者の音が好きなのですけど、金田式のパリッとした音の気持ちよさも捨てがたい。困ったものです。
それにしても以前に書いたスピーカーケーブルやDAコンバーターの話はどうなってしまったのか、これではスタート地点に逆戻りではありませんか!
われながら心底呆れてしまいますけど、しょうがありません。今はこの組み合わせで驚くほどパリッとしたフレッシュな音で鳴っているのですから。
こんな話はオーデイオに関係ない人にとってはとても馬鹿らしく感じられることと想像します。かくいう書いている本人さえあまりの結末の馬鹿らしさに驚いているのです。
これでは【気がつくとそれは夢だったのです】という出来の悪い小説みたいです。
そうはいいながらも結局色々やって楽しめるのがオーデイオの面白さなのでしょう。
今年も些細なことに目くじら立てずに、良い音ではなくおもしろさの方を追いかけて行くことにしましょうかね・・・。
さて今回の写真は新春に通り過ぎた東京駅周辺の写真です。
設計した辰野金吾はほかにも日本銀行本店をはじめ数々の堂々たる建築物で知られます。発展途上だった当時の日本の威信を一身に背負ったかのように堂々とした外見が特徴的です。
威圧的で一軒ゴシックのようなロマネスクのような、なんだかわけのわからない感じのする建物ですが、今となっては実に立派です。そればかりか優美にさえ見えてしまうのですから不思議です。
のっぺりした現代の建築物と違ってこの重量感といい手作りならではの手の込んだ作り込みや装飾など、当時のエネルギーがずんずんと迫ってくるような建物です。残しておいて良かったですね。