知らないことが多すぎる。昔の本はこんなに綺麗だった!小村 雪岱(こむら せったい)の装丁本。 |
ここ数年僕のオーデイオの面倒をなにからなにまで見ていただいているのがCさんです。
なにしろとても器用かつ几帳面な方で、彼が作った電源を見たオーデイオに詳しい知人がその綺麗な出来栄えにえらく感心していたほど。
確かに僕が見てもまるで市販品のようなレタリングに至るまでプロの仕事と言っても良いような出来栄えです。
Cさんのご協力のおかげで近年我が家の音は今まで聞いたことないほど大きく進化したのです。
まったく良い人知り合ったものです。(先方がどう思っているかはたいへんに疑問ですが?)
先日そのCさんのお宅にひさしぶりにおじゃましました。
もともとの目的は以前からある大型のJBLのスピーカーに変わって小径ながら驚くほどワイドレンジな音を出すとCさんが気に入ったマークオーデイオのスピーカーを自作のバスレフ箱に収めたものを聞かせてもらうためでした。
このスピーカーは英国人のマークさんが香港に会社を置いて作っている、知る人ぞ知るというスピーカーのようですが、確かCさんもこのメーカーのユニットが好きで2度くらい変更していたと思います。
ここでその音について語るほどの知識も耳も持ち合わせていないので仔細ははぶきますが、ともかく無駄な音をすべてはぎ取ったようなクリアーで軽やかな音がします。
良く聞く言葉ですが【こんな小さなスピーカーからこんな音が出るの!】ということが掛け値なく実感できるような音でした。
そしてなにごとも漏らさずに再現する緻密さと正確さは驚くべきものだったのです。
現代のシングルコーン・スピーカーを侮ってはいけません!
今回の訪問ではその音に驚いたのはもちろんですが、以前から趣味人としてその知識と幅の広さには敬服していたのですが、そのひろさと深さにさらに驚くことになったのです。
知り合ってまず驚いたのは音楽の知識が広いことです。大半は現代JAZZを聞いているようなのですが、実はクラシックもとても詳しいのです。
マタイ受難曲の構造が良くわかる?と貸してくれたのはポールマクリーシュの最低限の人数で演奏された盤でしたし、メルドーとルネフレミングを貸してくれたのも彼です。
最近聴いているJAZZの音源、ジムホールとチャーリーヘイデンのデユオをはじめROBERTO CAON、JOHN TAYLOR、SWEET JAZZ TRIOなどなどここに書ききれないほど数多くあります。
女性ボーカルにも詳しく、名前も聞いたことのないようなスウエーデンの歌手たちなど、ほんとに良く知っています。
たとえばこれまたクラシックの有名な歌手であるフォン・オッターがクラシックの曲とシャンソンを2枚組で録音した渋いアルバムがあります。
このシャンソンを一緒に歌っている女性歌手の名前を知っていたばかりでなく、彼女が来日した時に聴きに行ってさえいるそうです。なんというマニアックな趣味。
今回僕の好きな曲がいくつも入っているので気にいっているアルバム、ヤンビースト・トリオと奥さんのマリエル・コーマンのボーカルアルバムを持参してみたのですが、当然このアルバムも持っていましたし、彼女の他のアルバムも持っていました。(やっぱり!)
だいたい僕が新しく発見したものでも彼が知らないものは無いというのがいつもの事です。
彼が詳しいのはオーデイオや音楽方面に留まりません。
写真なども相当の腕前で、ご多分にもれず昔は自分で現像までしていたそうです。
さて以前に訪問したときに壁に掛かっていたシンプルでかわいらしい雰囲気の日本画が目に留まりました。
聞いて見ると小村 雪岱(こむら せったい)の作品でした。僕はこの人のことを知りませんでしたが、なかなか良い雰囲気の絵だと思いました。
調べてみると資生堂のデザイン部の前身の部署をはじめ舞台美術の分野でも活躍した人で、泉鏡花の本の装丁でも有名でした。
今回の訪問はマークオーデイオのスピーカーの音を聞かせて貰う事もそうですが、先日購入したというこの小村 雪岱(こむら せったい)の装丁による昔の本を見せてもらうことにもありました。
実際に目にするとその美しさは美術品とも言ってもおかしくないほど美しいもので、昔は本屋でこんすごいものが普通に売られていたことに驚いてしまいます。
当時の本は印刷ではなく版画をそのまま装丁し使っていたそうで、その色は繊細で印刷とはまったく違う美しさを持っています。
奇麗なのは表紙だけでなく見開きのページの最初と最後には同じく美しい版画が使われており、その繊細で微妙な美しさは印刷とは明らかに違います。
ほかにも昔のフランスの絵本なども見せてもらいました。同じ絵本が後に日本で日本語になって印刷された本もあったので直接比較することが出来たのですが、その色合いはやはり微妙に違います。
なるほど昔の本にはこんな素晴らしい世界があったのかと初めて知ったのでした!
焼き物が好きなのは僕でも知っているルーシー・リーの作品を集めた本などが書棚にあることでもわかりますが、今回伺った時に棚にさりげなく置いてあった茶碗を手にすると奇麗に金継ぎがしてありました。
聞いて見るとその金継ぎも自分でやったそうで、そのお隣にあった漆のお椀は下塗りまで終わったそうですが時間が無くてまだ仕上げの漆を塗っていないとのこと!
おいおいオーデイオ機器の製作だけでなくこんな事まで出来るんですか!・・・と改めて驚いたのでした。
さてこういう器用な人が世の中にいるのに較べ自分の事を考えてみると情けなくなります。(そもそもこういう方と比較してはいけないのですけど!)
なんせハンダ付けに挑んでも大柄なコンデンサー1個装着するのにさえ四苦八苦し、ケーブルのプラグ交換さえ難しくて満足に完成出来のないですからその不器用さには我ながらあきれます。(ハンダごては見るのも嫌になって引き出しの奥深くに死蔵されています)
それでは体で勝負と思っても、自転車に乗ればママチャリに抜かれ、普通に歩いていても気がつけばハイヒールのねーちゃんに抜かれてしまい、ジムに行っても皆の半分以下の錘で目を白黒させている次第ですから体力的な優位性もあまり無いと言えましょう。
視点を変えてもっと受動的になって、鑑賞者としての能力を計ってみます。
某有名ブログではオーケストラの演奏を長文で詳しく分析や解説している方がいるかと思えば、僕の方はひたすら良かったとか悪かったとか小学生のような感想ばかりではないですか!。
それでもそこに何か良い点はないかと考えてみると・・あるではないですか!
それは世の中にこれだけ自分の出来ない事が出来たり、知らない事を知っている人がいるということは、それだけ新しい事に出会えるチャンスがあることになることです。(そのチャンスを自分で生かせるかどうかは大いに疑問ですけど!)
一つだけ確かなことはそれが【面白い!】ということです。
この年になりますと、いまさら他人に追いつこうと必死で努力するような気力もないのですが、その分だけ余裕を持って楽しむことが出来るのです。
なにごとにも良い面だってあるものです?