熊谷守一展を見に行きました。 |
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2018年 03月 01日
東京で車をパーキングするとき、いつも使うのは時間制限が無く、丸一日1400円とか1500円とかでとめて置くことが出来る駐車場です。
そうすれば時間をきにすることなく地下鉄などを使いさまざまな場所に行くことができるからです。
だいたいいつもその場所が決まっているので、食事なども、そこから行き易い場所が多くなってしまいます。 そんな地の利に加え、上野などと違い比較的人が少なく、のんびりとした竹橋の国立近代美術館はわりと良く行く美術館です。 今回の熊谷守一展に行ったのには、そんな理由もあったのです。 最近TVや雑誌などに登場しする熊谷守一の描く猫の絵は一種のブームらしく、山崎勉と樹木希林という有名俳優の主演で彼の晩年を描いた映画も出来るそうです。 とはいえ彼の描く可愛らしい猫の絵は、僕にはそれほど魅力的に思えなかったのです。 僕が彼の絵を知っていたのは、村田喜代子の書いた本【偏愛村田美術館】で見たことがあったからです。 その本は小説家である彼女が独特の感性で選んだ絵を集めたものなのですが、続編に【偏愛村田美術館・発掘編】というのがあり、こちらは前作より比較的世の中に知られていない画家の絵を取り上げています。 その中に彼の描いた【ヤキバノカエリ】という題の絵が載っていたのです。 発掘編に載るくらいですから、彼の名はよほど美術に詳しい人でないと知らなかったはずです?。 もちろん僕など当然そのとき初めて聞いた名前だったのですが、その絵はとても印象に残りました。 それは長女の萬が病で亡くなり、その遺骨を持っての焼き場からの帰り道を描いたものです。 しかしそこにはその題から想像されるような激しい感情の動きは一切ありません。 沈みかける日の光が道を照らし、遺骨を持って歩いてる3人の姿を照らしているように見えます。 背景の土手にはなんだか他の惑星の植物のようなものが背後ににょきにょき生えています。 それは一切の時間の流れもないこの世ではないような世界に見えます。 色も形もかちっとしたものではなく全体がぼんやりとしてゆらゆらしているように見えます。 それでいてその絵からは、胸が締め付けられるような、深い寂寞感が迫ってくるのです。 それは悲しみと同時に、自分の力ではどうすることの出来ない出来事に対する諦めというのが、まるで夕日の光のように透明感を持って漂っているのです。なんだか不思議な絵でした。 今回は初期から晩年までものすごい数の絵が展示されていて、一人の芸術家の表現がどのように変化して行ったかを目のあたりにすることが出来ます。この【ヤキバノカエリ】の実物も今回はじめて対面することが出来ました。 さて僕が好きな絵は美術的価値がどうのこうのというより、部屋に飾りたくなるような絵です。【ヤキバノカエリ】とは正反対のような絵ですね! どちらというと装飾やデザインに近いものの方が好きなのです。結果として抽象画が好きなのです。 熊谷守一の絵は80歳を過ぎたころからどんどんと抽象画やデザインのようになっていきます。 色彩は鮮やかに、線はシンプルになります。 同時に描かれるものも猫とか昆虫とか身近な生き物が多くなっていきます。 これらの絵は一見アニメのように可愛らしく見えることもあり、どうやら今流行りの癒し系の絵に分類されているようです。 ところが僕には、なぜかそういう風には感じられないのです。 そこには癒しというより、それを突き抜けた何者かが存在しているように感じてしまうからです。 抽象画というよりは、きわめてリアルな具象画のように見えてしまいます。 今回の展示の中で一番好きだったのは、現在熊谷スタイルと言われているものが確立される少し前の時代の風景を描いた作品です。 時代にすると1950年代前後から60年くらいまででしょうか。とはいえこの時代、彼の年齢にすると70歳を過ぎてからなのです! 現在彼の作品として人気のたかい独特のタッチは、なんと80歳になってからできたものなのですから驚きです。 このころは、まだ赤い輪郭線はまだそろほど目立たない緩いもので形もどこかのんびりしています。 色彩もまだ微妙な中間色で、その微妙な色合いがとても好きなのです。 【海】【わさび畑】そして【御嶽山】など山や高原や海など風景を描いた作品はとても好きでした。 この辺りの絵には、何かを発見して、その喜びが絵に現れているような気がするのです。 このころの絵をみていると、その色合いがどこかゴーギャンに似ていたり、形がセザンヌに似ていたりするなという気がして、とても親しみを感じます。また同時にその色彩の美しさにもはっとするのです。 解説を見ると実際にこれらの作家に影響を受けていたようなので、なるほどと思ったのでした。 (影響を受けているということは決して悪いことではないと思うのですが?どんな作家も誰かの影響を受けているはずです) ところがこういった僕にとっては親しみのある色彩や形は、彼が独自のスタイルを作り上げると、当然ながら無くなってしまいます。 色も線もよりはっきりしたものになり、ぼやぼやした雰囲気は一掃されてしまいます。 芸術的価値とか、そういった難しいことから言うと、当然ながら独自のスタイルに軍配があがるのでしょうが、僕の好み(そんなことはどうでもよいのですけど)から言うとやっぱり、この頃の風景画が一番好きでした。 それにしてもこうやって一人の作家の作品を若いころから晩年まで一気に見ると、芸術家の一生とはなんと大変なものなのかと思わずにはいられません。 電車に惹かれた轢死体を見えるか見えないほどの暗い灯りで描いた頃から、庭に来る猫や蝶やカマキリをまるで図案のように単純化して描くまでには、想像できないほどのさまざまなことがあったと思われます。 才能がある故の苦しさというものがひしひしと伝わってくるような気がして、わが身を振り返ると、何の才能がなくて良かったなと思ったのでした。(ちょっと寂しいですけど!) 見ごたえのある展覧会でした。 (今回の写真は、この展覧会を見に行った時撮った東京の風景です)
by omoshiro-zukin
| 2018-03-01 18:04
| おもしろ美術
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