ひさびさに冒険小説でも読んでみますか!クライブ・カッスラーの【大追跡】 |
そういえば冒険小説からずいぶんとご無沙汰している。
昔はそればっかり読んでいたような気がするのですけど、最近はほとんど読まなくなってしまいました。
その理由を考えてみると、まず本を読む時間というのがかなり減ったような気がします。
そこにはいろんな理由があるのですが、一番の理由は音楽を聴く時間が長くなったことと、長く読むと目が疲れる?ことがあるようです。
ひさびさに読んでみたのが昔からの知人のような気さえするほど愛読していた【ダークピット・シリーズ】の著者クライブ・カッスラーによる【大追跡】です。
ダークピットといえばそのシリーズのうち2本が映画にもなりましたが、最初の【タイタニックを引き揚げろ】はそのあまりの出来の悪さに作者でさえ驚いたという?ほどのつまらなさでした。
その反省もあり2作目の映画化【死のサハラを脱出せよ】は相当力を入れたとのことだったので期待して見たのですが、まず主人公のダークピットのイメージが軽すぎてあまりにも違う。
見かけは重厚だけど飄々として危機をかわして行くという不死身のピットとは違いすぎるのでがっくり。脚本もキャステイングも見事に滑ってます。作者のカッスラーも脚本があまりにも原作と違いすぎると文句を言ったそうです。
とはいえ誰がダークピットにふさわしいかと言えばこれが難しい。
インデイアナジョーンズを演じていたころの軽快なハリソンフォードと007のダニエル・クレイブの切れ味を足して2で割ったくらいがちょうどいいかも知れませんがそれっていった誰?といったところ。
一作目よりだいぶ出来は良いとはいえ、これだったら何もダークピットの原作を使わなくてもいいとおもわせるような小説の面白さとはかけはなれた出来でした。
映画としては間違いなく二流で、世界中で読まれているベストセラーの映画化がこの程度の出来というのはプロデユーサや監督の手腕不足が大いにあるのでしょう。
そういえばこの映画の監督のアイズナーという名前、どこかで聞いたことがあると思ったらデイズニーの大立者マイケル・アイズナーの息子なんですね。
親の威を借りた2代目が作るとろくなものが出来ないのは古今東西、場所を問わず同じです。日本でも有名なアニメ映画で同じようなことがありましたっけ?
その後このダークピットシリーズが映画化されないのはこの二つの映画がこけてしまったためで(推測)、もしジェイムス・キャメロンあたりが監督をしていたなら現在でもシリーズが続いていたかも知れません?
さてこの【大追跡】はダークピットほど大風呂敷を広げた筋建てでないのがまず好ましい。
ダークピットシリーズも回を重ねるうちにだんだん大げさになりすぎて、主人公が登場するまでの道具立てにずいぶんと時間がかかってしまうようになってしまっていたのが、今回は場所と時間の設定がやけにこじんまりでノスタルジックです。
舞台は1900年初めの米国、日本ではちょうど明治時代の終わりころです。
鉄道を道具に大胆な銀行強盗を繰り返す殺人狂とピンカートン探偵社をモデルにしたような探偵社に勤めながら実際は大富豪という探偵ベルとの一騎打ちの対決という昔からあるシンプルな設定です。
にも関わらず面白く読めるのはカッスラーの筆力というものでしょうが、それ以外にも彼の趣味がいたるところに反映されていて、それが実にうまくストーリーを盛り上げています。
カッスラーは自分で沈められた船を発掘する組織を作ってしまうほどの船好きで知られていますが、同時に車好きでもあり自宅に大がかりな車のコレクションをもっていて、彼の息子の一人はそのガレージの管理人をやっているそうです。うらやましい。
世界的なベストセラー作家となるとここまで大富豪のような生活が送れるものかと小説よりもそっちの方に驚いてしまいます。そういえば世界的ベストセラー【ジャッカルの日】を書いたフォーサイスも自費で軍隊を作ってどこそかの国で革命を起こそうとしたことがあったような記憶があります。いずれにしろ世界的なベストセラー作家となるとたいしたものです。
この【大追跡】では物語の発端は湖底から引き揚げられる古い蒸気機関車の場面から始まります。
どうしてこの巨大な蒸気機関車が湖に沈むことになったのか?なかなかうまい導入部です。
列車や車のチェイスはもちろん、特に乗りもの道具だてが見事です。この頃の乗りものはこの物語の中心となる機関車だけでなく、どれもが鋼鉄の塊のような重量感のある堂々としたものです。
レーシングタイプに改造されたオートバイ(僕のイメージでは初期のインデイアン)まで登場するのですから乗りもの好きは思わずほほがゆるみます。
クライマックスは限られた時間の中での追跡という定石でサスペンスを盛り上げ、息をのむような古典的追跡活劇が展開されます。ストーリーを側面から盛り上げるのが実際にあったサンフランシスコ大地震です。この地震に主人公も巻き込まれるのですがその騒動の中で僕の好きな実在の作家ジャックロンドンと出会ったりするのですから洒落がきいています。
乗り物が好きな人にとってはこの時代は実にすばらしい驚異に満ちていたと言えるでしょう。まだ高速フリーウエイも整備されておらず車は暴れ馬のように荒れた道を自由に疾走することができたのです。鋼鉄の塊の巨大な機関車はいままで体験したことのないような速度で平原を駆け抜けます。
この時代の乗り物をここまで生き生きと描くことができたのは、やっぱりカッスラーが乗り物マニアだということが大きいと思います。どの分野であれマニアの話というのは面白いものです。
この小説は憎たらしい大悪党とかっこいい正義の味方が正面からぶつかるといういまどき珍しいくらい古臭くてシンプルなものなのですが、シンプルゆえに難しいことを考えずにひたすら胸をときめかせて物語の世界に引き込まれることができます。さらにスパイスのように振りかけられている脇役の乗り物が面白さを倍増させています。
これだけシンプルな冒険活劇なのですから映画にもなりやすい気がします。
それにこちらの主人公の探偵アイザック・ベルはダークピットほどスーパーマンではないので、わりと誰でも演じやすいのではと思われます。
いままでの失敗に懲りずにぜひ映画化してほしいものです。ただしその時にはもっと力のある監督を使って欲しいものだと切に願います。
次回作【大破壊】も面白そうなのですぐにでも読んでみようと思っているところです。
同じ理由ですね。また、冒険モノが、面白くない年齢に入ってきたのかも知れません。第一、外人の名前を覚えきれません(爆)
最近はもっぱらノンフィクションの類を読むことが多くなりました。まだまだ世の中知らないことだらけでびっくりします。
年とってわかったことは年齢は人を賢くするわけではないということです。とほほ。