新海誠の【君の名は】楽しみ!と思いながら【ソング・オブ・ザ・シー】を見たこと。 |
新海 誠監督による新しい作品【君の名は】が大ヒットしているそうです。
彼の作品については3年前にこのブログでも書いたことがありますが、その後も大成建設のTVコマーシャルを見て、この美しい空は絶対新海 誠が作ったに違いないと思い、調べてみたらやはりそうだったということがありました。一目見ただけでわかるようなすきとおった独特の透明感のある絵が大きな特徴です。
一番好きだったのは【秒速5センチメートル】という桜の花の散る速度を題名にした作品でした。ストーリーも叫んだり泣きわめいたりすることなく、まるで季節のうつりかわりのように淡々と進んでいくものでした。
最後に見たのはアニメでは一番表現の難しいとされている雨の風景をふんだんに使った【ことばの葉】という映画でした。
これはさすがに画面は美しかったのですが、ストーリーが生徒と先生の恋というわりとありふれたテーマで今一歩絵の素晴らしさにマッチするレベルではなかったように感じられました。彼でなくては描けない風景にはもっと独特のストーリーが似合うように思ったのです。
それ以来忘れていたのですがTVの朝の番組で彼の【君の名は】が大ヒットしているというニュースを聞いて驚きました。
いままでは彼の作品は一部のファンの間では高い評価を受けていますが、ヒット作を作るような監督とも思えなかったからです。
いずれにせよ才能があることは間違いなしの監督なので、これが良い方向に向かうきっかけになることを祈るばかりです。というわけでこの映画には胸を躍らせているのですが、従来からのファンとしてはほとぼりが冷めてからそっと見たいという気持ちもあるのでした。
そこで見たのが同じくアニメ映画の【ソング・オブ・ザ・シー】でした。
僕はそんなにアニメ映画のファンというわけではないのですが、最近のアニメ映画は子供だけでなく大人が見られるような凝ったストーリーになっているので楽しめます。大ヒットしたアナ雪だって本来なら王子さまが救うところ、姉妹の愛のほうが勝ってしまうという昔だったら考えられないような筋立てになっていました。それに最新の映画は、特にアクションものはもはやアニメ映画と区別がつかないようになってきているのでもはやアニメ映画と普通の映画の境界が限りなく近づいているような気がします。
この映画を見ようと思ったきっかけはどこかで見たこの映画の画面(絵)がとても綺麗だったからです。
調べてみるといくつかの賞も取っているようで評判も高いようです。ケルトの神話を題材にした妖精と人間の世界の関わりを描いたもので、確かに目を見張るような美しい画面が次々と出てきます。ラストシーンもジーンときます。なかなか見応えもあり面白い映画でした。
それにしては映画館を出て5分もたつとすっかり忘れてしまうのはどういう訳なのでしょう。
それは美しかったのは画面だけで音楽とストーリーが僕好みではなかったからかもしれません。音楽はもともとチーフタンなどの演奏するアイルランド民謡がそれほど好きでないことに加えて,今回の映画は日本語吹き替えだったので余計そう感じたのかもしれません。
この画面だったらシベリウスのピアノ曲とか管弦楽曲、もしくはマーラーの交響曲などがとても良く似合った気がします。
意味の分かる単調な歌と日本語の歌詞が逆にわざとらしく感じてしまったからです。
映画というのは音楽でずいぶんと印象が変わってしまうもので、監督によっては、小津安二郎とかエリック・ロメールみたいにあえてその効果にあまり頼らない人も多いようです。
ストーリーの底には自然と人間とのかかわり合いの在り方みたいなものが描かれているようなのですが、それはとても西洋的に理路整然としています。妖精の世界と人間の世界、すなわち人間と神、人間と自然はあくまで対峙しているのです。
そこいくと我々日本人には宮崎駿監督のように自然と人間、超自然と人間というのが混然とまじりあっている世界のほうが親しく感じられます。一緒に見に行ったMさんが【日本人にはわかりにくい!】と言ったのはたぶんその辺りの事があるからでしょう。
こうなるといよいよ新海監督の【君の名は】が楽しみです。題名から昔の映画のリメークかと思いきや(もはやそんな昔の映画を知っている人も少ないのでしょうが?)この題名はなんと古今和歌集から取ったものだそうです。【ことばの葉】でも万葉集の歌が使われていましたし、どうやら新海監督は大の古典好きのようです。
この映画は大林信彦監督の最初の名作【転校生】のように男女の高校生の中身が入れ替わる話らしいのですが、はたしてどのような映画になっているのか想像するだけで楽しみになります。