(Every things Happens to me)ときたら次は(But not for me)?? |
例年紅葉のシーズンというと気が付くと終わっていることが多く、また今年も見逃したと思うのが常でした。
ところがなぜか今年は妙に紅葉が気になって何回がお寺や庭などを巡ってみました。今回の写真はその写真です。写真ですから綺麗に紅葉しているように見えるものばかり撮っているのでそう見えますが、色づいているのはごく一部の木だけです。
今年は特に紅葉が遅いようで先週になってもまだほんのりとしか色づかず、本格的に色づいてくるのは12月も半ばになってからかなと思われるほどです。
僕の住んでいる鎌倉は京都と違って極彩色の帯のように華やかな紅葉が見られるわけではありません。もっとずっとつつましいものです。
昔一度だけその時期の京都に行って金閣寺でそのあまりのきらびやかな色彩に圧倒されたのを今でも覚えています。それはどこに何を配置したら一番映えるかを綿密に考えた上で作られた美術工芸品のようなもので、さすがに貴族の作った文化はすごいものだと思いました。
そこ行くと武士が作った都、鎌倉がずっと地味なのはあたりまえです。
さらに加えるなら盆地で冷え込みのきつい京都は木々の色つきが鮮やかなのですが海に面して温暖な鎌倉はなんとなく色づいてそのまま枯れてしまうというような環境の違いもあるはずです。
さて数回前に【EVERY THINGS HAPPENS TO ME】、(僕には何でも起こっちゃうのさ!)という歌について書きましたが、そうきたら次はやっぱりこれでしょう?それは【BUT NOT FOR ME】(でも僕には起きないんだ・・・・)です。
曲としてはこちらの方が有名かもしれません。曲そのものも素晴らしいのですが、おもしろいのはその歌詞です。作詞は数々のスタンダードの名曲を生んだガーシュイン兄弟のお兄さんアイラ・ガーシュインでもちろん作曲は弟です。このアイラさんの歌詞というのはウイットにとんでいてとても面白いのですがこの歌などその特徴が実に良く出ています。
とはいえ英語にも弱い僕のこととくに英語歌詞なんてチンプンカンプン。その面白さがわかったのはひとえにある本のおかげです。
それは日本のジャズボーカル界における金字塔とでも言える労作本、村尾陸男というジャズピアニストが書いた【ジャズ詩大全】という本です。分厚い本が全部で20巻もあるという超大作です。(JAZZボーカルファンは必見!)
実はこの村尾さんという人とは少しだけすれ違いをしています。ある銀座のワインバーに行った時、そのオーナから前日はその村尾さんがピアノを弾いていたと聞いたとき、そしてもう一つは誰かにあそこがJAZZ詩大全を書いた人がやっているお店だよと教えてもらった時です。その後そのお店は無くなってしまいました。
というわけで以下のこの曲の説明はすべてこの【JAZZ詩大全】からの受け売りです。
それにしてもすごい本だと思いますが、一つだけ不満があるとすれば分厚い本で20巻もあるというのにそこに掲載されている曲の順番が本ごとにABC順になっていることです。
これが全巻まとめて作曲者別とかABC順とかなんかになっていれば歌を検索するときにとても便利だと思うのですけど、この本は訳詩だけが掲載されているだけでなく様々な興味深いサイドストーリーまで入った立派な読み物になっているのでそこまで望むのは贅沢というものでしょう。
そうそうこの歌も一番印象に残っているのがチェットベイカーのものです。彼のささやくような声がこの歌にも実にぴったりなのです。リンダロンシュタットの伸びやかな歌も中々でした。
さて不運な事ばかり起こる【EVERY・・・】にたいして【BUT・・・】は良いことがなぜか僕には起きないという歌ですが、ともに失恋を歌っているところは同じです。
以下本の受け売りです。まずバースの部分で人名が二つはいっています。ひとつはベアトリア・フェアファックス、もう一つはポリアンアです。
前者は昔人生相談をしていた人だそうで、その人に気休めなんて言わないでと歌っています。ポリアンナはなんとなく少年少女文学全集かなんかで見た記憶があるのですが、赤毛のアンみたいな前向きな少女です。そんなポリアンナみたいにいつもニコニコなんてしてられない!というわけです。
バースの最後にバナナ(ただしBANANASとS付き)という言葉が出てきてこれが妙に印象に残るのですが、これは日本語にもある【そんなバナナ】見たいな意味で、この著者は(そんなのインチキ!)と訳しています。
これらの言葉は意味がわからなくても歌詞の中にはいるとその語感がとても印象的で、ポリアンナとバナナは韻を踏んでいると言う訳です。
おおくの人が愛の歌を書いている、でもそれは私へじゃないの、空には幸運の星が輝いているけどわたしのは無い、そしてこの後も暗い雲のGREYとなぜか出てくるロシアンPLAY(ロシア悲劇)が韻を踏んでます。
HEIGH HO! ALAS! AND ALSO LUCHKADAY(あーあ、やれやれ、もうどうしようもなく悲しい)というフレーズも語感が良く印象的です。このように面白い言葉を使うのがアイラさんの歌詞の特徴です。こちらも嘆きの歌ですが、暗く沈みこむというより軽妙洒脱な感じがします。
これを書いた後にもう一度この本(JAZZ詩大全)について調べてみました。
すると先に書いた閉まってしまったお店というのは場所をかえて今でも立派に営業しているではないですか!(失礼しました)そればかりかこの【ジャズ詩大全】のインターネット版もあって好きな歌の訳詩だけを選んで購入できるようなシステムまでできていました。
なるほど世の中の進歩の速さというのはすごいものです。
それにしても物事がなんでもインターネットで手軽に解ってしまうというのは便利ではありますが、その分感動も減ってしまう気がします。
たとえばこのBUT NOT FOR MEをYOU TUBEで聞いて、歌詞を検索して日本語訳を読む、確かにそれで充分に用は足りるかもしれません。しかしそこにはやっとレコード(CD)を手に入れて我が家に持ち帰り聞いてみるときに感じたドキドキとするようなときめきはいつの間にかするっと逃げ出しているのです。
とはいえどんな歌かなとちょっと聞いて見たくなった時インターネットほど便利なものはありません。何事にも良い側面も必ずあるものですね。