快適に過ごすための音楽? フォーレの管弦楽全集。 |
僕のようないい加減なクラシックファンにとってだらっとしながら快適に聴くことのできる曲というのは大事です。季節がコマ落としのようにパタパタと移り変っていくのを窓の外に眺めながら、ぼやーっとして、時にはストレッチをしながらという作曲者や演奏者の方には大変に失礼で申し訳ないとは思いながらも、そういう時に聴く快適な音楽というのがあります。
スピーカーの前にきちんと座って真剣に聴く時より寝そべったりしながらだらだらと聴くことの方が多くなってしまうので、実は聴くのが一番多いのがこういう曲になります。
そんな中で好きなアルバムがフォーレの【管弦楽全集】という3枚組のレコードです。
フォーレというとまず頭に浮かぶのが【レクエイム】でしょう。僕もフォーレの曲を聞いたのはこの曲が最初ですが、【キリエ】を聞いてその美しさに感動すると同時に、こんな【キリエ】があるんだとびっくりしたのです。
というのも我が家はカトリックで僕も子供の頃から教会に行っていたのですが、その教会で親しんでいた【キリエ】とあまりにもその旋律がかけ離れていて、それがすごく新鮮に感じられたからです。【こんなキリエがあったんだ!】とその時思いました。
近年クラシックを聴くようになって解ったのが小さい頃に僕が親しんでいたキリエは実はグレゴリア聖歌の旋律だったということです。
昭和の時代にいまだ教会でグレゴリオ聖歌が普通に歌われていた(もちろんラテン語です)というのもすごいことですが、現在はその伝統をすっかり放棄してしまいものすごくつまらない歌になっているのは惜しいことです。
レクエイムは死者を鎮護するためのミサ曲です。しかし同じ名前でいながら【歌詞もどれも同じです】その曲調は驚くほど違います。僕が良く聞くのはカンプラとフィックスのレクエイムですが、この2つのレクエイムは、特にカンプラのものはたとえようも無く清楚で美しいものです。
それが時代が変わりロッシーニとかドボルザークとかベルリオーズなどはこれ見よがし思えるほど大げさでおどろおどろしいものになってしまいます。
その中で例外と言えるのがこのフォーレとモーツアルトによるものですが、モーツアルトが途中まで作ったというレクエイムはあまりにも悲しすぎて僕は最後まで聴くことができません。
それにいくら旋律が美しいからといってレクエイムを寝ながら聴くわけにはいかないではありませんか!
レクエイムでもわかるようにフォーレは素晴らしいメロデイメーカーなのです。
そう思ってヴァイオリンソナタやピアノ3重奏や五重奏曲を聴くとこちらは結構激しかったり難解だったりしてとても寝そべってゆったりと雲を眺めながらという曲ではありません。
レクエイムに続いて美しく親しみやすいメロデイがあふれているのがこの【管弦楽全集】なのです。
僕が持っているのはLP3枚組、ミッシェル・ブラッソン指揮、トゥールズ管弦楽団によるものと、CDではジョージデイアス指揮、エール放送シンフォネッタというまったく聞いたこともない?演奏によるものです。(これがなかなか良い演奏なんです!)あまり有名な曲でないためかそれほどアルバムも出ていないようで、つい先日もオークションでアンセルメの指揮しているアルバムを見つけて落札したばかりです。
この中でも良く聞くのは【ペレアスとベルガンザ】【マスクとベルガマスク】【シャイロック】などでどれも良い曲ですが、LPに入っておらずCDにしかないのが【ドリー】という曲でもともとはピアノ曲らしいですが、とてもチャーミングな曲で大好きです。
この美しい旋律はパイヤールの指揮などで聞いて見たいところですが、パイヤールにはフォーレの演奏はないようです。同じフランス人なのにどうして?と思ったのですが古くからレコードを聞いている僕のクラシックの先生から聞いたところパイヤールはバロック音楽の演奏の先駆者だったのです。まだ一般に馴染みのないバロック音楽をエラートレーベルでどんどん録音していたのです。なので比較的新しい作曲家であるフォーレなどは演奏していないのですね。(たぶん?)
あの美しいパイヤールの演奏でこのフォーレの管弦楽曲を聞いて見たかったと思うのですが、もはやかなわぬ事となってしまいました。
今ではオリジナル楽器とそれにふさわしい奏法で演奏されるのが一般的になってしまったのでビブラートを効かせた耽美的で美しいパイヤールの演奏(僕の思い込みです)はすっかり古めかしいものとなり、パイヤールの演奏するバロック音楽があまり聞かれなくなったのは残念なことです。クラシック音楽の世界にもやはり流行はあるようです。
さてもう一つ快適な音楽にメンデルゾーンのヴァイオリンソナタヘ短調作品4というのがあります。
モーツアルトのヴァイオリンソナタはあまりにも好きなので別格として?たとえばベートーベンのヴァイオリンソナタをはじめ大人しいはずのフォーレでもそうですが、だいたいはヴィオリンソンタというとヴィオリンとピアノが競ってバトルを繰り広げるという激しい展開のものが多いような気がします。
そこいくとこのメンデルゾーンのヴァイオリンソナタはなんとなくのんびりしていて、ヴァイオリンとピアノがに寄りそうように流れていきます。なんとも気持ちの良い曲です。
演奏はシュロモ・ミンツのヴィアオリン、ポール・オストロフスキーのピアノですが、録音もとても良くヴィオリンの音色が神経質にならず太く感じるのも心地よく感じる理由かもしれません。
という【クラシックのしろーと】ならではのあまり役にたたない文章を綴って来ましたが、フォーレの管弦楽集なんて眠くなって退屈だという人がいたとしてもごもっともだと思います。
快適な音楽というのはそれこそ人さまざまです。車の外まで響いてくるような重低音を鳴らして快適そうに走っている若者を見たりするとつくづくそう思うのでした。