初めて選んだスピーカーlowther(ローサー)との日々。 |
このlowter(ローサー)という古いイギリス製のスピーカーを初めて知ったのは今はなき秋葉原のヒノオーデイオの前でぼけーっとスピーカーを見ていたら、何十年もそこに座り続けている主のような社長に手招きされて地下室に連れていかれ?そこでいろいろなスピーカーの試聴をさせてもらった時でした。
タンノイとか(その時知っていたスピーカーはあとJBLとアルテックくらい!)いろいろ聞かせてもらった中で一番魅力的に感じたのがこのスピーカーでした。
そしてその何か月後に運良くヒノオーデイオ製の箱に入ったLOWTERを格安で手に入れることができたのです。(これが初めて自分で聞いてから選んだスピーカーでした)
僕の場合ことオーデイオに関して言えば今まで【ついている!】ことだらけで(特に経済面です!)、後で考えてみると今まで手にいれたオーデイオ機材はなんとも僕の経済状態にまっちしたものばかりでした!まさに天の助け(と人さまの助け)を借りて運にまかせるままいままでやってきたようなものです。
そのLOWTHERと一番長い時間を過ごしたことになるのですが、その時はこのスピーカーが特別に個性的なものということなどまったく知りませんでした。
調べてみると戦時中に人間の声に一番近い音を出すことを目的に開発されたとか・・・なんだかとても古いもののようでした。
そしてヒノオーデイオの社長の言う【このスピーカーは真空管でないと壊れる】という言葉を信じて、これまたヤフオクでヒノオーデイオ製の2A3シングルアンプを購入したのです。
両方ともヒノオーデイオ製でありながらともにヒノ・オーデイオで購入していないというのは偶然と予算の都合だったとはいえ今思うと申し訳なく感じます。
ここから僕の本格的なオーデイオ(それほどのもんでもありませんが)が始まったといえるのですが、その時はそんなこと思いませんでしたが、この組合わせは初心者としてはずいぶん渋いものです。
なるほど当時オーデイオ好きの方などとお話ししていて2A3のシングルアンプでLOWTHERを鳴らしてます、などというと【それはいいですね!】などと言われてちょっと得意な気がしたものです。
ところが実際に僕のLOWTHERを聴いたことのあるオーデイオ先輩諸氏からは一言も褒め言葉を聞いた記憶がないのは何故でしょう!
せいぜい【室内楽向きのスピーカーだね】とかせいぜいそういう感想が多かったような気がします。
今思い出してみるとこの時どんな音が出ていたのでしょう。それでなくとも忘れぽい僕にはこれっぽちも思い出すことができないのです。
LOWTHERというのは見た目にも立派な強力な磁石がついて現代のものと比べると随分高い能率です。
見かけもダブルコーンの真ん中に音を拡散する電球のような形のものがついているという独特なものです。このように一目見たら忘れられない風貌をしているのですが音も同様に個性的だといわれています。
初めてヒノオーデイオで聞かせてもらった時はなにかクラシックの曲だったと思いますが、この時一番なまなましく聞こえたのがこのスピーカーでした。
ところがその頃僕が聞いていた音楽といえばクラシックではなくもっぱら50年代、60年代の古いJAZZだったのですから不思議です。
その古いJAZZをうまく鳴らそうとしたのですが、結局あまり成功したとは言えないでしょう。
その後興味がクラシックに移って、しかも交響曲を聴くようになってから不満になってきたのがオーケストラの低弦でした。それまでJAZZのベースはそれほど不満に感じていなかったのですから、これもおかしな話ではあります。ともかく深く響くオーケストラの低弦の量感はなかなかこのスピーカーでは出なかったのです。
クラシックの先生のIさんからもこれは室内楽を聴くスピーカーでオーケストラはちょっと無理と言われ、なるほどそういうもんだなと思っていました。
そこで登場したのが借りたまま1年以上もしまってあったタンノイ3LZでした。お借りした当初ちらっと鳴らしてみましたがあまり気に入らずずっと仕舞われていたものです。
ところがある場所であまりに朗々となるのを聞いてびっくりし、もう一度出してきて聞いて見ると、この小型なスピーカーは倍以上の大きさがあるLOWTHERのバックロードホーンに較べずっとオーケストラの低弦をうまく鳴らすのです。それ以来すっかり3LZにぞっこんでLOWTHERはその後買った時と同じ値段で引き取られて行きました。(定評ある機材は値段が下がらないのもオーデイオ趣味の良いところ?)
その後3LZを返却することになりましたが、当時の経済状況では3LZを買うのがちょっと厳しくて、値段とブランドと見てくれだけで決めたampexのスピーカーを購入したのです。
これは基本的にはダイナコやARと同じクラスのスピーカーだったようで、このスピーカーを聞いて感心してくれた人もまただれもいませんでした。
その後運よくAさんからタンノイチャットワースを譲っていただくことになったのですが、それも突然のことでした。という風になんだか運命というか偶然というかさまざまな出会いによって僕のオーデイオは成り立っているのです。
(ampexのスピーカーの写真です)
現在出ている音が今まで聞いていた中すべての面で【音数、透明感、分離、などなど】一番グレードの高い音だというのは間違いのないところですが、それもCさんのおかげで恐ろしくSN比の高い性能の良いアンプ類やDAコンバータ―などがそろったおかげです。
歴史に【もし】は無しですが、もし今の機材でLOWTHREを鳴らしてみたらどんな音がするものか?想像してみるととても興味がつきません。
なんだかヴィアオリンソナタばっかり聞いている今こそLOWTHERの音色が相応しかったのではという疑問が頭をかすめるからです。
最初に出会ったものが一番良かったというのは記憶の美化という作用にすぎないのかも知れませんけど・・。
(AMPEXのプリアンプです。美しい色と形です)
それにしてもシングル一発というのはなんとも潔くてかっこ良いではないですか、今でも憧れる姿です。それに現代のシングルコーンは恐ろしいほどひろいレンジを再現するそうです。
シングルで口径の小さいスピーカーの問題は低音だと良くいわれます。箱がそこそこ大きくないと低音が出ないとは定説になっていますが、3LZ程度の箱の大きさでも僕には十分な低音が出ているように聞こえます。
まして最新の技術が作ったシングルコーンスピーカーならば?・・と色々興味つきないことです。小さくて性能が良いというのは車に限らず僕が好きな形なのでしょう。
とは言えスピーカー選びで難しいのはレンジよりも音色かもしれません。
一昔前の古いスピーカーがいまだに大事にされたり、高額で取引されるのはまさにその独特の音色がある故とも言えます。もしかするとそこには現代のスピーカーで出せないなにかが存在しているのかもしれません。
目の前にライブハウスが出現しようと、コンサートホールのオーケストラが出現しようと、それ以上に難しいのが室内楽とかヴァイオリンソナタとか弦楽四重奏が目の前に出現することのような気がします。
なぜなら室内楽(特にヴィオリン)はいったん電気信号に変換されると音色がとたんに真実味を失ってしまうからです。(いまだにSPが一番本物に近いという人さえいるのですが、それももっともな気がするほど!)
ある意味昔のJAZZにも同じことがいえそうです。あの反応の軽いアルテックの音は未だに昔のアルテックしか出すことが出来ないのです。(たぶん?)特に昔のJAZZの世界ではレコードのほうがCDより真実味がある音がすると思う人のほうが多いのもなんとなくわかるような気がします。
結局は正しい音とか正確な再現とか言うよりも、自分が一番生の演奏を想像しやすい音が良い音に感じるのですから、この世の中には聞く人の数だけ良い音も存在するのでしょう?
LOWTHERは他のどんな事がすべて劣っていようとも、こと室内楽などの楽器の音色の雰囲気を生々しく再現するのはとてもうまかったように感じます。
そしてバックロードのアコースタタイプの箱では不十分だった低音も、昔のTP-1を聴いた時には見事に払しょくされていたように記憶しています。
同じローサーでもさらに昔のユニットでかつ昔の箱ならばまったく違った音をだしたはず。
というように実際の音を聞かなくたって、高い機材が買えなくたって、こうやってあれこれ昔のことを思い出したり、これからののことを想像したりすることができるのもオーデイオの楽しみのひとつです。(ほんとはどんどん新しい機材を購入できるのが一番いいんですけどね!)