日本美術は本当はど派手だった? デジタル技術による復元は面白い! |
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2018年 07月 24日
そもそも日本美術という言葉が出来たのは明治時代らしい。
それまでは美術という言葉もなかったので、室内装飾品とかのたぐいの、もっと実用的なものとして見られていたらしいのです。 そもそも芸術という概念がなかったのですね? (それにしても暑いですが、暑い日は空も燃えるようで、ここ数日は夕焼けの綺麗な日が続いています。) 先般、銀座の閑々居と言う画廊に日本画家の新倉彰子さんの個展を見に行きました。 ここはオーナーの性格を反映してか?アバンギャルドな日本画が多いのですが、今回はごく一般的な人が日本画という言葉から浮かぶイメージに一番近い日本画だそうです。 とはいえ僕の目からは、ずいぶん現代風に見える作品も多かったのですが、その中で一番気に入ったのが【しらつゆ】という作品でした。 一見、四角い金箔を貼りつめた紙に、墨で書かれているように見える作品ですが、実は金箔を貼ったように見えるように型を押してあるそうです。 モノクロのように見えて、かすかに色が差してあるところも気が利いています。 (下がそのしらつゆです。無断掲載すみません!) 秋の草原にうすっらと霧が漂い、そこに一陣の風も感じるような透明感と静謐な雰囲気のある素敵な作品でした。 この絵は自然のはかなさを感じさせるような、まさに【日本画ってこれだよね!】と思うような作品だったのです。 ところが最近になって日本画に興味を持って色々と見てみると、中国の画と日本画はどこが違うの?というのがだんだん解らなくなってきてしまいます。 たとえば中国人の牧谿が描いた猿の絵と等伯の猿の絵を並べて見せられても、ぱっと見てその区別をつけることは僕には出来そうもありません。 (下も新倉さんの作品です) ともあれ今日、日本美術といわれるものは、中国や韓国から伝わってきたさまざまな絵画や彫刻の影響を受けていることは間違いないのです。 その事を一目見ただけで、わかるようにしてくれたのが、小林泰造さんの本【誤解だらけの日本美術】でした。 最新のデジタル技術の進歩というのはすごいものです。 しかも本当の修復のように作品に直接手をつけることなしに、つまり本物を傷つけることなく自由に復元できるのです。 その技術を使い、真実はわかりませんが、こうだったろうと言う推測によってデジタルで復元してみると、驚くことに今まで地味だと思っていたものがえらく派手になるのです。 たとえば明治時代になって突然その名が有名になり、いまでは誰でも知る存在となった俵屋宗達の、これまただれもが、どこかで見たことがあるはずの有名な【風神雷神図】です。 小林さんは学者の意見も聞きながらも、当時派手好みだった俵屋ブランドの、その看板たる宗達の描く風神が、これを模写した光琳の風神より地味で渋い緑色をしていることに疑問をいだきます。 風神の緑は色が退化して、褪せているのではないか?そして現在は黒く見える雲も、もともとは銀色でこれが黒く変化してしまったものではないか?と推測します。 そこで元の色を想像して【風神雷神図】をデジタルで修復するのです。 そうやって復元されたものを一見すると【え!!これってケバケバしすぎる!】と、とても受け入れられないのですが、もしかしたら完成時にはこれが本当の姿だったかも知れないのです。 (下がそれです。矢印は本来の屏風のように折り曲げて立てた時の視線の動きを表しています。風神は濃い緑色になっています。真ん中に立ってみると、最後は見ている自分のところに視線が戻ってくるのですが、これもまた平面に置かれて観賞してはわからないことです。) 派手な色彩も、本来、あまり光が入らなかった日本のうす暗い部屋でみると、ぐっと良い感じになります。 さらには夕暮れの光が差し込む部屋で見ると実にぴったりと見えるそうで、夕日が差し込んだ時のこの屏風の写真まであり、それはそれでこの派手な色にも説得力があるようにもかんじます。 ほかにもキトラ古墳の壁画、銀閣寺などもデジタルで修復してみると、その色の鮮やかさに、驚くと同時に違和感を感じてしまいます。 もっと衝撃的なのは、あの人気のある(阿修羅像)です。 何かを憂うような表情のこの像は、実はもっと凛々しい顔立ちで、しかも全身真っ赤!!、極彩色に彩られた像だったというのです。 下がその復元したもの、随分とイメージが違います。 それら復元された物、すべてを見て僕たちが感じるのは、まるで中国か韓国のもの?ということです。 この本には出ていませんが、実際に僕が見たことのある、横浜の金沢文庫にある弥勒菩薩像を新品のように復元したもの、そして装いを新たにした日光東照宮などを見ても、同じ印象を受けるのです。 どうやら新品のように、出来た時の姿そのままに復元すると、それはまるでTVの韓国ドラマに出てくるような、鮮やかな青、緑、黄色、赤などに彩られたド派手な世界になってしまうようなのです。 鎌倉の大仏だってもともとは金色だったそうですから、これはまた、そうとう派手だったはずです。 僕を含めて一般的な日本人はたぶんこういう派手な色彩はあまり好きではないはずで、そのことはある意味とても不思議に思えます。 以下は僕の独断による怪しげな仮説です。 まず海外から入ってきたのは、ド派手な文化でした。金ぴかの仏像や極彩色に彩られた絵画などです。 それがしばらくすると日本独特の激しい季節の変化によって、どんどん色あせていきます。 本来なら神聖だったり高価だったりするものですから、すぐに新しく見えるように修復しなければならないはずです。 ところが、色があせてきて出てきた自然の地肌を見て【おや!こっちのほうが感じがいいじゃない!】と思った人が沢山いたのです。 それはいまだに日本人全体の意識として共有されていて、現代まで残っているのです。 その感覚こそが【わび】とか【さび】という言葉で表現されているものなのではないでしょうか? 日本では不思議なことに復元するにしても、新しい状態に戻すのではなく、風化した状態をそのまま復元するのです。 この感覚は日本独特のもので、たぶんヨーロッパやインドやタイや中国の寺院には無いのでは?? というわけで時間の経過が作品に及ぼす風化作用を、自然のなす業と貴び、さらにそこに美的な価値を見出すというのが、日本人独特の感性なのではと思うのです。 そんな目で日本美術の作品を見直して見ると、どこか日本独自の美意識というものが見えてくるはずなのですが、まだまだ日本画が好きになりはじめたばかりの僕には、そこまで見抜くことはできないのでした。 残念!
by omoshiro-zukin
| 2018-07-24 18:27
| おもしろ美術
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