ジューシでとろけるようなチャーシューなんて! いつまでも【新楽】通い。 |
(上の写真は春節でにぎわう横浜中華街です)
僕が社会人になって東京に通うようになるまでは週に数回は中華街の【新楽】というお店に通っていた。その理由は深夜まで営業していたからで、当時中華街で遅くまで営業している店はここと朱江飯店くらししかなかったと記憶してます。
これがどのくらい前かと言いますとかれこれ50年近くも前のこと、実に半世紀も前のことなのだから驚くばかりです。
ところがもっと驚くことに、この【新楽】だいぶ前に改装はしたのですがいまだに当時と同じ場所で同じメニューで営業しているのです。
しかももっと驚くのは味がまったく変わらないことです。
勤めるようになって東京に出るまではこの店が特に美味しいとは思わず、ごくありふれた味の近所の店だと思っていました。
友達のお母さんが【あそこはおいしいのよ!】と言っていたのを覚えていますが、その時だってまあそんな特別な店じゃないしそれほどのもんじゃないと侮っていたのです。
なんせ店構えだって特に大きくも綺麗でもなく特別オリジナルのメニューがあるわけでもなくごく普通の目立たない店なのです。
学生時代にここで食べるのはいつも【肉そば】と【ぎょうざ】でした。
この二つはごく当たり前の身近な食べ物だったはずなのに、その常識が大きく裏切られたのは東京にでてからです。
ここの肉そばは筍の細切りと野菜と豚肉の細切りを炒めてとろみをつけ、それが細身の麺とあっさりした鳥の出汁スープの上にたっぷりと載っているというものです。
これがいかに本場の中華料理の味付けだったかというのを東京に出てからいやというほど思い知らされることになったのです。
もっと驚いたのが餃子です。新楽の餃子は大振りでむっちりとした皮にずっしりと肉が入って、小籠包(しょうろんぽう)のように噛むと肉汁がほとばしるような食べごたえのあるものです。
それが東京のラーメン店で食べる餃子というのはペラペラの皮に肉だか野菜だかわからないようなペースト状のものが入っているではないですか!【なん・・なんじゃ、この得体のしれない中身は!】・・・同じ呼び名でもまったくの別物でした。
最近では餃子の羽とか言って、薄い皮の外側にぱりぱりの薄い縁取りをつけるのが流行っているようですが、餃子の皮は小さくてもむっちりとしているのが本来の姿。
餃子で有名なチェーン店のパリパリの餃子もそれなりに美味しいのですが、新楽の餃子に慣れきった僕はやっぱりむっちりした皮にたっぷりとした肉が入っていて、噛むと肉汁が出てくるような餃子が恋しくなるのです。
【パリパリの薄いピザっていうのも同じです・・ピザの皮にもむっちり感がほしいと思うのです】
ここまででも十分驚いたのですけど、最近もっと驚いたものがあります。
それがチャーシューです。
先日TVで【ジューシーでとろけるよう柔らかいチャーシュー!】とタレントが言っているのを聞いて【おいおいそれは違うだろう!】と思わずつぶやきました。しかもそれが美味しいという褒め言葉だったのですからさらにびっくり!
もはや【それのどこがおかしいの?】という人が世の中の大半なのかもしれませんが、僕にとってチャーシューというのは赤い縁取りがあって噛むとプーンと五香の香る、ちょっと甘いみのあるしっかりとした歯ごたえのある食べもので、けして口の中でとろけるようなものではないのです。
昔は焼きたての細長い棒状のチャーシュや焼き家鴨が、中華街の有昌とか鴻昌とかのお店のウインドーにならんで吊るしてあり、これを買うとおおきな中華の包丁で切ってくれたものです。
蛇足ながら説明すると現在ラーメン屋でチャーシュと呼ばれているものは豚を煮たものであり、五香の香がするこんがり焼いたチャーシューとはまったくの別物です。
そもそもチャーシューを日本語で言うと焼豚だったはずで、それがいつから煮豚に変わっていったのでしょう。
赤く縁どられたチャーシュを真っ白で熱いご飯の上に乗せ、青菜とか青梗菜の炒め物を添えたり、細切りの葱とラー油を混ぜたものを載せたりしてあるのが【チャーシュー丼】です。
いまはもう無くなってしまった中華街でも知る人ぞ知る店【安楽園】ではこのチャーシュ丼が500円そこそこという値段で食べられました。
しかもチャーシュを細切りにして葱と混ぜてもらうというリクエストもOK。(もっとも食べている人を見るとほとんどがこの細切りでしたけど!)
幸いなことに今でもちゃんとしたお店、たとえば【菜香新館】などに行けば値段はそれよりは高くなりますが、美味しい飲茶と同時に本格的なチャーシュ丼を食べる事が出来ます。(これもすごく美味しい!)
最近の中華街は2~30年前にくらべるとまるで別物のように活気を取り戻し店もどんどん増え続けています。
なかでもこの頃一番目立っているのが【食べ放題OO円】のお店です。
僕のような小食な人間は元が取れないので、たとえ何料理でも食べ放題という言葉にはまったく魅力を感じないのですが、人気のある食べ放題のお店にはいつも長い行列ができています。
行列といえばTVや雑誌で紹介された何か特別なオリジナル料理(たとえそれがまったく内容がなくてたいしたしろものではなくても!)のあるお店にも行列ができているようです。
それに比べるとごく普通のまっとうな中華料理がまっとうな値段で食べられる【新楽】は驚くほど空いています。中華街がどんなに混雑していてもこのお店はほとんど待つことがありません
このお店のもう一つの特徴は常連客が多いことです。(メニューを見ないで頼むお客さんはまちがいなく常連のはず)僕にとっては空いているのは大変ありがたいことですが、どうしてこの味と値段なのにと少し残念に思うことも多々あります。その理由は話題になるようなオリジナルになるものが無いからかもしれません。
しかしどれを食べてもふつうに美味しいお店というのはこの頃の中華街においても実に貴重なものになりました。(しかも驚くほど良心的な値段で!)
さて最近は僕がここで食べるメニューはほとんど決まっていて、それのローテーションとなってしまいます。
まずはこれを食べるとおいしさに思わずにっこりとしてしまうので勝手に名づけた幸せセット、これは餃子とふつうのチャーハンの組み合わせです。問題はここのチャーハンです。
なぜだかわかりませんがここのふつうのチャーハンは格別においしいのです。
昔は当たり前だと思っていたごくごく普通のチャーハンなのですが、様々なお店でチャーハンを食べたあげくにこのお店に戻ってくるとつぐづく美味しさがわかるのです。
その理由のひとつに細かく切ったチャーシューが入っていることがあるかもしれません。もちろん本物のチャーシューです。いまどき本物のチャーシューが入っているチャーハンなんてそうはありません!
あんかけのチャーハンなどで喜ぶのもいいですが、ごく普通の卵とチャーシューの入ったシンプルなチャーハンが本当はいかに美味しいものだったかとやっと気づくのです。
そしてこのさっぱりとしたチャーハンと一緒に食べる、肉がぎっしりと詰まったむっちりとした餃子と抜群に相性がよいのです。ほかほかの肉汁がほとばしるようなアツアツの餃子をホガホガ言いながら一口かじって、さっぱりしたチャーハンを食べるのは実に至福の時間です。うーんこうやって書いているだけで涎が出そうになるので、次に行きます。
次は麺類です。まずは【牛肉煮込みそば】です。これも東京のふつうの中華料理屋ではあまり見かけないメニューです。
箸で触れればパラパラになるほど柔らかくなるまで時間をかけて煮込んだ中華風味のビーフシチュー?がたっぷりと麺の上に載っています。一度中華街の他の有名店でこれを食べたのですが値段は高いくせに味は同程度ながらあまりにも載っている肉の少なさにがっかりしたことがあります。その点ここのはたっぷりと肉が乗っているのが嬉しいです!
そして定番の【排骨麺】、これも東京のパーコー麺が売りの有名店で食べたことがありますが、油っぽい上に肉が骨付きではないではないただのロースではないですか!
中華街で食べるとどこもそうですが、まずはカリっと揚っています、そしてもちろん骨付きです。新楽のは肉も大きくて外側がちゃんとかりっと揚がっているのがうれしいです。
この排骨を青菜と一緒にいためてとろみをつけたものをご飯の上にのせた排骨飯、チャーハンの上に乗せた排骨チャーハンも捨てがたいメニューです。
さらに横浜発祥の【サンマー麺】。たっぷりの野菜がさっぱりとした汁と細身の麺の上に載っています。野菜炒めはとろみをつけるか、つけないかも選ぶことができます。
そしてたぶん街のラーメン専門店のものとはまったく正反対の味のはずの、さっぱりとしてシンプルな【チャーシュー麺】(こってりしたつけ麺になじんだ若者には物足りなく感じられること間違いなしです。)
ほかにもいためた高菜と豚肉が乗った【高菜そば】や【肉そば】。たっぷりの具が揚げた麺の上にかかっている【五目焼きそば】など時々どうしても食べたくなるメニューがいっぱいです。
こうやって食べたい物を順繰りに食べていくとたった一軒のお店だけでもなかなか飽きるひまなどありません。
実はここはあまりにも個人的にひいきにしているお店なので、こんなところに書いてしまって混んでしまったらどうしょうなどと思ったのですが、冷静に考えてみると僕のブログに登場したぐらいではそんなことは起きないことがわかったので書いてしまいました。
(なんとなく重要な秘密を漏らしたような気がして後ろくらい感じがするのはなぜでしょう?)
もっとも食べ物の好みというのはあまりにも個人的なことなので、(それは音楽の好みと同じくらい多種多様です!)あまりひとのいうことなどあてになりません。
というわけで今でもこのお店に通うのがやめられないのです。
もしなにかの機会にこの店に入ることがあったら、そして奥のほうの席でにこにこしながら餃子とチャーハンを頼んでいるじーさんが見えたら、たぶんそれが僕だと思います?
近場なので明日行ってこようと思います(笑)
だいぶ主観的要素が強いのです。身びいきみたいなもんですね。
美味しさの基準と音のよさ(?)は人さまざまなので、人によってはなーにこれと思うかもしれません。(コストパフォーマンスの高さにおいては自信がありますが!)くれぐれも内容を鵜呑みにしないようにご注意くださいませ!実は昨日も行って餃子食べてきましたが僕にはやっぱりたまらなく美味しかったです!