真冬にモルジブの島を思うこと~水族館にいるような小さな島の夢ような日々。(その1) |
僕が最初にモルジブに行ったのはまだまだ日本ではその名前がほとんど知られていなかった頃で、観光のためのプロモーションに参加したときでした。
その時泊まった島の名前はもう憶えていきませんが、その後もう一度訪れることになった島(こちらも名前忘れました!)と同様、空港のある本島から細長い屋根付きの船に乗って数十分程度で到着する島でした。
モルジブは島そのものがリゾート(ホテル)として独立しているのが特徴です。その頃はプール付の豪華なリゾートなどまだ無く、有名どころは地中海クラブくらいなものでどの島も簡素なバラック風の小屋が建っているという素朴なものでした。
不思議なことにこの2回の訪問のことはあまり良く覚えていないのです。というのも3度目に訪れたバタラ島の印象があまりにも強烈だったからです。
ほんとうならここはその時の美しい風景の写真で飾りたいところですが、この頃はまだデジカメなどなく、しかもこの時に実は大失敗してしまったのです。水面の上から魚を撮りたいと思った僕は、そんな用途に使えるという偏光フィルターというものの存在を知りました。
そして我が家になぜかあった黄色い色のついたフィルターをその偏光フィルターだと信じて装着したのです。
帰って来てその時の写真を現像してみると、すべての写真が黄色に着色されていて初めて間違いに気が付いたのでした。やっちゃった!まったく振り返ってみると間違いだらけです。
もしそこに良い点があるとするなら【また失敗しちゃった!】と軽く流せることです。
ただし失敗が多いほど成功が多いかと言えばそれも確かなこととは言えません。というわけでまた近所の風景の写真でお茶を濁すことになりますが、あしからず。
3度目に訪れたバタラアイランドは空港のある島(首都)からはスピードボート(いわゆるモーターボートです)で行っても2時間かかる北アリ環礁にあります。今は近所の島までフロート付の小型飛行機で行くのが当たり前のようですが、その頃はまだ船でした。
このモーターボートは当然ながらその島までの専用チャーターなのでそのリゾートに滞在する搭乗者の人数で頭割となります。
その時はたまたま4名いたので助かりましたが、このボートの費用が割高なのに加えて空港のある本島で前泊したりすることになるので日本からこの島へ行く人は少ないようです。
空港のある島からモーターボートで海に乗り出ししばらく走るとどこにも島影が見えなくなります。目いっぱいのスピードで飛ばしているので波にあたる衝撃はものすごく、どこかに必死で捕まっていなければあっちにごろごろ、こっちにごろごろするほ良く揺れます。
その揺れがあまりに激しく直接的なので船酔いなどしている余裕がないのが幸いです。
ボートを運転している人と何もしていない助手の二人組はひたすら遠くを見ながら目視で航路を辿っているようなのですが、360度水平線には何も見えないのにいったい何を目じるしに船を走らせているのか不思議です。(もちろん太陽の位置には違いないのですけど、そんなアバウトで大丈夫?)、ところが2時間近くも揺られ続けている内に視界に小さな島が見えてきます。それはサンゴ礁にぽっこり浮かんでヤシの木だけが目立つ、まるで【ひょうたん島】のように小さい島です。
なにも目印もないのに良くこんな小さな島にたどりつけるものだと感心するばかり。
木製の短い桟橋から砂浜に出て辺りを見回すと、ここが本当に小さな島だという事がわかります。後で一周してみたら10分もかかりませんでした。
その島の小さなビーチに面していくつかのコテージが建っています。ここにこれから6日間滞在することになるのですが、その間にやったこと、といえば朝起きて海に行き朝ごはん食べて海に行き、昼ごはん食べてまた海に行き、夕日が落ちるのを見届けると夕ご飯を食べて、夜は海辺で星を見ると言うことだけでした。
それでも飽きることなく、あっと言う間に時間は過ぎ去り後ろ髪をひかれながら島を後にしたのです。
いったいこの島のどこがそんなに魅力的だったかといえば、まずはこの島には立派なハウスリーフがあること、他の島ではサンゴ礁を見に行くとなれば船に乗って行くことが多いのに、ここでは泳ぎの得意でない僕でもさんご礁の海で魚と遊ぶことができるのです。しかもそのリーフは部屋から歩いて数分なのです。
ともかく魚が多くてその種類も多彩です。シュノーケリングをしていると魚とぶつからないかと心配になるほど。
試に朝食のパンなど持ち込んでみると渦をまいて魚が寄ってきます。
投げたパンが泳いでいる人の背中に乗ってしまい、そこに魚がどっと寄って行った時にはおもわずその人が魚の餌食になってしまうのではと思ったほどです。
滞在中は朝から日の落ちるまでこのリーフにいたことになります。このリーフでぱちゃぱちゃやっているとウミガメもやってきたりします。それはまるっきり水族館の中で泳いでいるようです。こんな場所が部屋から歩いて数分のところにあるのですからたまりません。
次に良いのはこのホテル全体の雰囲気です。ここには豪華なロビーなどありません。
レストランの床は砂そのままです。バーだってヤシの木の下の掘っ立て小屋にすぎないのです。もちろん部屋には電話もTVもありません。その素朴で自然な感じがなんとも心地よいのです。
部屋の前の椅子に座って海を眺めていればインド洋を渡る風が吹き抜けて行きます。
そして部屋(コテージ)と海までの距離は数歩、ハウスリーフのあるとこまでも歩いて2~3分というまさに海の中にあるかのような場所。オーシャンフロントどころではありません。
一度潮が満ちてきた時には部屋のすぐ前に置いてある椅子とテーブルがあやうく流されそうになったほどです。部屋のすぐ前はサンゴで出来た砂浜です。海は遠くのリーフに囲まれた波の穏やかな薄いエメラルフォグリーンでキラキラと輝いていてここにもいろいろな魚が泳いでいます。
カマスのように細長いものや時には小さいエイも見かけます。そして夜になれば沢山の夜光虫でキラキラと光った波が打ち寄せるのです。
エイといえば木造の波止場の下に夕方になると必ず大きなエイが2匹ほど姿を見せます。波止場の下をぐるぐると泳ぎ回るのです。(たぶん餌付をしているらしく夕方には必ずここにきます)逃げないので一緒に泳ぐこともできます。夕日を浴びながらエイと泳ぐなんてことが部屋から数分の所で出来るのです。
この波止場は夕方のくつろぎの場所でもあります。
ここに腰を下ろして海に沈んでいく夕日を眺めるのが毎日の行事となります。
南国の夕焼けは壮大ですが、そのスピードは速く赤くかがいていた空があっという間に夕闇に包まれます。
あたりが急激に光を失ってくるちょうどそのころお腹もすいてくるので、裸足のままいそいでレストランに向かうのです。
(こういうはるか昔の事を思い出していると色んな事が思い出されて、とりとめがなく長くなってしまいます。とりあえず次回に続きます。)