スピーカースタンドとタンノイのダイアル調整ですっかりごきげんに?スタンドの話し、その2です。 |
その木製のインシュレーターをしばらく使っていたのですが、その後【これこそ決定版、これを使えば低音不足なんてありえない!】と言われて手に入れたのが100%カーボン製の手のひらに乗るほどの大きさの長方形のインシュレーターです。これをスピーカーの下に入れてみると確かにその効果は抜群のように感じられました。なるほど決定版と言われるだけの事はある、もうこれ以上スピーカーのスタンドは必要ないと思ったのでした。
このカーボンは合計6個あり、それぞれ3個づつ三角形の形でスピーカーの下に置くのですが、この三角形の向きについても諸説があります。音が前に出るように前一つ後ろ二つにすべき、というのとその逆で前二、後ろ一つという置き方の2種類です。そんなことどうでもいいじゃない!と思うのが普通の人ですがオーデイオマニアはそうはいきません。
後者は重量のあるスピーカー本体が前方にあるのだから前二つが当然という意見のほかにも、タンノイのモニターシルバーの入ったGRFをものすごい美音で鳴らしているAさんが、この置き方のほうが音が良いと断定しているので、実際はどうなのかあまり検証もせずにこの置き方にしていました。
ところがスピーカーがタンノイのチャットワースになってから少し風向きが変わってきました。このスピーカーは下に袴状の板がついていてその4隅にプラステイック製?の小さい足がついています。
当初はおきまりのようにこのカーボン製のインシュレータをスピーカーの底面に直接はさんでいたのですが、まずはCさんから【このスピーカーにはカーボンの音は合わないのでは?】という疑問を投げかけられ、さらには同じ古いタンノイを聞いているIさんからもチャットワースは床に直置きのほうが良いのでは、などの意見もいただいのです。
床に直接置くというのはオーデイオを始めた時にそんなことをしてはいけないと強くたしなめられた上に、いかにも何もしていないように見えるのがちょっと不満です。
我が家の床は床暖房になっているので床もそう頑丈ではなくさらに床下に空間もあるので直置きはあまり期待はしてはいなかったのですが、いざやってみると残念なことに?これが自然で良いではないですか!
知人にイタリアから取り寄せた固いカリンの木を床材に使ってある素晴らしいオーデイオルームを持っている方がいて、それはすごい音の出る部屋です。もちろんそれとは比べようもない軟弱な部屋なのですがこんな軟な床でも直置きでそこそこ良い音で鳴ってしまうのですから不思議です。
直接比較さえしなければ幸せでいられるというのはオーデイオの世界でもまた真理なのです?
というわけで最近はずっと床に直置きで聞いていたのですが、むむ!と思ったのは3LZとの比較の時でした。
その時の聞き比べでチャットワースの上に3LZを置いて見たところ、なんとも素晴らしい鳴り方をしたからです。もともと古いタンノイは箱も振動させて音を作っていると言われているので箱をどのように鳴らすかはとても重要な要素のはずです。この時聞いた3LZの威勢の良い音にすっかり影響されて、チャットワースをもう少し元気良く慣らすためにも何かスタンドを工夫してみたらどうだろうと思ったのです。
そうなるとすぐに欲しくなるのが人情というもの、オークションでいろいろ物色していたのですが、なかなかサイズが合うものが見つかりません。しばらく検索の日々が続きましたがある日【袴つきのスピーカー専用】という説明がついたT字型のレールのような形の木製のものが4個一組で出品されているのを見つけました。
我が家のチャットワースは前オーナーがはるか東北方面にあるスピーカーの修復で有名なオーデイオラボ小川というオーデイオ店でレストアしたものです。そしてこのオークションで出ていたスピーカースタンド(スピーカースタンドと呼ぶには不思議な形ですが・・)もこのオーデイオラボ小川製だったのです。(正確にはパック工芸社製なのですが、この2社は名前は違えど同じ会社です)。なんという偶然の出会いでしょう?
しかしこの置台、使い方がよくわからん?袴付スピーカー専用とあるのだから袴の下にもぐりこますのだろうと推測されます。しかしチャットワースは厚みが25cmと薄いので、この台をもぐりこますと長さがずいぶん余ってしまいます。そんことはともかくレストアした会社と同じ会社が作成した台なのですから相性の良いのは確実、これは落札するしかないと決意したのです!
調べてみるとこのパック工芸社製のスピーカースタンドというのは実に高価ではないですか!僕が落札したものはHPには出ていませんが、すでに生産中止なっている同タイプのBASIC TIPPという同形状のスタンド(サイズが多少大きい)はなんと4個で9万円近くもします。普通のかたちのスピーカースタンドだと軽く12万円はしてしまうという高級品でした。
こんな高価なスタンドをだれが買うのでしょうと思いましたが、今回中古で出品されているのですから、もちろん買った人がいるんですね!幸い他に競合する方もおらず出品時の金額、1万円也で無事落札することができたのでした。これでレストアした会社とスピーカー台が同じメーカーとなったわけで、当然音つくりの傾向がマッチするのはずと大きな期待をもって到着を待ったのでした。
現物を見ると真ん中に違った種類の木材がサンドイッチされている見た目もなかなか良いものです。
これを袴の下に潜り込まして直接スピーカーの底を支えるようにします。チャットワースは後方だけ袴がないのでここからこの木製のレールのようなものがそれぞれのスピーカーから2本飛び出します。
30cm近く後方に飛び出しすのですが、それが思ったほど見た目も悪くないのです。むしろ後方をがっちり支えているようで安心感があるのです。
(下の写真参照)
そして肝心の音はどうなったかと言えば低音がどうの高音がどうのという細部よりは全体的にやけに【生々しい】ではないですか!
奥に引っ込んでいた音もどちらかというと前に出てきた感じです。かといって団子になることはなく解像力もむしろ増しているように聞こえます。それぞれの楽器の存在感もぐーんと増した気がします。特にボーカルなどを聴くと、生き生きとしてまるで目の前で歌っているるような実在感がまで出てきました。
【これはなんともいいぞ!】と思わずにっこりしたのでした。
実はこの音の出方には伏線もありまして、それはすべてのタンノイについている二つの調整ダイアルによるものです。これは左側がロールオフ、右側が高音の出方を調整するダイアルで、部屋の特性によって持ち主が自分で調整できるという親切な装置です。
親切というのは時には面倒なものです。面倒くさがりやの僕などは厳密な聞き比べなどすることなく、自然さが一番良いと決め込んで、一番ノーマルの位置(右側は真ん中、ロールオフは一番左側)のレベルという位置にあわせっぱなしだったのです。
ところが今回3lzと聞き比べをしたとき、どうしても3LZのほうがエネルギー感のある音の出方をするので、その音を参考にこのダイアルで少し調整してみてはいかがか?という意見をいただきました。
そこで重い腰をえっちらと上げて少々真剣にダイアルを回していろいろと聞いてみたのです。その結果僕の部屋と僕の耳にはノーマルよりもそれぞれ一目盛づつ(すなわちロールオフは右に一目盛回し、高域調整ダイアルも真ん中より右に一目目盛)回した時が一番生々しく聞こえたのです。
確かにノーマルの位置が一番柔らかく聞きやすい音ではあるのですが、いったんこの位置で聞くと音そのものはともかくこちらの方が実態感というかエネルギーがあるように思われました。
その音楽のエネルギーというか、生なましさがこのスタンドを入れたことによって一気に倍増したかのように感じられたのです。オーケストラなどを聴いてもオーボエ、フルート、ホルンなどの音が実になまめかしく聞こえます。空間も実にひろびろとしています。
これで決まりと思ったのですが、インシュレーター関係には特別にするどい意見をお持ちのIさんから、それは置き方がおかしいのでは?という疑問が出たのです。
というのもタンノイはもともと箱をうまく鳴らして音を作っているので、袴やついている足などにも特別のノウハウが込められているそうなのです。なので箱の下に直接台をあてがうなどという乱暴な設置方法はいかがなものか、やはり四つの足が台にきちんと乗るように設置すべきではないかというのです!
なるほどこれは思ってもみなかった置き方です。袴付の専用台だというので4隅の足を載せるという普通のスピーカー台のような置き方は頭に浮かびませんでした。まさに目からうろこです!
そうやって置いてみると特別安定の悪いこともなく、見た目もこちらのほうがきちんと見えます。高さも多少高くなり、見た目も良くこれはよさそうと期待に胸が膨らみます。
音を出してみると確かにすっきりとします。全体的に抜けも良くなった感じです。
ところがしばらく聞いているとなんだか少しもおもしろくないのです。いままでせっかく伸び伸びと鳴りはじめたものがなんだかちょっと杓子定規になってしまったような気がするのです。
しょうがないのでいそいそと元に戻してみると、やっぱりこちらの方がずっと生き生きと聞こえるではないですか!というわけでIさんのサジェスチョンを無視して結局はスタンドが後ろにはみ出す置き方に戻ったのでした。そうそう同じIさんからは調整ダイアルはレベル【ノーマルの位置】で聞きなさいというアドバイスももらっていました。結局この二つを両方とも見事に裏切ってしまう結果になってしまいました!
【ごめんなさいIさん!】、そのうち機会があったらぜひ聞いていただいて、その是非を確認してくださいね!
かようにオーデイオの常識みたいなものは人によったり、部屋によったり、はては置き方、その日の気分によってまで、えらく違ってしまうものなのです。
たとえ同じ人が聞いたって5年後にはどう変化するか予想がつきません。その証拠に僕なんかししょっちゅう心変わりしてますから!
今回はスタンドの話でしたが一つだけ言えるのはスタンドはアクセサリーのなかではなかなか有効な道具であるということ。いままであまり実感することが出来なかったのですが今回それがわかったということは大きな進歩かもしれませんが、普通の人はともかくオーデイオマニアの方にとっては何をいまさら!みたいな話なんでしょうね・・・きわめて進歩の遅い僕のオーデイオレベルによるあまり役に立たないお話でした。